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記事一覧
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#26
第二章 靴を落とした少女
23:整本師と物語そして、その本をしっかりと握りしめ、荷物置き場になっていた書斎から、そっと立ち去った。
私は冷めやらぬ興奮を、隠すように小声で
「ねぇ、ねぇ、エル。見つけた!見つけたよ!」
「んー、なによ。」
エルは少し、鬱陶しそうにベットに張り付いていた体をゆっくりと起こした。
「見つけたんだよ!」
「だから、何をよ。」
「この本を!この童話集の本だよ!」
「で
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#25
第二章 靴を落とした少女22:私の童話集
「じゃあ、舞踏会の最後の日。鐘が12回鳴ったとき。それまで、耐えてね。」
「おうよ。待ってる。」
私とアルは手を固く結んだ。
もう直ぐ夜が明ける。
早く帰らなくちゃ。
エルとエラが心配する。
私は建物の物陰に隠れて、腕にしていたボタンに息を吹きかけた。
私は、ふわりと宙を舞い家に帰った。
私は、家の窓からそっと入り込んだ。
エルはもう寝ている。
私も寝
【小説】おとぎ話の中で君ともう一度#24
第二幕 靴を落とした少女21:西の塔
「夕焼け空」
と唱えた。
瞬間、先ほどと同じような光が地面から放たれた。
気が付くとやはり先ほどと同じように塔の中にいた。でも、目の前に広がっている景色が違う。
さっきは、黄金の台だったのに対して、銀の台。
それに、台の目の前に広がっている景色は、先ほどの森ではなく、静かな夜にひときわ輝いている王宮が見える。
私は、少しずつ窓に近づき迷うことなく扉を開けた
【小説】おとぎ話の中で君ともう一度#23
第二幕 靴を落とした少女20:東の塔
だから、私は意を決して、うなずいた。
「わかった。」
私は、ひっそりと透明になってアルのことを追いかけた。
真夜中だからか、王宮の中は冷たくシンッと静まり返っている。
夜空には、あの日エルが泣いた日の月明かりにそっくりな明かりだけがあった。
その月明かりだけは、静かに私たちを見ているような気がした。
私は、てくてくとアルの後を追っているといつの間にか
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#22
第二幕 靴を落とした少女18:整本師(せいほんし)
「おい。レイ。そこにいるんだろ。」
今、なんて言った?
突然のことで、頭が回らない。
でも、足が勝手に腹黒王子に向かっていく。
そのとき、
〈ブウォン〉
と音が聞こえたと思ったら
「おいおい、忘れちまったか?ここは、お前のその魔法は効かないこと。まぁいいや。」
そう言ってこちらを振り返って
やっと姿を表した…か…。ってお前誰だ?」
「っっ
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#21
第二幕 靴を落とした少女17:探索
そうして、今日も1日が始まる。
その日の深夜0時、エラが寝静まってエルに変わってもエルは布団に潜ったままだった。
さて、今日はこの家の外を探索しようかな。
「エル。私、探索に行ってくるね。」
「ん。」
エルは、きっとこれまで、いっぱい抱えこんでたんだろうな。
それが、爆発したんだと思う。
エルの姿が、現実の自分の姿と重なって少し苦しくなったような気が
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#20
第二幕 靴を落とした少女16:エラとの交渉
エルが元の調子に戻るまでは、そっとしておこう。
その分、エルと会話していた時間を、今日みたいに探検に使う時間にしようと、そんなことを考えながら目を閉じた。
チュンチュン。
「ん。んーー。」
「おはよう。エラ。」
「おはよう。りう。」
そのとき、エラがはっとしたように慌てだした。
「あ、あ、あの、りう?!大丈夫だった?私が起きた時にはベットに
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#19
第二幕 靴を落とした少女15:理由
私は、それが初めてエルの涙を見た時だった。
静かにエルは、涙を流した後
「もう遅いわ。寝ましょう。」
とそれだけ言うと、ベットに潜りこんでしまった。
私は、エルになんて声をかけてよいか分からず、見守ることしかできなかった。
私も、エルと同じようにベットに横になったが、エルが泣いているところを見て、いてもたってもいられず、気晴らしにこの屋敷を散策することに決
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#18
第二幕 靴を落とした少女14:暴走
*これはフィクションです。
登場人物とは一切関係ありません。
暴力的な描写がありますが、決して、それを推薦しているわけではありません。暴力的描写が苦手な方はおやめください。
「殺してやる!!」
そういってエラは、勢いよく私を押し倒し、私の上に馬乗りになった。
そして、首を絞めた。
私は今起きていることが何が何だか分からないかった。
突然、エラが豹変し、私
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#17
第二幕 靴を落とした少女13:記憶の欠片
*これはフィクションです。
登場人物とは一切関係ありません。
暴力的な描写がありますが、決して、それを推薦しているわけではありません。暴力的描写が苦手な方はおやめください。
「エラ。。。。。。。落ち着いて聞いて。。。。今からする話を。。。。」
「わ、わかった。」
そう言ったエルに対して、私はエルから聞いて知った話をそのままエラに伝えることとなった。
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#16
第二幕 靴を落とした少女12:追憶
私たちは、朝食の用意や、朝の準備を始めたのだった。
その夜、エラと寝巻に着替えていたところ、エラと今日あった1日のことを話していた。
「エラ。今日、お母さんとお姉さんたちに嫌味言われていたけれど、大丈夫だった??」
「嫌味くらい大丈夫。」
「そっか。お母さんとお姉さんに嫌味言われてたとき、エラひどい顔してたよ。こんな風に。」
そして私は、しかめっ面の
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#15
第二幕 靴を落とした少女11:エルとの交渉
私とエルはヒソヒソと話しながら、屋根裏部屋に戻ったのだった。
屋根裏部屋についたころ、私は、少し疑問に思っていたことを話した。
「エル。あのさ、エルとその、、会った青年レイのことだけどさ、レイはせっかく4度目のこの物語に来たのに、なんで毎日0時に来なくなってしまったの??私が来てからもう3週間くらい経っているけれど、1度もレイが0時になって、姿を現
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#14
第二幕 靴を落とした少女
10:”いい子”の呪い
「そうね。純粋、、、、ね。
私は、優しくて”いい子”でなければいけないの。」
そういって、エラが悲しそうな表情をしたことに私は動揺した。
「エラ??」
「え、えぇ。全然大丈夫。ちょっと思い出ちゃっただけだから。」
「思い出すって何を??ごめん。言いたくなかったらいいんだけど。」
「そうだね。。。。。。これを話すのは、りうが初めてだね。
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#13
第二幕 靴を落とした少女
9:白い鳥
そう、エルが言ったとき、私は、なんて残酷な運命なんだろうと悲しさであふれ、あのボタンをくれた少年レイがこの物語の中にいたことを知って、私はどうしようもなく泣きたくなった。
「まぁ。そんな感じね。途中で感情的になってしまったところもあったわね。
そうね。りう。最後に質問はあるかしら??」
「ううん。ないよ。」
「じゃあ。もうそろそろ2時になるわね。エラ