阿闍梨(ロプン)

日本とチベットでドルジェロプンです。仏教を自他を大事にする合理的な思考と捉えています。…

阿闍梨(ロプン)

日本とチベットでドルジェロプンです。仏教を自他を大事にする合理的な思考と捉えています。ナーランダ僧院から伝わる法流が平易な言葉で1番理解しやすく残っているチベット仏教の経典・論書の翻訳やその考え方を、読んだ方がシャンバラへと繋がるよう、また師への恩返しとして投稿します。

最近の記事

菩薩と菩薩戒

お釈迦様を理想として仏の境地を目指す誓いをされた方、菩薩として生きようとされる方であるのに、特に菩薩戒を受ける必要はありません。 菩提心の前行を行い、全ての有情、敵味方それ以外差別なく、仏の境地に到らしめむべく、自身が煩悩障と所知障を断った一切相智を得よう、と願う心が後退せず、努力しなくても自然と湧き起こるなら、その方は本物の菩薩です。 逆に、菩薩の前行を含め菩提心を努力して起こそうとしている意志の固い方なら、菩薩戒を受ける事が出来ます。もし戒を破れば破戒にもなります。

    • 菩提心前行

      前回、三宝について書きましたが、 それは各仏教共通の帰依の事でした。 先に加えて、菩提心を起こすのがいわゆる大乗仏教ですが、菩提心の前に平等心、全ての有情を等しく思う心が必要です。つまり自分の宗派の方とそれ以外の方、大きくは仏教徒とそれ以外の方、もしくは自分の属する国、地域、会社、などの集団とそれ以外とを、自分からは損得・賛否・苦楽・名誉と恥などで差をつけない心を養う、という事です。 どの有情も内なる平穏を得たらば幸せなので得られるように、内なる平穏を乱されると苦しいので

      • 三宝

        帰依、入信といえば、その宗教を信仰するしるしと言えます。 例えば仏教ですと、三宝に帰依すると仏教徒で、三宝から護られる訳です。 三宝の仏宝とは聖者である仏陀、法宝とは仏菩薩や声聞縁覚の聖者の心や悟り、僧宝とは仏菩薩や声聞縁覚の聖者ご自身を指し、いずれも煩悩を離れた存在です。 煩悩を離れた方が必ずしも予知能力や超能力を持つとは限らず、またスピリチュアルな能力の方が煩悩を離れている方とは限らないのは誤解されやすく、注意が必要です。 煩悩を離れる道を説くラマや先生方は指導は

        • インナー・ピース

          私達が学んでいる密教は特に仏教だけに伝わっているものでなく、むしろヒンドゥー教から伝わったとも言われています。 密教が入って仏教が堕落し衰退したと言う方や、そもそも大乗仏教は仏教ではないと言う方など、なかなかな言われようですが、個人的には人を悪感情から自由に出来るなら、仏教の教えで問題ないと思います。 宗教を理由に人を支配し、支持者を増やす事でシェアを伸ばし、有権者である信者に指示してその国の政治に圧力をかける。 支配欲・依存欲を満たす宗教・人間関係・金銭関係・仕事上の力関係

          密教修行としての祈り

          密教の祈り、ご祈願については、各密教寺院のホームページなどにもありますので皆様もご存知かもですが、良ければ読んでみて下さい。 家内安全・合格祈願・心願成就などの現世利益のご祈願、ご祈祷と言えば神社かもしくは密教寺院などの祈願寺か。 いずれにせよ今現在や将来・未来にわたっての幸せへの希望、願いは、誰しも当然の事と思います。 それに対して色んな祈り方があると思いますが、これは密教の祈りに関しての話です。 煩悩を離れた仏菩薩方などに、帰依し菩提心を起こして、滅罪や徳積みをして

