たかひこちゃん

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たかひこちゃん

note超初心者です。 保護ねこ活動とギターに活かされている会社員兼ちゅーる搬入担当。 というより、うちのヒエラルキートップはねこたち。 拙い 妄想を「短編小説」としてアウトプットしております。 よろしければ、しばしお付き合いくださいませ。

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  • 雑記

    日記のような、妄想ではない文章をまとめてみました。

  • 短編小説

    短い妄想文をまとめてみました。 お口に合えばよいのですが。

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「粗にして野だが、卑ではない」 (短編小説)

 5月の緑の風はどんな身分にも平等に吹いてくれる。 昼間からこうして縁側にいて、何もせずにいる自分にも同じだ。  いい歳してと思うかもしれないが、世の中なかなか上手くいかないもんである。  そうして何度めかの居眠りをはじめた時、玄関の方からカギを差し込む音に気付いた。   今年から高校に通っている麻衣子が帰ってくる時間にしては、いかに言っても早すぎる。  しかもカギを差し込む音がガチャガチャと何やら忙しない。  万が一に備え、身を低くしながら玄関の影に身構えた。  無職で

    • 「ガーディアン オブ コインランドリー」 (短編小説)

       この時期の長雨でよろこんでいるのは、黴とアマガエルだけだと断言したい。  少なくともぼくは気が滅入る以外に何もないのだ。  現に部屋にたまった洗濯物を見ないようにして過ごしていたが、さすがに替えがなくなりようやく重い腰を上げざるを得ない状況になった。   早朝、身体をたたむように電車に乗り感情を殺しながら仕事をこなし、自宅にたどり着くと明日のために寝るだけの日常。  いつしか洗濯はあとまわしとなり、この雨季と重なってしまいぼくの部屋は洗濯を待つ衣服で緊急事態発令と相

      • 海路の日和とは (雑記)

        誰にも教わらないのに、知っている世の中の「ルール」。 その中で、生きることに直結してる知識を『知恵・智慧』と言いますね。 出張先のこの港町で、毎朝見られる光景。 誰に教わったでもないのに、本当にスゴイなぁ。 この子もそうやね。 ちょっと切なさも漂うんですがね……。 だんだん海に浮かんでいる浮きに意識が集中する、ふたり(?)。 あ 竿に動きが。 「待つことを知る者には、万事が適当なときにくる」 (フランスのことわざ) 経験に勝る知恵はないねぇ 。

        • 「逃し屋ジョーの記録」 (短編小説)

           「24ジョー」  その名で呼ばれるようになったのは、仕事の成功率が99.99%から純金を意味する「24K」や韓国で「急いで移動する、引っ越す」の隠語である「24」、報酬が見合えば「24時間」いつでも仕事を受けるからとも言われるが、本人にとってはどうでもいいことであった。  失敗とカウントされるのも、契約を守らなかった依頼人を直接に手を下したとされているので、実質100%であるとも聞く。  その男の噂は裏社会で生きるものなら伝説の逃し屋として知ってはいるが、誰しも禁忌と

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        「粗にして野だが、卑ではない」 (短編小説)

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          「人間万事塞翁が馬」 (短編小説)

           その国は、昔から伝説として語り継がれてきたという。  中世ヨーロッパのある文献の記述によると、魔女狩りの公開処刑が行われる広場の上空に、雲の切れ間からこつ然とその姿を現した。  騒然とする観衆に行政官も執行を取り止めたと記されている。  その浮島のような国。  そこに行ったという男がいる。  彼の名はヨハン・ヴォルフガング。  1900年、パリで行われる万国博覧会にドイツから飛行船技師として参加する予定だった。  普仏戦争で関係が悪化した両国の友好の橋渡し役と

          「人間万事塞翁が馬」 (短編小説)

          「雪の夜の裏側」 (短編小説)

           バックシートの背もたれがなかったかのように、伊達メガネの男は小さく隠れるように身を置いた。  腹の奥にジクジクとした苛立ちが次第に大きくなっていく。  余計に焦ると分かっているが、腕時計に目を落として計画より時間を取られていることにあらためてほぞを噛む。  苛立ちの原因はわかっている。  タクシーの窓の外は、急な大雪による積雪で幹線道路は徐行と事故渋滞が頻発していた。  もうひとつは……  「でね、言ってやったんですよ。 そりゃ、天気予報をこまめに観てないお前が

          「雪の夜の裏側」 (短編小説)

          Childfood's End. 幼年期の終わり (雑記)

          ふすまを閉め切った仏間の天井が、だんだんに木目を浮かび上がらせる前に目を覚ました。 おふとんをたたみ、朝いちばんのあいさつを仏壇にする。 母屋の裏に走っていき、顔と歯を磨く。 大人用の健康サンダルをかぽんかぽんさせながら、勝手口を開け台所に入る。 三和土に上がりサンダルを揃えると、それを見ていた祖母がうなずき、あいさつをする。 「たか、おはようありました」 あいさつを返すと、お味噌汁の味見をさせてくれる。 味を見ようが見まいが、毎朝美味しいに決まってる。 だか

          Childfood's End. 幼年期の終わり (雑記)

          「来訪者たちの黄昏」 (短編小説)

           駅からすこし歩いた通りの両脇に、あたたかそうな灯りを抱えた店が並ぶ。  それぞれ思い思いの立て看板におすすめメニューを掲げ、店先の赤いちょうちんに誘われてサラリーマンが入っていく。  その男も仕事帰りに馴染みの居酒屋にふらりと立ち寄った。  「っらっしゃーせー!」と一昨日より大声で叫ぶバイトを見ると大将の再教育がなされた賜物だろう。  ふと奥を見やると、3人の見慣れない客が座敷を陣取って、深刻な話を無理に進めようとしている。  どの男も一度視界から離れると二度と思

