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「大人が読む、頭を使うライトノベル」をコンセプトに、純愛ミステリーアクション「Luna…

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「大人が読む、頭を使うライトノベル」をコンセプトに、純愛ミステリーアクション「Lunatic tears(ルナティックティアーズ)」を執筆中。最終目的は商業化。スキ、フォロワー0の限界に挑む。 https://lit.link/ayaiquad/

マガジン

  • LTR _Progressive/PathCode

    Lunatic tears 第5作目「Progressive/PathCode」

  • Lunatic tears _ASTERISK 1

    Lunatic tears _ASTERISK 第1巻「静寂に奏でるアリア」

  • True Gate

  • Lunatic tears 3 _Lost Ordinal

    Lunatic tears 第3巻 _Lost Ordinal

  • Lunatic tears 2

    Lunatic tears 第2巻「Mephistopheles」

最近の記事

LTRP2-15「Will Of Charisma」

 ゲームフィールドから切り替わった画面には、サーバエラーと表示されていた。 「助かった……」 と安堵する流雫がアプリを閉じると、スマートフォンが鳴った。澪だ。  「キルされなくて助かったわ……」 と口を開いたボブカットの少女。何が起きたかは知らないが、あと1秒遅ければカップルは同時にアバターをロストしていた。  「……シュヴァルツが剣を引いた時、僅かに間が有った。多分、貝塚の死に動揺していたんだ」 と流雫は言ったと同時に、椎葉からのメッセージ通知が会話を邪魔する。 「少し待っ

    • LTRA3-8「War For Accession」

       フランス人が避けながら突き出した足は、男の脛を引っ掛けた。文字通り足下を掬われた男は、盛大に転んだ弾みで銃を落としている。反撃の心配は無い。予想外の呆気なさに、アルスは僅かに唖然とする。  男の後ろ首を掴み、腰に膝を突き立てる詩応。その表情には殺意を滲ませている。  ……澪や流雫を危うく殺されるところだった。アルスと同じ黒幕への怒りが、その手下と思しき男に向く。  「……背振は何処にいる!?」 と詩応が声を上げる。だが男は呻くだけだ。 「シノ、恐らく知らない」 とアルスは言

      • LTRP2-14「Scapegoat For Ambition」

         「逢沙!」 と椎葉が名を呼ぶ。首の位置で束ねたポニーテールを翻し、 「椎葉」 と呼び返す逢沙は 「まさか福岡で会えるとは、思ってなかったわ」 と言った。  2人は博多駅の鍋料理屋に入り、モツ鍋と刺身を囲む。其処ではプライベートの話しかしなかったが、その後駅ビルの屋上デッキで、コーヒーの紙コップを片手に隣同士並ぶ。 「逢沙は何の取材だ?」 「中国資本のMMOが来月日本でサービス開始。その拠点が福岡だから、関係者にインタビュー」 「それはビデオ通話でできるだろ?それにメタバース

        • LTRP2-13「Shade Of Influencer」

           不正検知システムに携わっていたエンジニアが、アウロラに接触したのはフラウ銃殺の翌日。彼もまた、アウロラがイベントに行くことを知っていた。 「スタークは一連の件を知っていた。アウロラに接近したのも、真相を伝えるためだったのだろう」 と流雫は言い、確信する。シュヴァルツがアウロラに執着心を抱いているのは判っていた、だからストーキングを装って先回りしたのだと。  「……シュヴァルツが率いる栄光の剣、そのナンバー2はEXCプロジェクトリーダーだった。開発にも介入しているが、AI批判

        LTRP2-15「Will Of Charisma」

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        • LTR _Progressive/PathCode
          26本
        • Lunatic tears _ASTERISK 1
          32本
        • True Gate
          0本
        • Lunatic tears 3 _Lost Ordinal
          30本
        • Lunatic tears 2
          19本
        • Lunatic tears 1
          31本

