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【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#21

第二幕 靴を落とした少女

17:探索

そうして、今日も1日が始まる。


その日の深夜0時、エラが寝静まってエルに変わってもエルは布団に潜ったままだった。

さて、今日はこの家の外を探索しようかな。

「エル。私、探索に行ってくるね。」

「ん。」

エルは、きっとこれまで、いっぱい抱えこんでたんだろうな。
それが、爆発したんだと思う。
エルの姿が、現実の自分の姿と重なって少し苦しくなったような気がした。
こうゆうときは、少しそっとしてあげていたほうがいいんだよね。
私もそうだったから。
少し落ち着いたら、エルの話を聞いてあげよう。

私は、右手にブレスレットのようにしてあるボタンに触れた。
すると、体がみるみる透明になっていき、地面から足がふわっと数センチ浮き上がった。

<行ってきます。エル。>

そして、屋根裏部屋にある小さな窓からするりと屋敷の外に出た。
この屋敷は、町から少し離れたところの少し山が高台になっているところにあった。
屋敷から出た瞬間全身が震えた。
だって、この山の高台から見る景色は、とても綺麗だったから。
ほのかな明かりが、町中につき、私はロマンを感じた。

うーん。これからどうしようか。
街の様子を見るだけじゃ物足りない感じがするし、まあ、でもいったん街の方に行ってみるか。

そう思い私は、温かみを感じる街の方へ繰り出していった。
街につくと、おいしそうな匂いが漂い、商店街がずらりと並んでいて、思わず私はよだれがたれそうになった。
〈これ、美味しそう。〉
そこには、ワインにしょうがやらはちみつやらを入れて煮込んである、飲み物が置かれてあったり、豆の入った煮込みスープがあったり、とてもおいしそうだった。

待ちゆく人を見ながらブラブラと歩いていると、着飾った貴婦人たちが何やら話し込んでいるのが耳に入って来た。

「ねえ。聞きました?」
「聞きましたわよ!!」
「この国の王子様が、1週間後の舞踏会でパートナーを選ぶそうよ!」
「やだわぁ〜。どうしましょう!私、選ばれるために頑張りますわ!」
「でも、聞きましたこと?この国の王子様にくろ〜い噂が立っていること。」
「アレのことですわね。この国の王子様が腹黒ってことですわよね?」
「そうなのよ〜。本当なのかしらね。いつもニコニコしていて、穏やかそうに見えますのにね〜。」
「でも、そこも萌えませんこと!!」
「ですわよね〜!!」 

そんなことを言いながら貴婦人たちは通りすがっていった。

ほほーん。
は、ら、ぐ、ろ、ですかー!!
エラとエルは大丈夫かな。
私的にはおいしい展開だけど、エラだったら、エルだったらと考えると…
なんか、エラはその腹黒王子様にいじめられて人間的扱いされなそうだし、エルだった場合、腹黒王子様と一生喧嘩してそうだし…
まぁ。とにかく、その王子様とやらを見に行ってみるか。
宮殿は、あっちだな。

私は宮殿に足早に向かっていった。

〈よいしょ。〉

宮殿についた私は、早速王子様とやらを探していた。
宮殿の中に入ってみると、黄金の金ぴかに輝く壁に、たくさんの肖像画が道沿いに並んでいた。
だれだろう。
この肖像画の中に王子様いるのかな。
そう思いながら道を進んでいくと、向かい側から数名の足音が聞こえた。
一人は、白いひげの生えたとても渋いこの国の王様みたいな人、もう一人は、その息子のようだった。

「アルよ。」
「いかがなさいましたか。お父様。」
「舞踏会でお前の結婚相手を決めるんだ。いいな。これは絶対だ。」
「承知しております。お父様。」
「そうか。それならいいのだが。お前は、わしの言うことはなにが何でも聞かん性格じゃからな。心配なのじゃよ。」
「お父様、もう休まれてはどうです。お体に触ります。」
「うむ。そうじゃな。では。わしは部屋に戻るとする。お前も部屋でゆっくりしたほうが良かろう。」
「承知したしました。陛下。では、良い夜を。」

そう言って、話し合っていた二人は方向へと消えていった。
話していた内容から察するに、きっとアルと呼ばれていた人が王子様なんじゃないかと思って、私はアルと呼ばれる人についていった。
アルと呼ばれる人についていく途中で数回私がいる方向に振り返った。
気のせいだと思ったがやっぱり私を見ていた気がする。
アルは部屋に入ると、一度ため息を吐き、

「チッ。あのクソジジイ。」
と言った。

私は一瞬聞き間違えかと思ったが、眉間にシワを寄せているところを見たら、現実なんだと思わせられた。
そして、次にアルから放たれた言葉が私を凍りつかせた。

「おい。レイ。そこにいるんだろ。」


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