          「来訪者たちの黄昏」 (短編小説)

          「つぐみの独立国家宣言」 (短編小説)

           そのため息はフローリングを滑り、リビングのソファーの上で弾んだ。  なぜなら、その所有者であるおかあさんは、いつものルーティーンが崩れて面倒くさい一日になる予兆を感じたからだ。  黒いネコの描かれたダンボールを避けながら、リビングを横切り廊下に出ると子ども部屋に向けて声を投げる。  「つぐみ、起きなさい」  いつもなら、早くからリビングで寂しかった夜の隙間を埋めようとするように、話し相手を探して待ち構えている子なのだが、今日に限っては陽が高くなっても自室から出てこない

          「つぐみの独立国家宣言」 (短編小説)

          「我輩もねこである」 (雑記)

           吾輩は猫である、との有名な書があると聞くが、何を隠そう我輩もねこである。  名前は「このコの行く末がしあわせにあふれるように……」と付けてもらったが、それが何かまでは記憶してない。  主人がめずらしく魚釣りに赴くと言い出し、いそいそと早朝より準備をしていた。  新鮮な魚にめっぽう目がない我輩は、居ても立っても居れず主人に内緒で車に忍び込むことにした。  季節外れの寒波が平日の雨と共に去って行った土曜日、太公望にも知られてないような小さな漁港にたどり着くと、いそいそと竿を延

          「我輩もねこである」 (雑記)

          「落ちないでハンプティダンプティ」 (雑記)

          まさか、自分が単身赴任になるとは思わなかった。 それも大阪のど真ん中である。 目紛しく毎日行き交う人の洪水に、ようやく慣れた電車の乗り継ぎ。 だが、本当に割り込みがひどいのには閉口した。 早朝、乗り換えの駅であるホームに立っていると、点字ブロックと自分の前にグイと入る影があった。 それが、通勤電車でいつも向かいに座る男性。 英国紳士風のスーツにキャメル色のマフラーを巻き、細身の足もとには茶色のシューズが磨き込まれた輝きを放つ。 短く刈り込まれた頭髪は、年齢のためもある

          「落ちないでハンプティダンプティ」 (雑記)

          「イカロスの翼」 (短編小説)

           白い機体に走る、鮮やかな青いライン。  流線形の終点に立つ尾翼には、スカイブルーの鷹をあしらった社章が輝いていた。  客室内に耳心地のよい電子音が聞こえてくる。  「スカイサービス社は、完全オートメーションによる人的ミスを排除した、まったく新しいエアサービスを提供しております。  高性能次世代AIによる操縦で、快適な空の旅をお楽しみください」  近年、航空機のパイロットによる人的災害が多発し、社会的に問題となっていた。  格安運賃競争と時間外労働時間規制によるパイ

          「イカロスの翼」 (短編小説)

          「聖母のように」 (短編小説)

           カフカの「変身」の主人公であるグレゴール・ザムザは、目覚めると毒虫になっている最悪な朝だったが、私の目覚めの方がもっと悪かった。   なぜなら、目覚めると昨日と変わらぬ「私」だったのだから……。  42年間、私は私で在りつづけたが何も秀でる物が無かった。  中学時代のあだ名が「シースルー」。  「海を突き抜ける」カッコ良さに内心喜んでいたが、母親の何気ない会話に真意を見つけた時には、自分自身のバカさ加減に枕に顔を押し付けて泣いた。  私の見た目同様に平凡な5流大学に

          「聖母のように」 (短編小説)

          「私の消えた朝」 (雑文)

           今朝は幾分、腹ばいになるのが難しく違和感で目が醒めた。  いつもは空腹感に突き動かされ目覚めた直後にでも食欲旺盛で、食事が用意されてない時など食パンを袋から出すのももどかしいほどであるのだが、今日はそうではないようだ。  視線を自らの腹部にやると、昨日よりさらに大きくなっている気がした。  なるほど、このお腹ではすこし動くにも息は上がり、身体全体で呼吸しなくてはならないのも頷ける。  寝床を出て廊下をゆっくりと潜水でもするかのように進み、キッチンに入ると誰もおらずい

          「私の消えた朝」 (雑文)

          場違いな定位置より (散文)

          「疲れた」は、よく頑張った証拠。 「間違えた」は、問題に挑んだ証拠。 「緊張する」は、気が引き締まってる証拠。 「死にたくない」は、みんなといっしょにいたい証拠。 「諦めようか」は、それまで希望を捨てずにいた証拠。 「素直になれない」は、それほど相手のことを考えてる証拠。 お疲れ様でした。 すべての「わたし」に。

          場違いな定位置より (散文)

          「3つの願い」 (短編小説)

           「お前はどうも落ち着きがないねぇ。 いいかい、人生にはどうしても慌てちゃあいけない時があるんだよ。   ひとつ目はプロポーズの時。   もうひとつは……」  そう言って、心配そうに幼い僕の顔を覗き込んだ祖母の目を見返しながら、プロポーズという言葉の意味が気になって、それ以降の祖母の話をまったく覚えていない。  目の前にいる、褐色の魔人が急須の注ぎ口から出てきて、自分を見下ろしてる。  祖母の遺してくれた唯一の家宝らしかった。  『解放のお礼に、3つの願いをかなえよう』

          「3つの願い」 (短編小説)