りたますたー

サイゼリヤのバイトはもう辞めました。 最近は短い小説を書いています。

りたますたー

サイゼリヤのバイトはもう辞めました。 最近は短い小説を書いています。

最近の記事

後書

この間、大昔に読んだ『チーズはどこへ消えた?』という本をまた読んでみました。 すっかり内容は忘れていたのですが、簡単に説明すると二匹のネズミと二人の小人が迷路のような場所にチーズを探しに行く話で、最初に見つけたチーズが底を尽きてしまい、二匹のネズミはすぐに次のチーズを探しに行くのですが、小人二人はチーズが無くなった現実をなかなか受け入れられず、その場に立ち止まってしまいます。 そのうちの一人の小人『ホー』はチーズが無くなった現状を理解して、次のチーズを探しながら様々な教訓を

    • 宣誓

      「今言ったことウソ、なにもかもウソ。全部無しだからね!」 そういうふうに言ったら、どこまでが実際に無しになるのだろう? 例えば今晩誰かとしていた飲み会の約束、30分後に届く予定の宅配ピザの注文、明日の夜に予約したイタリアンレストランのディナー、これらは自分の一存では無しにはならない。 ちゃんと先方に連絡してキャンセルの了承を得なければ、相手に迷惑が掛かる上に信用も失う。 人との約束を破らない。当然の話だ。 では「近いうちにお店に伺います」とか「また何処其処(遠方の友人が住

      • 元素

        「海みたいになりたいんだよなぁ。」 山根が何の前触れもなく言った。 「なんかさぁ、何かある度にクヨクヨ悩んだり落ち込んだりして、自分が情けなくなるんだよ。 思い通りに行かないことがあるとすぐキレたりしてさ。 もっとこう、海のように広い心で、なにもかも包み込むような包容力が欲しいわけ。 わかる?」 と、山根は無い物ねだりを口にした。 「そうすればもっとさ、なんていうかこう、女の子も頼りにして寄ってくるって言うか、、そんな副作用的な効果もあると思うわけ。 もちろんそれが目的で

        • 居候

          蜘蛛って気付いたら家の中にいるけど、一体どこから入ってきてるんだろうね? しかもオレが知るかぎり単独行動だし。 そうだなぁ。たぶん玄関のドアとか網戸の隙間から忍び込んでるとちゃう? 親兄弟とはそこで今生の別れや。 突然居間の床に出てくるとびっくりするんだよな~。 そうそう、いきなり現れる系の蜘蛛はだいたいデカい奴なんだ。 台所のガラス窓とかにへばり付いてるのは、小っちゃい子供みたいのが多いよなぁ。 アイツら何食って生きてるんだろか? たぶん生ゴミの中にある野菜の屑とかを

          銅像

          はい~♪今日もはじまりました! りたますたーの『おはようごきげんラジオ』 みなさま、いかがお過ごしでしょうか? ようやくほんの少しですけど、涼しくなってきた気がしますね いや、涼しくはないのかな~? まだ全然暑いんですけどね 暑さの峠は越えたって言うか せめてそう思いたい自分がいますね~ 今日も暑くなりそうなのでね、こまめに水分補給をして 熱中症には十分注意してお過ごしください♪ 一部の地域では雷雨の予想も出ているようなので、そちらもお気をつけて 最近は本業の傍らで短い

          転職

          音無さんという友人がいる。 彼女とは幸せについてよく語り合う。 昨晩、私は結婚のことや将来について両親に咎められ、なにも答えることができずに泣いていた。 音無さんは「ただ生きているだけでいいんだよ」と言っていた。 音無さんは『とらばいゆ』という女性向けの転職支援の会社で働いている。 私達の出会いのきっかけも、私が勤めていた会社を辞め、次の仕事を探してとらいばゆのオフィスを訪ねた時だった。 私の前職は一般事務で、パソコンにデータを入力したり書類の作成や電話対応といったごく普

          勇者

          今夜は部屋で心ゆくまでテレビゲームを堪能した。 今日発売の新型ゲーム機『プレイプレイス』通称プレプレの人気RPGソフト、スクウェアワンの『ファンタスティックファンタジア5』を5時間はぶっ続けで行っていた。 ゲームをしながらもさすがに睡魔に襲われていたが、アシラーユ城の王様に飛行船を返して瀕死の門番に鍵を渡して洞窟を渡り、モンスターの群れにギルを渡しながら南下してのジャーニーの町に着き、剣と鎧を質に入れて長老の話を聞いた頃には目が冴えていた。 母親の呼び声にワクワクを抑えなが

          宇宙

          苦手な物が多くて困っている。 声の大きい人が苦手。 思慮が浅そうだから。 道端にゴミを捨てる人が苦手。 人の迷惑を考えないから。 騒音を鳴らす車が苦手。 同上。 スピードを出して走る車が苦手。 威圧的だから。 態度の大きい人が苦手。 同上。 他人に敬語を使わない人が苦手。 人を見下しているから。 横柄な年寄りが苦手。 同上。 平等に接さない人が苦手。 誠実じゃないから。 損得で選ぶ人が苦手。 同上。 社交辞令を言う人が苦手。 嘘つきだから。 人当たりのいい人が苦手。 中身が

