Logicpierrot

インターネットを繙けば、夥しい数のリアルな写真・動画が溢れている。 そういったものの必…

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インターネットを繙けば、夥しい数のリアルな写真・動画が溢れている。 そういったものの必要性は高いけれど、いったん立ち止まって見てみることも重要なんじゃないか。 そう思い、被災地を訪れ、写真を撮り、感じたことを文章に残す。 ただそれだけをただただ愚直に。

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追記 - After Reports - 常陸大宮・久慈川

 久慈川の最大の氾濫地域は大子町と言ってよいが、久慈川沿いには他にも多数の決壊した街がある。その一つが常陸大宮市だ。  常陸大宮市は以前の記事で那珂川の氾濫について触れたが、同市内富岡地区において久慈川による氾濫も発生した。  国道293号線が久慈川を跨いで東進するところに富岡地区はある。この橋から50mも離れていない地点から久慈川は決壊した。2019年10月12日から13日の未明にかけてのことだ。久慈川の左岸、東側の堤防が崩落。その被害延長は400mにものぼる。浸水は堤防

    • 爪跡と生活  - Life with Disaster - 大子・久慈川篇・後編

       観光とはつまり移動である。  2019年10月12日に日本列島を襲った台風19号は、家屋や農地への浸水だけではなく、道路や線路へも把握しきれないくらいの被害をもたらした。水が豊富な日本という国土にあって、道は川を渡らねば目的地に到着できない。そのために重要な役割を果たすのが「橋」である。  今回の台風19号では大小合わせてあまたの橋が崩落した。栃木篇でもお伝えしたが、宇都宮市の川田橋や小山市・佐野市の生活道路に架かる橋が崩落し、無残な姿を川底に横たえていた。  それらの橋

      • 爪跡と生活  - Life with Disaster - 大子・久慈川篇・前編

         「失われた街」という表現が正しいのかどうかはわからない。  バブル華やかなりし1980年代、日本全国には大型宿泊施設を伴った温泉地が文字通り氾濫していた。当時は慰安旅行全盛の時代で、同じ会社の従業員や地域の集まり、あるいは農協などのつながりから結集した50人100人規模の団体客が同じ宿に泊まり、宴会場で一堂に会して酒を飲みながら無駄話に花を咲かせ、近隣の温泉街に繰り出しては狼藉を働くなど、今の時代では考えられないような過ごし方をさも当たり前のようにしていた時代だった。  

        • 追記 - After Reports - 喜連川・内川

           何事にも寿命というものがあると実感したのはいったいいつ頃からだろうか。  それはまさしく実感で、自分の周りにある雑多な存在が消えたり潰えたり、音もなく気づかぬうちになくなっていく。機械が壊れた原因がわからない場合でも「寿命だね」と言うし、修理の施しようのない車にも同じ言葉を使う。世の森羅万象にはすべからく、避け得ない終着点があるのだ。それが当たり前だと感じるようになったのは、どのあたりを境にしてからなのか。  2019年10月12日、東日本を中心に大きな被害をもたらした台

        追記 - After Reports - 常陸大宮・久慈川

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        • After Reports
          6本
        • Life with Disaster
          14本

        記事

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 水戸・那珂川篇

           季節はずれの暖かな如月の風が川面を吹き抜けていく。関東平野の北東のどん詰まり、雄大な茨城の大地を悠々と流れる那珂川の、その長い川幅を跨ぐ国田大橋から上流に目を向けると数十羽の鳶の群れが大空を旋回していた。広大な田畑を耕うんするトラクタが冬の惰眠を貪っていた蟲たちを地表に晒け出していく。それらを狙う狩猟者たちは、宙を周る優雅な飛行から一転、こぞって地上へと降りてはまた飛び立っていく。  ほんの4か月前、一面のその畑は深い深い水の底だった。  2019年10月13日未明、茨城

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 水戸・那珂川篇

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 常陸大宮・城里・那珂川篇

           2019年10月12日から13日の未明にかけて、東日本を中心に広がった台風19号の被害について、【爪跡と生活】 - Life with Disaster - 第1回から第10回までは栃木県の被災状況を中心にお伝えしたが、この未曽有の超大型台風は隣県である茨城県にも大きな爪跡を残している。  そこで今回の第11回からは茨城篇として本シリーズをお届けしたい。  まずは茨城県全体の被害を概況する。()内は栃木県の数字であり比較いただきたい。  人的被害は死亡者2名(4名)、行方

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 常陸大宮・城里・那珂川篇

          幕間 - Intermission - むつ・恐山

           薄群青色に染まる水面は時に陽が射し、時に翳りつつ小さく小さくさざなみを打ち、白くけぶる山影は漂う雲に導かれるかのように時折顔を出す。だが木々を照らす柔らかな光に誘われてしかと目を凝らしても、手を伸ばせば届きそうなその彼岸は濁として見えない。  むつ市街から県道4号線のつづら折れを車でひたすら上ると、森を抜けて急に視界が広がる。宇曽利山湖だ。火山である恐山にカルデラ湖として存在するその湖の畔には、曹洞宗の寺院である恐山菩提寺が門を構えている。はるばる下北半島の深奥にまで足を

          幕間 - Intermission - むつ・恐山

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 下野・新川篇

           本シリーズ、【爪跡と生活】- Life with Disaster -も第10回を迎えることができた。これもひとえに読んでくださる読者様のおかげである。この場をお借りして改めてお礼申し上げる。  昨年2019年10月12日に日本へ上陸した台風19号の被害状況を、栃木県内の河川を中心に取材してお届けしてきたわけだが、この台風19号がもたらした栃木県全体の被害を概況すると、人的被害として死亡者4名、県管理13河川のうち27か所で堤防が決壊。住宅被害は19,237棟を数え、災害ゴ

