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「幸せのぬくもり」詩

春陽の 柔らかいぬくもりが
降り注ぐ 川原で、
僕と君は よく 出会った。
クリスタル色に はじける会話は
ソーダー水の 泡のように
空へと昇っていった。

その泡を集めて
心のキャンディボトルに
しまってきた。

試験間近な 大学キャンパスは 
人影は まばら。
図書館を 冷たい静けさの
ベールが覆っている。
ページをめくる音、ペンの走り音が
波音のように 間断なく聞こえる。

君は 時折 疲れて机にうつぶせる。
その 横顔に 
「いつも 一緒だね」と
テレパシーを 送る。

君と出会ってから、
僕は 冬が 好きになった。
ポケットの中で 君の手を
ずっと 握っていると。
幸せな ぬくもりが
息づくのが わかる。

長いマフラーを 二人で巻けば
君の息遣いを 感じる

すべてに「始めと 終わり」がある。
でも、二人には 無縁の事だった。

突然の 別れ言葉は 北風が連れてきた。

「話したいことが あるの・・・ もう終わりにしない・・?

葉を落とした 銀杏並木に
落ち葉のように 言葉が舞い上がる。

君は お気に入りの
ベージュ色の 手袋で
そっと 唇を触る。

その唇から出てくる 言葉は
降り始めの 雪のように
僕の心に 降り積もる。

吹きやまぬ 風のように
低く冷たい 吐息が、
耳の奥に 吹き込んでくる。
でも 僕の耳には 氷が張り、
どんな音も 受け付けない。

いくたびも 君に 問いかける。
「何故? どうして?!」
ひなたの ぬくもり色の 君の瞳を 
垂れこめた 雲が覆っている。

「父が 破産したの。
叔父の 連帯保証人となっていたので、
すべての財産が 差し押さえられたみたい。
もう大学に通って いられない・・・
岡山へ 帰らなくてはダメ」

「破産」「差し押さえ」「連帯保証」
という無機質な 単語たちが
細く 凍り付いた旋律となり 
蚕の糸のように 終わることなく
吐き出される。

その糸を どう編み直して
裸の心に 纏う服を
作ればいいのだろう。

青山の外苑通の 銀杏並木を
沢山の人たちが 
コートの襟もとを 抑えながら
足早に通り過ぎる

でも 僕ら二人が
たたずんでいる 場所だけは
時が 直立して 
止まったままだ。

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