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著: イ九    

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イ九によって書かれたお話たちです。
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記事一覧

【短編小説】佐鳥と新村

みなさんこんにちは! あたし、下まつ毛バチバチギャル・佐鳥! 突然ですが、みんなに聞いてほしいことがあります。それは、あたしの隣の席の新村くん─―心の中でシンシンって呼んでるよ!──がカッコよすぎるってこと! 最初は正直、メガネだし地味だし、話とかツマンなそ〜って思ってたんだけど、あたしの目、なんだっけ、シンビガン? が腐ってた。ちょっと長い前髪に隠れてる目の形とか、菅田将暉みたいなツンとした鼻と

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【短編小説】キラキラ、ぜんぶ。

【短編小説】キラキラ、ぜんぶ。

金色の折り紙、おもちゃのゆびわ、ケーキの上のアラザン。小さい頃からずっと、キラキラしたものが好きだ。ジルスチュアートのリップ、ビジュー付きチョーカー、ヴィヴィアンのピアス。
いわゆる「地雷系」と呼ばれるファッションを身に纏って、夜の街を歩く。世間は二日後に来たるクリスマス・イブに向けて浮かれまくっている。ルナはそれが嫌いじゃなかった。街は大きなツリーやイルミネーションでこれでもかというほどキラ

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【短編小説】揺り籠から墓場まで

【短編小説】揺り籠から墓場まで

「サービスだよ」
「え、サラからハグって激レアやん……明日は槍でも降るん?」
「……」
「無視はよくないな」

 ぎゅう、と抱きしめた。私は意地っ張りで、ついこの間もレンと喧嘩したばかりだ。レンを前にすると、いつも以上に素直になれない。

 私たちは幼馴染で、何をするにもずっと一緒だった。おままごとをして遊んだり、砂場でおやまを作ったり。17歳になった今、さすがにそこまで幼稚な遊びはしないけど、た

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【短編小説】あなろぐ!蛇王ナーガ様

【短編小説】あなろぐ!蛇王ナーガ様

「人間、これはなんだ?」
「スマホだよ。遠くの人と連絡が取れたり、調べ物ができたりするの」
「ほう……薄くて軽いのに、便利な板だ。そんな機能を併せ持っていたとは」
「板って……ナーガの世界にはこういうのないの?」
「主な連絡手段は手紙だ。調べ物は蔵書室へ」
「意外とアナログなんだね」
「あなろぐ」

 長く尖った爪でコツコツと画面を叩いているのは、ある日突然異世界からやってきたナーガと名乗る青年だ

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