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 下野・新川篇

          追記 - After Reports - 小山・思川

           今年1月にアップした台風19号の被災地である小山市を再訪した。前回の記事では簡単に紹介したもののきちんと写真を撮れていなかった、白鴎大学大行寺キャンパス付近や豊穂川水門を歩いてきたのでご報告する。  白鴎大学大行寺キャンパスは思川のごく近くにあり、在籍者数は小山駅前にある本キャンパスを合わせると4,700人になる比較的大きな大学だ。栃木県内の大学では唯一法学部を擁している。  その白鴎大学の学生向け通知によると、昨年2019年10月12日に日本を襲った台風19号による水害

          追記 - After Reports - 小山・思川

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 大田原・蛇尾川篇

           栃木県の北西に連なる那須岳から緩やかに傾斜した扇状地・那須野ヶ原。「手にすくう水もなし」と詠われたその地は関東平野の北のどん突きにあたる。一般的な関東平野の地質とはかなり異なる特長を持った那須野ヶ原の、さらに東の端に大田原市は存在する。この街は高校時代の3年間を過ごした思い出の地でもあるのだ。  大田原市は栃木県の北東に位置し、人口は約7万5千人。県北では那須塩原市に次ぐ規模である。歴史ある古い街で、市内には戦国時代に建築された大田原城の跡地があり、江戸時代までは城下町とし

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 大田原・蛇尾川篇

          追記 - After Reports - 栃木・巴波川

           「爪跡と生活 - Life with Disaster -」のシリーズを始めて第8回を数えるわけだが、取材したすべての被災地が単独の記事になるほどのボリュームを備えているわけではない。小さい氾濫・越水から、表にはそのようには見えなくとも大きな建屋全体がダメになる被害をもたらした河川もある。  数々の氾濫した河川を撮影させてもらったわけだが、実は最初に取材した河川は第1回の記事の永野川ではない。同じ栃木市を流れる巴波川(うずまがわ)の越水地域を撮影したのがこのシリーズの始まり

          追記 - After Reports - 栃木・巴波川

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 宇都宮・姿川篇

           大谷石をご存じだろうか。  大谷石とは資材用途の石材で、軽くて軟らかく加工しやすいため主に住宅用として使われる。耐火性に優れており、かまどや石塀、あるいは蔵や倉庫の壁などに使用されることが多い。栃木県宇都宮市を主な産地とし、石を切り出す採掘場が市内の大谷町に集中して存在することから大谷石と呼ばれる。  城山地区大谷町は宇都宮市の北西に位置し、総世帯数は約800世帯、人口は約2,200人ほどの小さな地域だ。その大谷町には宇都宮の中でも屈指の観光資源がいくつか存在している。

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 宇都宮・姿川篇

          追記 - After Reports - 栃木・永野川・桜篇

           昨年12月にアップした栃木市を流れる永野川の記事において、大きな浸水被害を受けた栃木工業高校と隣接する永野川緑地公園の桜について書いた。そこで今年3月に見頃を迎えた同地の桜を撮影したのでお届けする。  2019年10月12日、台風19号による大雨によって発生した、永野川に架かる上人橋付近の決壊で、そのごく近くに学び舎を置く栃木工業高校と、その河川敷にある永野川緑地公園が浸水で甚大なダメージを受けたことは以前の記事でも述べた。  この時から約4か月、栃木工業高校は被災後

          追記 - After Reports - 栃木・永野川・桜篇

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 那須烏山・荒川篇

           2019年10月12日、日本全土を襲った台風19号は、栃木県那須烏山市内を流れる主要河川・那珂川において、川の増水によって市中の雨水が排水できなくなる、いわゆる「内水氾濫」が起こり、市内にある4か所の浄水場や取水場に大量の雨水が侵入して施設全体が水没。上水施設の機能不全をもたらした。  その翌13日からは市内の半数にのぼる約4,000戸での断水を余儀なくされ、市外から水を引き回すなどの懸命の処置にもかかわらず、断水が解消される目途は全く立たなかった。  被災後、市が運営する

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 那須烏山・荒川篇

          追記 - After Reports - 栃木・永野川

           昨年の12月にアップした台風19号の被災地である栃木市を再訪した。前回は永野川の決壊箇所付近である栃木工業高校近辺の写真をご紹介したが、今回は栃木街道を挟んだ反対側を少し歩いてみたので、追記としてご報告する。  栃木県県道2号線、いわゆる栃木街道は宇都宮市と栃木市とを結ぶ片側2車線の道路だ。宇都宮市桜2丁目交差点から栃木市万町交番前交差点までの概ね25kmほどの区間を指す。県の中央を縦断する国道4号線の裏道とも捉えられ、交通量も豊富だ。  街道沿いは商業施設も多く、数多く

          追記 - After Reports - 栃木・永野川

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 足利・出流川篇

           2019年10月16日15時、群馬県太田市に本工場を置く自動車会社スバルは、本工場と近隣の矢島工場、および同県大泉町にある大泉工場の自動車生産ラインが停止するという事態に陥った。同工場はその年の10月12日に日本列島を襲った台風19号の直接的な被害は免れたものの、生産に必要な部品を供給する部品生産企業、いわゆるサプライチェーンの一環である工場が被災したため、部品調達に支障を来したのだ。足利市の毛野東部工業団地に属するその企業は、所有する金属プレス機30基・溶接ロボット27基

          爪跡と生活  - Life with Disaster - 足利・出流川篇