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「ミルク色の悲しみ」詩


電車とバスを 乗り継いで
また この街にやってきた
昔と 同じ風情。
少しも 変わってはいない。
住む人が 見知らぬ人になり
君が 横にいないだけ。

青葉が 影をつくる 並木道。
二人の お気に入りだった 小さなカフェは
ベージュの シェードを 揺らして
お久しぶりねと 会釈しているようだ。

ダラダラ 坂道を 登り切り 
振りかえれば 
ブルーサファイア色に 光る海。
沖合に 大きな貨物船
船のデッキから
君が 白いハンケチを
振りそうな 潮風の匂い。

坂の 途中にある 
こじんまりした レストラン。
窓際席から
サイダーの 泡の間に 
見え隠れする
水彩画のような 町の風景を 
二人で 飽きずに眺めていた。

街の 目抜き通りは 
路面電車が ゴトゴト走り
ざわめかしい 人の波が 行きかう。 
電車に 乗り 外を眺める。

見覚えのある 神社の横に
二人で 暮らした 
アパートが 見えた。
緑の屋根は 色が薄れて
白い壁は 灰色に汚れている。 

僕は・・・
錆びついた 心の扉をあけて
思わず 小声で
つぶやいた。

「さよなら・・・ サヨナラ」
ようやく 君に いえた別れ言葉。

悲しみは コーヒーに 一滴落とした 
ミルクのように 際限なく 広がり続け
目の前は 涙の霧で 覆われる。

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