        記事

          LTRP2-12「Collapse On Schedule」

           後輩で恋人の真がセーラー服調のブレザーに袖を通すと、詩応はスポーツドリンクを渡す。陸上大会の中距離部門で優勝したポニーテールの少女と、事実上の専属マネージャーは、軽くハイタッチした。  来週は揃って東京に行く。土産を手に入れようと、2人は帰りに名古屋駅に寄った。三大都市圏の一角、その中心地は全体的に混んでいる。  先日話していた土産を手に取り、レジで会計を済ませた人は、不意に店の入口に目を向ける。人混みの奥、広場の階段前でEXCのイベントが開かれていた。  ……大会前日、真

          LTRP2-12「Collapse On Schedule」

          LTRP2-11「Secret Weapon」

           臨海署を後にした3人は、近くに建つ商業施設ダイバープラザに足を運んだ。流雫と悠陽に挟まれる澪は、自分が父と話している間に、2人の間で言葉が交わされなかったと察した。  かつて、相容れない流雫と詩応が接近したのは、詩応が流雫に問い質したいことが有ったのと、不仲の本質に気付いていた澪の策略によるものだった。  しかし、そもそも悠陽は自分から話す必要が無いと思っている。何から切り出せばいいのか迷う流雫も流雫だが。やはり、2人が言葉を交わすこと自体難しいのか……。そう思っていた澪に

          LTRP2-11「Secret Weapon」

          LTRP2-10「Master Or Slave」

           あの事故は、車の挙動も含めて最初から仕組まれていたこと。流雫の見解はそれだった。 「あの車の自動運転システムは、車体のセンサーが周囲の障害物や車線との位置関係を常時計測し、高度な位置情報と合わせて、AIが最適な走行ラインを決めるものだ。あくまでも自動車専用道や高速道路での巡航支援と云う形だな」 と弥陀ヶ原は言う。手元のタブレットには、サイトからダウンロードしたカタログが表示されている。 「センサーかAIが、何らかの障害を起こした……?」 と澪が言うと、流雫は続く。 「……起

          LTRP2-10「Master Or Slave」

          LTRP2-9「Taste Of Bullet」

           澪のことは誰より知っている。ドアが閉まる直前に飛び込み、自分に向かってきているハズだ。何を言っても 「流雫を置いて逃げる、あたしにできると思うの?」 と言い返されるのは判っている。ならば、2人で仕留めるしかない。 「……流雫……」 澪の声がイヤフォン越しに聞こえる。無意識にブレスレットに唇を重ねる流雫。 「澪……」 彼女のためにも、屈するワケにはいかない。  その間にも、視界の運転室の扉が大きくなる。行き止まり……だが、流雫にとってはそうではない。  流雫が跳び上がりながら

          LTRP2-9「Taste Of Bullet」

          LTRP2-8「Eyes Of Devil」

           池袋駅前に戻った3人は、ドーナッツ屋に入った。話したいことは終わったが、或る意味では今日の目的だ。  最初の話題は翌週のイベントだった。悠陽はEXC以外にも回ってみたいブースが有る。一方の流雫と澪は、EXC以外何が有るのか把握していない。そもそも、椎葉からの無料チケットでイベントの存在を知ったほどだ。  スマートフォンで会場マップを開く2人は、その時初めてEXCが右端のホールを半分使っていることを知った。イベント中最大規模だ。公式サイトでも大々的に告知しているのを見ると、改

          LTRP2-8「Eyes Of Devil」

          LTRP2-7「Desire Of Egoist」

           日曜日、何時ものように新宿駅で合流した流雫と澪は、池袋へと移動した。澪にとっては逆戻りする形だが、流雫の迎えは自分から決めたセオリーで、破る気は無い。  池袋駅に着いた2人を、悠陽が出迎える。そして3人は、1週間前のイベント会場へ足を運んだ。  ドーナッツ屋に誘われた日、悠陽はその待ち合わせ場所を池袋に指定していた。 「フラウ……」 悠陽は小さな声でそう呼び、手を合わせる。死の一報を耳にした瞬間、この場所を訪れると決めた。2人は瞬時に、あの撃たれたコスプレイヤーの名前だと察