          密教修行としての祈り

          チベット仏教ゲルク派で正しい認識を修学する ツォンカパ大師の高弟より

          前回はニンマ派の僧院大学にて修学する場合、4年目で学ぶ課程などにあるテキストの紹介をしました。 これがゲルク派ですと、第2章は入中論の時に修学します。およそ9年目前後から、年に2、3ヶ月間集中してになります。ツォンカパ大師の高弟、ダルマリンチェン師のテキストを意訳して紹介します。 尊いラマに礼拝致します 2 (正しい認識と)理解する(対象である)煩悩のない清々しさと一切相智、(それぞれ)そこに到る道を解説するのに ① 概論② 詳説 ① 概論に 1 ディグナーガ師が著し

          チベット仏教ゲルク派で正しい認識を修学する ツォンカパ大師の高弟より

          チベット仏教で正しい認識を究める

           チベット仏教と正しい認識 認識には正しいものと誤ったものがあります。 それは世間一般と一致する事で、誤解や錯覚は誤った認識、それに対し見た通り存在する視覚は正しい認識です。 チベット仏教を修学する僧院では、どの宗派も正しい認識が何であるかの探究を議論しながら学びます。その時にインドの戒師ディグナーガや戒師ダルマキールティの論理学や認識論に関わる著作を使用します。 大事なのは、お釈迦様は最初から正しい認識の方だった訳ではなく、様々な経験から錯覚や誤解や煩悩を取り除き、

          チベット仏教で正しい認識を究める

          ジョナン派のカーラチャクラの教えには何が残っているのか

          チベット仏教の各宗派でトゥクタム、死の瞑想あるいは通常の死を超越する方が未だに何人もおられます。成就する恩師も教えも残っている証です。先日もゾパ・リンポチェと言われる方がネパールでトゥクタムに入られました。 ジョナン派にはカーラチャクラの何の教えが残っているのか、暦学は残っていますし、砂曼荼羅を現したり儀礼を執り行う等は残っています。 カーラチャクラの六支瑜伽の前行(加行)は、いわゆる生起次第の瞑想までが含まれます。 各宗派には3年を越えての籠り瞑想が伝わっていますが、

          ジョナン派のカーラチャクラの教えには何が残っているのか

          先生の代わりに

          伝統宗教の価値が薄れた現代は、 倫理的価値観から経済至上主義へと あらゆる事をお金に換算する、 「金銭的に価値がなければ価値がない」 と言っても過言ではない価値観が蔓延る 時代でもあります。 宗教団体が引き起こす事件や問題が多く、 宗教への信頼が失墜し、人の善意が 信用しにくいため、言いにくいですが 本来は宗教は倫理の実践のための、 それを裏付ける価値観、哲学を学べる 教育機関として代々機能する事で、 現代社会に受け入れられるべきでした。 今回意訳し

          先生の代わりに

          「四つの執着をなくす」という心の訓練 意訳

          「全てを自分の思い通りに」と自他の成功と失敗に強く執着して時を過ごす方は、弱さから煩悩に負け怒りや冷酷さ、強欲さ、神仏や仕事の役職や権威などを傘に着た支配や排除という悪感情や、自他の名誉や恥、利益や損失、称賛や非難、楽や苦を娯楽とするので、身体はともかく心は地獄・餓鬼・畜生に住む不幸な方です 「自分の思い通りにしたいと執着する心」から自由になり、この人生を自他を傷つけず大事にする事に費やそうと努める方は「幸福な方、幸福な生を目指す方」です 「幸福な生を目指す方」は、経済的

          「四つの執着をなくす」という心の訓練 意訳

          ツォンカパ大師の縁起讃 意訳

          先のガンデン寺座主やゾンカチューデ前僧院長、サキャ派の高名なリンポチェなど死亡が確認された後、死の瞑想状態に入られ数日遺体が腐敗しないという事がここ1ヶ月相次ぎました。 社会的な地位もあるお忙しいラマが、隠遁修行者のようなハイレベルの密教修行に至っておられるのは驚きでした。 前ガンデン寺座主は私はご縁があった程度でしたが、私の先生は直接チベット大蔵経を教わったりと深い師弟関係でした。 遅まきながら、恩師方への報恩の意味でツォンカパ大師の縁起讃の意訳をしました。 素晴ら

