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変わっていく景色 変わらない思い

埋め立てられる前の景色を

思い出そうと思っても

もう何十年も前の記憶だから

薄靄の向こう

寄せては返す波音が

聞こえてくる

船着場の岸辺を恐る恐る

覗き込む子どもの頃の僕

生き物に対して興味津々な

お年頃だった僕には

船着場の岸辺は

好奇心が満たせる

対象物の宝庫だった

彷徨い泳ぐ小さな魚やカニの

姿を見つけられるだけで

楽しくて仕方なかった

海の匂いや

滑らかに動く波の記憶

野良猫たちは

漁から帰ってきた

漁師たちから分前を

もらったりしていたの

かもしれない

蒲郡の海に溶けた

沢山の人の思い出が

今やなんの変哲もない

砂利と轍の下に

沈められてしまった

観光地として人を呼ぶには

土地の整備は欠かせないのは

致し方ないにしても

やっぱり寂しい気持ちは

拭いきれない

埋め立てられた駐車場に

車を止めた時は

不思議な感覚だった

かつては海だった場所が

こうもいともたやすく

変わり果てて今や

普通に景色の一部に

なってしまってると言う現実

砂利が我が物顔で

足元でふんぞりかえっている

子どもの頃はなんとも

思わなかった変化に

35歳になった僕が

感傷的になってしまってるのは

当たり前だと思ってたものが

当たり前ではなかった事に

ようやく気づけてきた事の証なのかもしれない

船着場の風景は今や曖昧な

記憶の中にしか残ってはいない

いつか本当に忘れてしまうと

思うと切ない気持ちになってしまう

忘れてしまいたくないから

こそ僕は僕なりの言葉で

もってかつての蒲郡の海の

風景を書き残していこうと思う

誰かにとってはつまらなくても

僕にとっては大切な記憶

特別な感情のこもった蒲郡の海を

思い出せる限り書き綴っていく

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