          LTRP2-7「Desire Of Egoist」

          LTRP2-6「Faith For Great Benefit」

           AIを神として崇めたい連中がいるなら、逆に崇めさせたい連中がいても不思議ではない。崇めさせることで、利益を享受できるのは誰だ? 「……美浜さんのような人……?」 と流雫は呟く。つまりはエンジニアだ。  崇めさせるだけのAIを開発し、何らかの形で売ることで巨額の利益を得る。同時に、生みの親としてその名声を手に入れる。  ……崇めさせたいのはAIなのか、開発者個人なのか。自身が自薦のインフルエンサーとなって、旗を振るのか。  ただ、それが真相だとしても、人に危害を与えなければい

          LTRP2-6「Faith For Great Benefit」

          LTRP2-5「Competing Contradictions」

           静かな湖畔の部屋で、PCの画面と格闘していた椎葉が一息ついたのは昼過ぎのことだった。 「やりやがった……」 と天井を仰ぐエンジニアの目の前には、新たに実装された学習データのコードが連なっている。  夜中の間に緊急メンテナンスを行ったことは、午前中に知らされた。それ自体、元々保守担当ではない椎葉にとって、珍しいことではない。しかし、それに乗じて新しいデータも実装されていたことが、履歴を辿って判明した。  その学習データは、EXC内での発言に対するもの。表向きは最適化だが、実態

          LTRP2-5「Competing Contradictions」

          LTRP2-4「Pie In The Sky」

           ゲームのAIに人間が従う日、その見出しの記事がポータルサイトに出回ったのは、翌朝のことだった。  破竹の勢いを見せるMMOの心臓部、自律型AI。それがついに、本格的に人間を天秤に掛け始める。AI戦国時代に人間とAIの関係の在り方を問う、経済雑誌の人気シリーズの第4弾はその文章から始まっていた。  前半はEXCの売上高と収益構造がメインで、UACのEXCプロデューサーとエクシスの代表取締役がインタビューを受けていた。  AIを最大限活用した運用コストの削減と柔軟性の向上を強調

          LTRP2-4「Pie In The Sky」

          LTRP2-3「Cheat Code」

           スタークがストーカーのようにアウロラに近寄った理由は、助けようとしたから?あの場を見る限り、そう思える部分は無い。疑問だけが流雫の脳を支配する。 「でも池袋で見たのは……」 「確かに強引だったとは、死ぬ前の日に言っていたよ。ただ、ああするしか無かったのも事実だ」 と椎葉は言う。  アウロラのステータスもコーションだった。カテゴリはA6の105、それはAIへの疑念だった。この不可解なカテゴリの実装は、初期の仕様指示から変わらない。 「……今からの話はオフレコだ」 と椎葉は釘を

          LTRP2-3「Cheat Code」

          LTRP2-2「Yellow Caution」

           EXCは夜、小さな混乱を引き起こした。サービス再開から数時間後、突如専用SNSがフォーマットされたからだ。SNSはデータベースサーバの一部分で構成されているが、専用AIが巡回し、アドミニストレータAIに違反を報告しつつ、自動的に投稿を削除する流れだ。  ゲームの運用には影響が出ていないのは幸いだった。担当はそれぞれの自宅からサーバにアクセスし、修復を試みる。  結論から言えば、データはサーバに残っていて、単にSNS専用アプリで読み出すことができないだけだった。ただ、福岡に有

          LTRP2-2「Yellow Caution」

          LTRP2-1「Question And Distrust」

           朝方、キッチンに立つ流雫はフライパンを見つめながら、イヤフォンを耳に挿していた。  蕎麦粉のクレープ、ガレット。流雫の実家が有るブルターニュ地方の郷土料理で、ナイフとフォークを使って口にする。このペンションの名物となっていて宿泊客からの評判も高く、毎朝焼くのが少年の日課だ。  聞こえてくるのは音楽ではなく、フランス語。その相手は宿題を片付けながら 「お前も標的になったのか……」 と言い、頭を抱える。懸念していたことが現実になっているからだ。 「ただ、ミオのフレンドが狙われた

          LTRP2-1「Question And Distrust」