★児童・生徒指導62★生徒指導提要から考える その14(「社会的自立に向けた取組」)
今回も「生徒指導提要」を読んで、考察をしてみたいと思います。あくまでも、読んで感じたことや考えたことなどの、個人の一見解です。また、読み進めながら書いていくため、全体像を見通した内容になっていなかったり、解釈の仕方が変わっていったりする可能性もあります。
「生徒指導の取組上の留意点」について読み、考えをまとめていきます。ここでは、「児童生徒の権利の理解」「ICT の活用」「幼児教育との接続」「社会的自立に向けた取組」の4つの留意点について述べられています。今回は、「社会的自立に向けた取組」に焦点を当てていきます。
複雑な学校環境
生徒指導提要では、「子供・若者育成支援推進大綱」の内容から、現代の複雑な学校を取り巻く状況について以下のように説明されています。
学校という場には、上記のような大きく5つの課題があり、そのような状況から生徒指導はいち学校内で完結するようなものではないということが述べられています。
学校を取り巻く課題にどう対応するか
このような課題にどう対応するかということについては、全国の学校に影響を与えるような制度構築などマクロな視点と、いち学校・いち教師の取組レベルのミクロな視点とがあると思いますが、今回はミクロな視点で考えます。
いち学校内で完結するような生徒指導で終わることなく、児童生徒が異なる学校へ進んだり、学校という場から離れたりする場合にも、意味のある生徒指導を行う必要があると考えられます。
いち学校内でのみ通用するような規範やルール、システムに縛られすぎてしまうことは、長い目で見たときに意味をなさなくなってしまうかもしれません。将来にわたって必要になるという視点では、子どもたちが、社会の中で「自分はどう考え、どう判断し、どう生きるのか」ということを意識できるような働きかけが重要になってくるのではないでしょうか。
「生きることのよさ」を感じられる働きかけ
ひとつに、子どもたちが「生きることのよさ」を実感できる生徒指導があると思います。
複雑化する学校現場、そして社会の中で生きる土台になるのは、生きることの意味や生きることのよさを感じられるという気持ちです。生きることの意味を自ら構築するといった方がよいのかもしれません。
多様化した教室では、ひとりひとりが尊重されることが望ましいとされながらも、まだまだ生活しづらさを感じたり、受け入れることができなかったりするきもちに悩む児童生徒もいると思われます。そのような中で、「自分のという人間が分からない」などと悩み、無気力になってしまったり、不適切な方法で自分の存在を意味づけてしまったりするようなことがあるのかもしれません。
もちろん、「自分という人間を知る」ということは一朝一夕にできるような簡単なことではありません。悩み、葛藤すること自体が悪いというわけでもありません。
マイナスな方向にだけ傾きすぎてしまい、自分をプラスの方向に捉えることができなくなってしまうことが問題なのではないかと思うのです。
土台になるのは、生きることの意味や生きることのよさを感じられるという気持ちです。もっというなら、「自分のことが好きだ」「自分なら大丈夫」「自分が自分であってよい」と感じられる気持ちです。このような感覚は、自己肯定感と呼ばれることも多いでしょう。
つまり、いち学校内で留まらない生徒指導は、子どもたちに自己肯定感を育んでいく生徒指導であるとも言えるのではないでしょうか。
子どもとともにある教師として
上記の引用部分で述べられていることには、教師や学校が置かれている状況に関する課題もあります。また、学校を離れてもサポートし続けたり、他機関につないだりする必要性という意味も含まれていることと思われます。自己肯定感を育む生徒指導というのは、ミクロな視点では、教師が子どもたちに対して行う働きかけであり、それらの課題全てに対応している方法ではありません。
しかし、いち教師として子どもたちとともに生活する中で、日々の生徒指導の基盤になってくるのは、「生きることのよさ」を感じられるような働きかけをすることであると思うのです。人間関係について、社会の規範やルールについて、教科学習において、これらの様々な場面を通して、自己肯定感を育んでいくことが、子どもとともにある教師としてできることなのではないかと思います。
「社会的自立に向けた取組」の内容から考えたことではありますが、少し飛躍した内容になってしまったかと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。