          偶然

          私は都内の某女性誌の出版社に勤める30代のOLで、30代と言っても40歳手前のアラフォーで、未だに独身であることから周囲に余計な気を遣わせている。 私自身は恋愛ドラマやゲームに推し活など充実したプライベートを送っているつもりだが、そういった杞憂がまったくない訳ではないので、何度かマッチングアプリで知り合った男性と食事に行ったことがあった。 マッチングアプリとは年齢や趣味や職業と指定された情報を載せると、それに見合った相手を紹介してくれる現代の出会い系サイトで、マッチングアプ

          戯曲

          六日目の朝、 早めに目覚めて一時間程ジョギングをし、部屋に戻ってシャワーを浴びジンを飲んだ 雨が降っていた MTVには何故かビルエヴァンスが出ていて、ワルツを演奏する彼は揺れていて、次第にピアノに吸い込まれていった 指にグリースを浸けヘアスタイルをセットする 歯はいつも入念に磨く セラミックの指輪は人差し指に填める 部屋を出るまえにもう一度ジンを口に含む 他に飲むものがないのだ 雨が降っている 夜はまだ明けない 僕がやってきたこの世界では、夜は完全には明けないようだ

          天井

          田舎の天井の記憶がある。 正しくは、正確に言うと、父親の実家がある福井の家で朝起きた時に見る天井のことだ。 おそらくは、いや、もう二度とその天井を見ることはないだろう。 幼い頃から父親に対しては苦手意識を通り越した相容れない感情があったのだが、田舎の福井に行くことは嫌いではなかった。 大人になってから自分一人で行っていたこともある。 昔から義理堅い性格なのだ。 新幹線で米原まで行って、米原から在来線に乗り換えて敦賀、鯖江を越えて福井駅に到着すると、祖母や叔母が駅まで迎えに

          四球

          スットォライィーーク! いいよぉ、甘いボールだからこの球狙ってけよぉ ボール! そうそうよく見て、ボール球に手を出さないこと ボール!! いいね~、相手に無駄球投げさせていこう ボール!!! そうそうそう、そうやって誘ってボールカウント稼いでいけ~ スットライィーーク!! ああー今のは振らないと~、鴨が葱しょって歩いてるんだから~ ファール! オーケー、際どいのは当てるだけでいいからねー ファール!! そうそう、焦らしてピッチャーに力使わせて~ ファール!!!

          墓標

          お盆前の金曜日、地元の居酒屋わんわんに高校時代の同級生5人で集まって飲むことになった。 俺達が会うのは高校を卒業して以来20年振りで、さながら同窓会の様相を呈している。 なぜこうして集まることになったかと言うと、半年前に起きたある事件がきっかけだった。 久々に会った俺達はとりあえず事件のことには触れず、現在の仕事や家庭環境などの近況と昔話を思い思いに語り合った。 内容の殆どが高校時代の思い出話で、会話が途切れる気配はなかった。 話のはずみで百合子が「過去って何なんだろうね

          機械

          ジローが家にやってきた。 ジローとは世界初の家庭用アンドロイドで、ロボット開発メーカーの研究所に勤める友人が、僕にモニターになってほしいと頼んできたのだ。 一般販売する前の最終段階として、実際の家庭で過不足なく働けるのかをチェックするらしい。 その友人いわく、お前なら一人暮らしで仕事も忙しいから打ってつけだろうとのことだ。 やれやれ。 登録番号bqz53890 製品名JIROERSSA77 僕は上のアルファベットをとってジローと呼ぶことにした。 ジローのメモリーにインプット

          黄昏

          吾輩はサビ柄の猫である。 名前はまだにゃい。 日本人なら誰もが知っているこのフレーズを言いたかっただけで、名前は行く先々でたくさんある。 にゃいのは住家の方で、帰る家はまだにゃい。  吾輩には生き別れになった双子の兄弟猫がいる。 幼子の頃はいつも二人?二猫で遊んでいたのだが、ある日突然、吾輩の前から姿を消した。 もしかしたら、どこかの家に引き取られたのかもしれにゃい。 そうであってほしかった。 吾輩というのもただ言いたかっただけなので、この先はワシと呼ぶようにする。 以来ワ

          酵母

          「麦ぃ!早くこっちこいよー」 俺達はいつも一緒だった。 俺と水野と塩谷、紅一点の酵子は同期入社の4人組で、新入社員のオリエンテーションで出会った時からずっと行動を共にしていた。 水野と塩谷がじゃれ合いながら俺にちょっかいを出してきて、それを酵子が宥める所までがいつものパターンで、周りから見たら喧嘩と勘違いされるほど俺達は本気でぶつかり合っていて、その度に絆を強くしていった。 酵子は母親のような存在だった。 酵子のおかげで俺達は大きくなれた。 もし酵子がいなかったら、俺達はコ