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生物としてのゲイの話1

その昔、分子生物学を学んだことがあるのだが、たしか教授が同性愛に関する遺伝子は発見されていないと説明していた。近年2019年にハーバード大学が研究結果を更新したらしい。

今回は若干ら専門的な話になり、ちょっとした座学的な話となるが、なるべくわかりやすく記載したので、とくにLGBTの方は読んで欲しい。

長くなったため、1と2に分けることにする。

ゲイ遺伝子は存在しない?

2019年にハーバード大学が、医療機関のデータからヒトのゲノム(遺伝子のすべて)を調べたが、同性愛を示す遺伝子は見つからなかったと発表した。しかし、このニュースがとんだ誤解をうむことになる。

湧く同性愛嫌悪者たち

これを受けて、同性愛嫌悪する人たちの中で、ゲイ遺伝子がないのだから、やはり病気だ!治るものだ!と主張し、差別する輩が出てきてしまったという。日本も例外ではなく、実際Twitterで同じ主張している人を見たことがある。ただし、これは大きな間違い(詳細は後述する)。

この誤解が問題なのは、例えばアメリカでは、キリスト教が同性愛を禁じている影響もあり、同性愛者を精神病だとして強制入院させ、頭(脳)へ電気ショック与えるという、多くの同性愛者が治療という名の拷問を受けてきた歴史があり、このような差別を再燃させる可能性があるということだ。

近年はまだマシになってきているようだが、相変わらず更生施設に入所させば治ると信じられているふしもあるようだ。これをテーマにした実話映画もあるくらいだ。

話を戻すが、このハーバード大学の研究が言っているのは、あくまでも、一つの遺伝子として、ゲイを決定する遺伝子はみつからなかったといっているに過ぎない。

何をいっているかまだピンとこないと思うが、もう少し我慢して読み進めてほしい。

遺伝子は複数が影響しあっていることのほうが多い、この研究ではゲイは遺伝子で決定しないと結論付けられたわけではない、ということをまずは頭の片隅においてほしい。

遺伝子はプログラミング

遺伝子🧬とは、4種類の塩基ATGC が、様々な組合せで配列されていて、パソコンでいうところのプログラムとイメージしていただければと思う。

このATGCの組合せ配列により、様々なアミノ酸が合成され、さらにそのアミノ酸の組み合わせで、様々な機能をもったタンパク質ができ、ヒトの身体が作られることになる。

遺伝子→アミノ酸→タンパク質→人の身体

皮膚から内臓まで人の身体は、様々な機能を持つタンパク質出てきている。遺伝子が人間の設計図といわれている所以はここからくるものだ。

遺伝子配列=線路とイメージ

遺伝子🧬は2重らせん構造といって、2本の線がらせん状になっている。
わかりやすくイメージするため、電車の線路が2本が並んでいることを想像してほしい。
それは、ATCGTTGGCAC••のようにプログラムがされている線路が、ずっーと長く続いているという感じだ。

線路の先には駅がある

例えば、下の太字のACATの部分を電車の駅だと考えほしい。   ATCGTTGGCACATCGTTGGCAC••

仮に、このACAT=糖尿病という名前の駅とする。つまり、糖尿病という駅は、糖尿病を発症させてしまうプログラムということ。この駅がある人は残念ながら、糖尿病を発症してしまう可能性があることになる。

このように、特定の病気の人たちを集めて、遺伝子を調べてみると、その人たちだけがもっている特有の配列(駅)がわかる場合があるのだ。

これらを単一遺伝子といい、ひとつの駅(特定の病気を発症させるプログラム)ひとつの病気を発症させるコードとわかる。

ハリウッド女優のアンジェリーナ•ジョリー氏は、遺伝子検査を行い、自身が乳がんになる可能性が極めて高いとわかったため、あらかじめ乳房を予防として切除したというエピソードをご存じの方もいるのではないでしょうか。

ただし、このような単一遺伝子はそれほど発見されていない。

ハーバードの研究に話を戻すと

ハーバード大学の研究は、上述してきたようなゲイという名前の駅(特有の配列)は見つかりませんでした、といっているに過ぎないということなのだ。

通常、遺伝子は複雑に影響しあっているのが普通と考えられている(でなければ、病気はすべて単一遺伝子で決まっていることになり、もっと遺伝する病気の種類は特定されているはずだが、そうではない)。

つまり、実際の遺伝子はA駅、その駅を制御するB駅、さらにBを制御するCとDの駅••など、複雑な機構となっていて、多くは簡単には調べることはできないのだ。

つまり、これまでどおり同性愛は複数の遺伝子が関与していると考えられているいうことは、何も変わっていない。

その2に続く。

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