          ツォンカパ大師の縁起讃 意訳

          ジョナン派に伝わる「深甚なる法流百八の教え」

          ジョナン派 クンガー・ドゥルチョク師(AD1507〜1566)はカカ・ジェツンタンバ法王の前世者です。師がまとめたこの 「深甚なる法流百八の教え」は、成就の八法流という、ニンマ派のゾクチェン・カダム派の道次第・サキャ派の道果(ラムデ)・マルパカギュー派のマハームドラー・シャンパカギューのニグマの六法・シチェの五道とチュー・ジョナン派とシャルプトゥン派のカーラチャクラ(六支瑜伽)・ウゲンの三金剛をはじめ、チベットに伝わる顕教・密教の教えを網羅したもので、ジョナン派だけでなく、ゲ

          ジョナン派に伝わる「深甚なる法流百八の教え」

          ターラナータ尊者の自空・他空の分別 3 意訳

          ジョナン派の他空説中観の教えがどういったものなのか、今は海外で活躍されているジョナン派の恩師に尋ねた時に授かったのがこの教えでした。 「本当にあるから、煩悩をなくしていくと仏の性質が現れる」と、分かりやすく教えて頂いたので、私の中では普通の空の見解が 「煩悩に抗う為に錯覚・誤解を減らすための教え」、他空の見解が 「本来の良い性質が人にはそもそも具わっている、人の本質は善という教え」になりました。 また密教の教えで海外で活躍されておられるゲルク派の恩師は、 「第二転法輪では空は

          ターラナータ尊者の自空・他空の分別 3 意訳

          ツォンカパ大師の「功徳全ての元」 意訳

          功徳全ての元(チベット語でユンデン・シルギュルマ)はゲルク派のゲシェである恩師からブッダガヤで授かりました。道次第の「恩師に仕える」から「密教修行」までを短くまとめてますので、覚えやすかったからです。 ちなみにその先生はインドの大学の助教授だったそうで、国からの年金が貰えるからとある南インドの僧院の電気代を支払っておられました。 途中から先生のお弟子方(もゲシェ)が合流され、インドの仏教聖地は危ない所があるからと人気のない朝早くは移動しない事など教わりました。 功徳全て

          ツォンカパ大師の「功徳全ての元」 意訳

          ターラナータ尊者の自空・他空の分別 2 意訳

          ジョナン派のターラナータ尊者が著した論書は、他空の教え、自空の教え、密教と多岐に渡っております。 お釈迦様の3度の転法輪は日本ではおおよそ否定されていますが、内容としては大乗の教えがアビダルマ仏教の延長線上にあると思いますので、その当時、お釈迦様ほどの方ならそんな教えを説かれたというのはあり得る、と想像しています。 写真は、ジョナン派を確立された一切智者・ドルポパの僧帽の仏教聖遺物です。御覧になった皆様にお加持力がありますように。 以下、前回の続きになります。 自空・

          ターラナータ尊者の自空・他空の分別 2 意訳

          ジョナン派の祈願文をダライ・ラマ14世法王にお願いした話

          ダライ・ラマ14世法王猊下は実はご自分で新しい祈願文などを著されます。 そんな訳で私の恩師が、 「法王猊下にジョナン派の祈願文を書いて頂くのをお願いするのはどうかな?」 と言われた時、私も即座に賛成しました。 当時恩師は法王猊下から亡命政府の仕事を受けておられたので、そんな機会もあるだろう、と思ったのです。 完成した祈願文はジョナン派法主である先代のカカ・ジェツンタンバ法王によるジョナン派の紹介文が添えられたものとなり、500部刷られました。2001年の事です。 写真は

          ジョナン派の祈願文をダライ・ラマ14世法王にお願いした話