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2021年1月の記事一覧

手紙と恋とエトセトラ

 郵便やさんのバイクの音がしてね、ポストがカタンって言うでしょ? あ、わたしになにか届いたかな?って、わくわくするよね。  でも、そういうときに限ってわたし宛てじゃなくて、なんだかちょっとがっかりするよね。    ダイニングテーブルを拭きながら、娘が私に話しかける。  はて。娘はなにかを待ってるんだろうか。まだ就職試験は始まっていないし、ドキドキの成績表が郵送されてくる時期でもない。なんだろう?   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆    手紙を書くのが好きなのは中高生の頃から

私はコピー機の前で泣いていた

2020年の暮れ、私はコピー機の前で泣いていた。 ぼろぼろ、ぼろぼろ涙が溢れるが、そんな私をよそにコピー機は次から次へと紙を吐き出している。 ここは、だだっ広い会社のオフィスでもコンビニでもない。 自宅の隣の、小さな事務所。 印刷しているのは、今年のさつまいも栽培の報告と、昨年度の干し芋加工、販売の実績、そして今後について書かれたkeynoteのデータだった。 その日は、午後からさつまいも生産者さんとの慰労会だった。 しかし私にとっては、ただの慰労会ではなかった…。 中

勇気づけ

「くまとやまねこ」 ぶん 湯本香樹実 え 酒井駒子 「ある朝、くまはないていました。なかよしのことりが、しんでしまったのです。」衝撃的な場面から始まる絵本。「死」がテーマですが、読み終えた時はやさしい音楽を聴きながら気持ちがフラットになった思いを感じました。 それと、朗読の課題本にえらび、「ある朝」 につまづいた思い出もあります。 大切な人との突然の別れ。そんな心の痛みを誰しも持ったことがあると思います。でもそれは誰も代わってあげることは出来ないのです。たとえちいさ

パワハラというソーシャル・スキルについて

不器用な人間なりに長年社会人を続けていれば、社会で生きるうえでのプライオリティみたいなものが自然と組み上がってくる。たとえばぼくなら、仕事に限ったことではないが、利益よりも礼節をこそ重んじたいと考えている。 年長者や上長相手にのみ礼儀正しく振る舞うのは礼節ではない。それは単に媚びか打算である。ほんとうの礼節は、たとえば下請の業者であったり若年者に対しても、等しく向けられるべきもの。だから、ぼくは新卒の若人が入ってきたとしても、ひとりの社会人として敬意を示して、なるべく敬語で

疑惑のコッペさん

もしかしたらスーパーの店員さんから、あだ名を付けられているかもしれない。 そんな疑惑が浮上したのは、昨晩のことだった。 そのスーパーは賞味期限が近くなるとお惣菜やパンや野菜が半額になる、私みたいなケチ人間にとっては天国のようなお店だ。 昨日も私は、半額シールの付いたコッペパン二つと甘食をカゴに入れ、ウキウキとスーパーを見回っていた。 そうだ、そろそろ水切りネットを買わないと。そう思い出して台所用品や掃除用品の棚を探したものの、見当たらない。 しぶしぶ近くでプリンを並べてい

ふとんがふっとんだ、そして街のヒーローがやってきた

これは、 ふとんがふっとんで、街のヒーローたちが我が家に大集結した という話しです。ぜひ温かいお布団にくるまりながら読んでみてください🥱笑 これは、ふとんの物語だまずは、僕のふとんのスペックを紹介しておきます。📝 メーカー:無印良品 サイズ: S (150 × 210cm) 特徴: 均一な温かさを保ちます 仕様: ダウン85% フェザー:15% 就職を機に買った無印良品のベッドとともに、 社会の荒波にもまれて疲弊した僕を癒してくれる大切なお布団でした。 この子がこの

移住の人生は、一度きりの人生を“盛りだくさん”に

最近はコロナの影響で都会から田舎への移住希望者が増えていると聞く。また、日本国家の将来に不安を抱き、海外移住を企てている有名人の話もちらほら聞くが、今となればサキガケだったかもしれない。 我が家は理想を求めて、シティーライフから日本の田舎、さらなる地球規模の田舎ともいえる南国サモアに移住した。日本からサモアは、先進国から発展途上国への移住でもあり、便利から不便への移住とも言えた。 便利から不便という意味では、シティライフから日本の田舎も同様だった。目の前にコンビニのある暮

エビを愛した先にあるもの

コミュニケーションを取るのが苦手だ。 私は人見知りだからだ。 ある会社で働き始めて半年くらい経ってから、「やっと僕と話すのに慣れてきたか」と上司に言われたくらい。話しかけられても「そうですね」といい、笑うのが私の限界だった。「そうですね」で完結するので、話が続かないと言われた事もあった。 その以前働いていた小さな会社で、私が無類のエビ好きだという事が少し広まった。 嘘ではなく事実なので別に広まったからといってなんて事はない。 当時の私のエビ好きは普通ではなかった。 エビ

雪と肉まんと、彼の笑顔。

明日、東京は雪の予報。 雪と聞くと、思い出す人がいる。 これはもう何年も、向こうの話。 だけど忘れられない、あの時の彼の笑顔。 わたしが育った街はとっても田舎で 外灯も信号機もなく。 夏には田んぼの蛙が合唱するし 夜道にはたぬきが飛び出して来るような場所だから もちろん、電車もバスも通っていない 移動は車か自転車の世界。 大体の家はひとり一台車を保有していて もちろんわたしも車の運転をしていた。 ある日、コンビニのバイトにいつも通り車で行った日 仕事の途中で雪が降っ