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戯曲

六日目の朝、

早めに目覚めて一時間程ジョギングをし、部屋に戻ってシャワーを浴びジンを飲んだ
雨が降っていた

MTVには何故かビルエヴァンスが出ていて、ワルツを演奏する彼は揺れていて、次第にピアノに吸い込まれていった

指にグリースを浸けヘアスタイルをセットする
歯はいつも入念に磨く
セラミックの指輪は人差し指に填める
部屋を出るまえにもう一度ジンを口に含む
他に飲むものがないのだ

雨が降っている
夜はまだ明けない
僕がやってきたこの世界では、夜は完全には明けないようだ

周囲を観察する限り、ここでは規則的な生活に身を委ねることが求められていて、当然僕もそれに倣った

中ぐらいのサイが歩いていた
どこに行くんですか?と訪ねたら、噴水に水浴びをしにゆくと言っていた
ふと、自分が傘を持っていないことに気付き、、
  目が覚めた

夢を見ていたようだ
雨の音がする
夜はまだ明けていない

 七日目の朝・・・

見えていたものが見えなくなって
しばらく見えなかったものが、また見えるようになる
そんなことってあるだろう

ずっとできなかったことが今日うまくできた
でも偶然じゃない
何回も失敗して、どうすれば成功できるのかよく考えたんだ

それは欠けているけど不変なもので
他の人は誰も、見向きもしないのかもしれないけれど

本当はわかっていないんだろう
当たり前のことが当たり前じゃないってことを

それに僕は、逆立ちして歩いている犬を見たことがあるんだ
ほんの一瞬だったのかもしれないけれど

それはとても優雅で風雅なできごと
まるで切り取った写真のよう
水たまりの上を歩く子供のようにね


なあ、アレキサンダー
そろそろ話してくれないか

なぜあの時、先に行ってしまったんだ


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