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フランス詩を訳してみる

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#フランス文学

ひよこのるる訳詩目録

2018年11月以来発表してきたぼくの訳詩約70編の、作者別の目録です。もし気に入った作品を見つけたら、同じ作者や時代の他の作品も読んでみていただけたらとてもうれしいです。

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作曲家・ミュージシャン別の索引も用意しております。

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以下、作者の生年順に並べています。

Marcus Valerius Martialis/マルクス・ウァレリウス・マルティアリス(ローマ)
c.40-c.

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ルコント・ド・リール「夜」(フランス詩を訳してみる 38)

Leconte de Lisle (1818-1894), Nox (1852)

(安藤俊次の訳を参考にした。)

『古代詩集』(1852年)で、代表作「真昼」の直後にくる詩です。

「六月」「真昼」「夜」の3編で、「拾遺詩集」Poésies diverses という連作となっています。

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シャルル・ケクラン(Charles Koechlin, 1867-1950)による歌曲(1900年

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ルコント・ド・リール「真昼」(フランス詩を訳してみる 35)

Leconte de Lisle (1818-1894), Midi (1852)

(上田敏、安田保雄の訳を参考にした。)

フランス高踏派の詩人ルコント・ド・リールの代表作です。1851年、まだ無名だった彼がこの詩を朗読するのを聞いて、著名な評論家サント゠ブーヴが感動して涙を浮かべたといいます。翌1852年にサント゠ブーヴが評論の中で全行を引用して紹介しています。同年末、この詩を含む最初の詩集

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ヴェルレーヌ「願い」(フランス詩を訳してみる 33)

Paul Verlaine (1844-1896), Vœu (1866)

(川路柳虹の訳を参考にした。)

『土星人詩集』(Poèmes saturniens)からの1編です。

日本ではあまり知られていないようですが、手元にあるJean Orizet編のフランス詩アンソロジーでは、「よく見る夢」と「秋の歌」と並んで『土星人詩集』からこの詩が取り上げられていました。

原文は、ギリシャ語由来の

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アンリ・ド・レニエ「抒情小曲 Ⅰ」(フランス詩を訳してみる 29)

Henri de Régnier (1864-1936), Odelette I (1897)

ちいさな葦の葉ひとつあれば
背の高い草を
いちめんの野を
やさしい柳の木を
歌う小川を ふるわせることができた。
ちいさな葦の葉ひとつあれば
森に歌を歌わせることができた。

通るものらはそれを聞いた、
夜の底に 心のうちに
静寂のなか 風のなかに
はっきりと またかすかに
近く また遠くに……。

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ヴェルレーヌ「Green」(フランス詩を訳してみる 28)

Paul Verlaine (1844-1896), Green (1872)

果物と花と葉っぱと枝を差し上げましょう
それからあなただけのために打つぼくの心を。
どうか真っ白な両手でぼくの心を引き裂かないでください。
ささやかな贈り物があなたの美しい瞳に快く映りますように。

体じゅうに朝露をまとったままぼくは参りました。
朝の冷たい風で 額の露は凍てついています。
願わくは ぼくの疲れがあな

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ランボー「感覚」(フランス詩を訳してみる 25)

Arthur Rimbaud (1854-1891), Sensation (1870)

(中原中也、永井荷風、堀口大學、金子光晴、清岡卓行、粟津則雄、宇佐美斉、鈴村和成の訳を参考にした。)

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前回に引き続き、ルーマニアのピアニスト・作曲家ディヌ・リパッティ(Dinu Lipatti, 1917-1950)が歌曲を作曲しています(1945年)。

チェコの作曲家ハンス・クラーサ(Hans

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エリュアール「きみの眼の曲線がぼくの心を取り囲む…」(フランス詩を訳してみる 24)

Paul Éluard (1895-1952), « La courbe de tes yeux fait le tour de mon cœur » (1923)

きみの眼の曲線がぼくの心を取り囲む、
踊りと甘さの円環、
時の光輪、夜の安全な揺りかご、
そしてぼくが人生のすべてを覚えてはいないとしたら
それはきみの眼がぼくをいつも見てはいなかったからだ。

陽光の葉、露の泡、
風の葦、香り高い

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ネルヴァル「幻想」(フランス詩を訳してみる 22)

Gérard de Nerval (1808-1855), Fantaisie (1831)

その歌のためならぼくは失ってもかまわない、
ロッシーニとモーツァルトとヴェーバーのすべてでも。
それははるか昔の歌、暗くてもの憂げで
ぼく一人だけにひそかな魅力を放つ。

その歌が耳に入ってくるたびに
ぼくの魂は二百年前に若返る。
それはルイ十三世の時代、目の前では
一面の緑の丘を夕陽が黄色に染めていく

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シュリ・プリュドム「割れた花瓶」(フランス詩を訳してみる 19)

Sully Prudhomme, Le Vase brisé (1865)

枯れかけたクマツヅラの花瓶に
扇が触れてひびが入った。
あまりにかすかに触れたので
音ひとつ聞こえなかった。

けれどもそのかすかな傷が
日ごとにガラスを蝕み
目には見えない確かな歩みで
ゆっくりと花瓶を一周した。

きれいな水が一滴ずつこぼれ
花がからからになっても
まだ誰もそれに気づかない。
触れないで 割れた花瓶に

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フランス詩人気ランキング

poetica.fr という、フランス詩を読んでコメントを投稿できるサイトを見つけました。「いいね」の数とコメントの数が表示されているので、「いいね」の多い順(同じならコメントの多い順)にソートして、上位300編を並べています。タイトルの右が「いいね」の数、括弧の中がコメントの数です。ぼくがこれまでに訳したものには★をつけています。

1. Paul Eluard : Liberté 24000

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