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★児童・生徒指導63★生徒指導提要から考える その15(学習指導と生徒指導)

今回も「生徒指導提要」を読んで、考察をしてみたいと思います。あくまでも、読んで感じたことや考えたことなどの、個人の一見解です。また、読み進めながら書いていくため、全体像を見通した内容になっていなかったり、解釈の仕方が変わっていったりする可能性もあります。

今回からは「第2章 生徒指導と教育課程」の内容を読み、考えていきたいと思います。今日はその中の「2.1.2 学習指導と生徒指導」に焦点を当てていきます。

学習指導と生徒指導


「学習指導と生徒指導」においては、以下のように説明されています。

学習指導要領では、知・徳・体にわたる「生きる力」のバランスの取れた育成を重視しており、学習指導と生徒指導との関連を意識しながら、日々の教育活動を充実していくことが重要です。このことは、学習指導を担う教員が同時に生徒指導の主たる担い手にもなるという日本型学校教育の特徴を最大限に発揮させることでもあります。

文部科学省「生徒指導提要」P41

当然のことながら、学習指導と生徒指導は密接につながり合っています。例えば、「授業中は学習指導」「休み時間などは生徒指導」のように切り離して考えることは、教師の子どもたちへの働きかけに不具合を生じさせてしまう可能性があります。学習においては、子ども同士の人間関係が如実に表れるし、学びに向かう大切さを子どもたちに伝えているか、そのイメージを教師と子どもたちの間に明確に共有できているかということが重要になってきます。そのように、授業中の姿には「日頃の生徒指導」というものがよく表れます。そして、これは教員同士でもよく指摘し合うことでもある。研究授業で、「日頃の指導が~」と指摘される部分は、生徒指導的要素を多分に含んだものがよくあると感じます。

しかし、生徒指導上の課題を、授業や学習を通してよりよくしていこうとする取組は少ないように感じます。学習の中に生徒指導的な視点をもち、授業を通して伝え、行動していくことによっても、子どもたちの自己指導能力は高まっていくと思います。

生徒指導の視点から見た、学習指導の在り方


また、このようにも説明されています。

学習指導において、児童生徒一人一人に対する理解(児童生徒理解)の深化を図った上 で、安全・安心な学校・学級の風土を創り出す、児童生徒一人一人が自己存在感を感じられるようにする、教職員と児童生徒の信頼関係や児童生徒相互の人間関係づくりを進める、児童生徒の自己選択や自己決定を促すといった生徒指導の実践上の視点を生かすことにより、その充実を図っていくことが求められています。

文部科学省「生徒指導提要」P41

学習指導においては、教科ごとの目的や目標があり、それらは(互いに関係し合いながらも)それぞれの特性をもっています。しかし、学習指導の場面において、共通してもつことのできる生徒指導の視点があるのではないだろうかとと思うのです。

生徒指導提要にあるように、例えば、まず学習を通して安心・安全な学級の風土をつくることがあります。「安心できる環境があるから、安心して学習に取り組める」ということはもちろんあるかもしれませんが、はじめから完成しているわけではない学級において、これらは「授業を通して構築していく」必要があります。

そして、このような環境で、自分という人間や自己の考えを安心して表現することができる中で、「大切な自分という人間の存在=自己存在感」を高めることにもつながります。

また、授業の中での子ども同士のやりとりを通して、子ども同士の関係性がより深まっていきます。子どもたちの発言や選択など、学びへの姿勢に対する教師の働きかけにより、教師と子どもの関係性にも影響を及ぼします。教師の良質で適切な働きかけによって、子どもたちは学びへの意欲を高めるとともに、「授業中」という枠組みにとらわれることなく、「自分」という人間の在り方を見つめることにもつながるのではないでしょうか。

このように、子どもたちは、各々の教科について学ぶということを行いながら同時に、その教科を通して、共通して生徒指導的要素も学んでいると言えます。

教師としては、「授業中は学習指導」「その他の時間は生徒指導」などと、完全に切り離された視点ではなく、実際には境界線のない、密接にかかわり合ったものであるということを再確認することが大切だと思います。

また、以下のようにも述べられています。

また、生徒指導においては、「社会の中で自分らしく生きることができる存在へと児童生徒が、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える」という生徒指導の意義を再確認することが求められます。個別の問題行動等への対応といった課題早期発見対応及び困難課題対応的生徒指導にとどまること なく、全ての児童生徒を対象にした課題未然防止教育、さらには一人一人のキャリア形成等も踏まえた発達支持的生徒指導の視点が重要になります。学習指導要領の趣旨の実現に向け、全ての子供たちが自らの可能性を発揮できるように「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実していく上で、特に発達支持的生徒指導の考え方を生かすことが 不可欠です。

文部科学省「生徒指導提要」P41

「社会の中で自分らしく生きることができる存在へと児童生徒が、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える」という生徒指導の定義の内容は、「学び」における重要な要素が含まれています。

「社会における学ぶことの意義を考える」
「自分らしい学び方や学習の対象を考える」
「自分にとってふさわしい学習方法を考え、選択して学んでいく」
「自発的に学ぶ必要性を感じ、実践する」
「主体的な学びと、従属的な学びの違いを知る」

などのように、生徒指導の意味合いはもちろんのこと、「学ぶ」ということに対する観点としても読み替えることもできる。このように、生徒指導の視点と、学習指導の視点は切っても切り離せないような関係あるのではないかと考えました。


ここまでお読みいただきありがとうございました。