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美容室エレジー(後)

前編をお読みくださった皆様、その節はありがとうございました。
呼吸を整えてリングに戻ってまいりました笑

新規に訪れた美容室で、今後の髪形について相談したわけでもないのに、なぜか脈絡なく次回のヘアスタイルを勝手に指示してくるという距離感が謎の美容師に面食らった、若かりし頃の筆者。商売のスタンスに疑問しかなく、可及的速やかに必殺“再訪なし”を繰り出すのもやむを得まいとの結論に至る筋道が前編でした。他にも美容室あるって知ってる?と問いたいわ。
ただ、筆者の経験上だけで言えばこういう店はレアケース。これまでに利用した所でそんな発言する美容師さんは他にいなかったし、特に接客に問題を感じさせるような店はそうないんじゃないかなと思うので、あしからず…。

それでは、後編です🤗

***

ある時、定期的に通っていたサロンで、半日ほど拘束されたことがあった。
予約日に行ってカットとパーマを依頼。ある程度かかるとは想定していたが、そのうち終わるだろうと待っていたら結局5時間以上が経過しており、いつの間にか夜に笑 帰り際、先方はとにかく恐縮しきり。
その点のんきな筆者、多くの客に必死で対応している現場も見ていたため、今日は時間かかったな~と思ったのは確かでも、急いでないし大丈夫ですと怒る気にもならず帰った。(友人は後日それを聞いて、自分ならブチ切れるかもと驚いていた。まあ…さすがに用事はなくても怒る人もいるかな😅)

筆者はそこには厳しくないが、個を尊重されないのには大いに抵抗がある。大学生の頃「あなた、海外のほうが向いてそう」と外国人の先生に言われたのはそれでか…?(結局、海外と関わることになるし。)日本人離れしてるタイプではないはずですが🤔要は、技術以外で何を重視するかは人によって違うという話。

さて。のちに別の美容室に通い始めパーマをお願いしたら、そこのベテラン美容師さんも何やら手間取っている様子だったので、混んでないよなぁと不思議に思い「どうかされましたか」と訊いてみた。すると、ロッドで巻いた髪の状態を観察しながら、「お客様の髪は保護が強くて、液が染み込むのに時間が必要なんですね」とのこと。この説明で今まで遅くなることの多かった一因がわかり、目からウロコが。ヘアカラーしてない髪は痛みも少なかったのだろう。(祖父やご年配の方は特に褒めてくれて。今は当時ほどの煌めきはないけど!笑)

それもきっかけとなって、次に髪を切ろうかと思い立った際、はたと考えたわけだ。
ちょっと待てよ……?
元の髪が直毛に近いので、これまでショートヘアにする時はニュアンスが出るようパーマもセットでお願いしてきた。ただ、余分に時間がかかる理由がわかった今、パーマはつまるところダメージ加工であり、それにより料金の桁は増えるんだよなという点までチラチラ視野に入ってくる。

わざわざ何時間もかけて、パーマを当てに行く意味が果たしてあるのか…?
※個人の葛藤です

こうなると、おしゃれ感もウリという美容室に通わなくても人生が展開する気になってきた。まさにそんな頃である。街を歩いていてふと目に入った、とある看板とお店。

🦞¥1,000カット🦞(仮)


………………………。
ずっと存在していたのに見えていなかったものが、見えてくることがある。ごめんね、こんなに近くにいたのに🥺(実家のだけど…ていうか髙橋真梨子か?←真の歌唱力ってこういうことだと思う人)
すでに自分の辞書にはパーマという文字はない。カットだけしてもらえればという方向へシフトしていたため、これで十分では?という意識が急浮上。
何より、最早こういった店はどんな感じなのかを教えてくれる体験型施設にしか見えなくなっていて、筆者の中で次第に存在感が高まっていく。

そしてついに、その時はやってきた。
機が熟した本日こそ、¥1,000カットに突撃せむとす!
カランコロン🔔♬
………だったか定かでないが、扉を開けると、軽快な足取りで店主が現れる。
「ほ~~~~~い、……?」
この飄々とした、今まで出会った美容師とは微妙にタイプが違うなと感じた兄さんが、自分を見た時の一瞬のを、筆者は見逃さなかった。

なんだ?客?いつもはわけのわからん横文字の美容室に行ってそうじゃね?俺んとこはそういう店とウリが違うよ?無駄な力とか入れて生きていくのは俺の柄じゃあねんだわ。気取ったこととか過剰なサービスしねえ代わりに、料金分はキッチリ働くけど、文句あんならハナから横文字に行きなよOK?

