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Photo by
kouheiwata
オレンジ色に染まっていた蒲郡の海
蒲郡の海を思い出すと
浮かぶ風景は夕暮れ時だ
綺麗な夕日が蒲郡の海を
オレンジ色に染め上げていた
キラキラと輝く海はとても
眩しくて美しかった
波打つ水面に
太陽の残光が粒子となって
跳ねては踊り
キラキラと輝いていた
沖の方をゆっくりと小さな舟が
走っていく
海苔の養殖をする生簀や船着場
父が運転する車の助手席から
僕が見ていたあの時の風景は
今はもう見られない
海岸線に沿って伸びる道から
見えていた海はすっかり
埋めたてられ
そこには今、大きな
家電量販店が建っている
かつては漁師たちの船が
何隻も停泊していた船着場は
駐車場に作り変えられ
白波は車の轍に飲み込まれ
潮の香りより
排気ガスのが匂い立つ
時間の経過や利便性
利益や損益
開発だのなんだのに
よって海は埋めたてられた
求める欲の形によって
馴染みの風景は壊され
歪に作り変えられていくのは
悲しいかな
人が生きている限り
どうしようもない事なの
かもしれないが
堪らなく虚しい
馴染みのある場所は
土の下に埋められて
二度とあの日の
オレンジ色を見る事が
できないと思うと
切なく悲しい気持ちに
させられる
父が運転する車の
助手席に座っていた
僕の思い出だけが
亡霊の様に
今も夕日に染まった海を
見つめ続けている
キラキラと輝く海が
踊る様に手を振って
僕らを見送ってくれていた
あの日のオレンジ色は
僕の心の中で色褪せる事なく
未だに輝いている
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