合理系美容師の心中(推定)

ただし、そこは無用のことなどせぬポーカーフェイス。実際おくびにも出さないところが商売人の心意気を感じさせ、ニクイ。

わかってるわかってる。わかって来てる。兄さんが言う(言ってないけど)横文字に行ってても、いろんなことあった。この料金を標榜してるからにはそれなりの戦法ってのがあるんだろうけど、兄さんの技量が横文字に劣ると思ったら来てないよ?さあ、その腕を存分にふるってくれたまえ。頼もう!

流れ者系筆者の覚悟

眼差しが交錯すること数秒の後。何事もなかったかのように(何事も起きてないんだけど)、「あ、こちらどうぞ~~~」と店内に招かれたのだった。

おそらく、この店における一般的な客層は、近隣のおじさまやサラリーマンなのだろう。内心どうすんだよと思われていたかもしれないがさすが合理系美容師。割り切った様子で、どんな感じにしましょうかと簡潔に要望を尋ねてくれたので、セミロング程度の長さをバッサリやってくださいますか?とお願いしたら、動じない雰囲気の人が一瞬フリーズしたのを見てしまった。
当然、こんな感じ^^?と女性誌が3冊ぐらい並べられるということはない。もう筆者にできることといえば『がんばれ兄さん!』と心から声援を送り、最後に対価カネを払うことぐらいである。

しかし、美容師の切り替えは早かった。ふむ、こういう思考回路の人だから成立するのが¥1,000カット店かもなんて考えてしまうほど。兄さんの脳内の計算機が高速で作動、いいわいつも俺のやる感じでやるわというスイッチが入ったら、そこからは飄々としつつ一気に仕上げていく態勢に。あれも才能だな。

この価格帯で利益を上げるにはあらゆる効率化が必須だろうが、実際カットしてもらった筆者が当時とりわけ着目したのは、やはり髪の切り方だった。
従来の美容室では、カットしていくにあたっての髪のパート分けが春秋戦国時代か?ってほど細かいことが多かったのに、こちらでは魏呉蜀。明らかにブロックが少ない。そうしておいて、取っ掛かりからバスバス切っていく。いかに短時間で済ませるかも鍵だから、躊躇ためらったり、ちまちまショキショキしている暇はないのだ。¥1,000だと思えば大した接客などなくても、口より手を動かしてくれればかえって気に障ることもなし。

こうして、愛想もないが無駄もなく作業は進み、さすがに細部の丁寧さには欠けるものの、15分程度で全体的にはまとまっている感じに仕上がった。ほぉ~と手際の良さに感心していたら、美容師は蛇腹ホース状のものを引っ張ってきて、最後にこれでついている髪を処理すると言う。風で払う器具は他所よその美容室でもあった気がするけど、なんかそれ…口径でかくね…?と、しっかり確認しようとしたその時。

ブオォオォオォオォオォ──────🌀😵🌀😵🌀😵


いきなりの暴風が顔面に!!!ヒェ〜風ッ、風風風!!!風、強いわ!!!
そりゃその口径よな!ただどんだけ吹かしてくるんじゃいその装置は!!!
そのうち機械は止まるも、筆者しばし呆然。合理系美容師はというと、これしかないんだからな…と気を確かに持つ気配が。
ふはっ😆💨
あまりの風圧もあって、ついふき出してしまい、「何なんですかソレは」と蛇腹を指さしゲラゲラ笑ってたら、ポーカーフェイス兄さんも必死で笑いを嚙み殺してたみたい。ていうか、もう、つられてちょっとだけ笑ってた。←

¥1,000カットの感想としては、異色の「は~おもしろかった!」となろう。

***

現在は、他のお客と時間がかぶらないような手配がなされており、ほどよい距離感で話ができて腕も確かな美容室を住まいからわりと近くに見つけて、そこに継続して通っています。よい美容室と巡り会えてよかったなと思うけど、そうか…自分でそんな意識はなくても、様々な遍歴があったわけだ笑
ひとつ言えるのは、やはり何はともあれ美容師さんはすごいな~ってこと。髪を扱う技術以外にも、いろんな人とうまく接しながら様々なことをこなされてるって、あらためて考えてみたら相当な能力と労力ですよね。

末筆になり恐縮ですが、美容師さん、いつもありがとうございます🙏

妙なもん見たけどなんか元気になったわ…というスポットを目指しています