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勇者

今夜は部屋で心ゆくまでテレビゲームを堪能した。
今日発売の新型ゲーム機『プレイプレイス』通称プレプレの人気RPGソフト、スクウェアワンの『ファンタスティックファンタジア5』を5時間はぶっ続けで行っていた。
ゲームをしながらもさすがに睡魔に襲われていたが、アシラーユ城の王様に飛行船を返して瀕死の門番に鍵を渡して洞窟を渡り、モンスターの群れにギルを渡しながら南下してのジャーニーの町に着き、剣と鎧を質に入れて長老の話を聞いた頃には目が冴えていた。

母親の呼び声にワクワクを抑えながらもリビングに戻った。
ゲームを箱に入れて帰宅した父親に渡し、ケーキにロウソクを刺して両親と普段より豪華な食卓を囲んだ。
テレビのニュースでは、今日発売の新型ゲーム幾『ピンポンドースマッシュ』と、同時発売のRPGの最新作『ドラゴンズクエスチョン5』の特集がされている。

ピンポーン♪
「ただいま~」
玄関の呼び鈴が鳴り、父親が帰ってきた。
「サトシ~お父さん帰ってきたわよ~、晩御飯できたわよ~」
母親が呼んでいる。
僕はワクワクを抑えきれずリビングに向かった。
骨付きの鶏の唐揚げに玉子焼き、それに手巻き寿司。
今日の晩御飯はどれも僕の好物ばかりだ。

腹いっぱい食べた後はロウソクの刺さったケーキの登場。
「サトシ誕生日おめでとう~♪」
「フゥーーーッ」
僕は一息でロウソクの火を消した。
「パチパチパチパチ~」
リビングに拍手の音が響く。
「はい、14歳の誕生日プレゼント♪」
リボンの付いた箱には今日発売したばかりの『ピンポンドウプレイス』通称ピンプレの最新ソフト『ドラチョンファンファン10』が入っていた。

「やったー、ありがとう!さっそく遊んできていい?」
「ああ、今日は誕生日だから思う存分やっていいぞ。」
いつもは勉強しろとうるさい父親もこの日だけは優しい。
僕はケーキを食べ終えると、部屋に戻って早速ゲームのスイッチを入れた。
学校の宿題をやる時と違って僕の目は冴えている。

「魔王に支配された世界を救うため、選ばれし伝説の勇者よ!
主はこれからクドクドクドクドクドクドクドクド…」
旅立ちの町ディパーチャーの長老の説明を聞いた後は、頂いた軍資金で武器と防具を買い、しばらくは町の近くのモンスターを倒してゴールドを稼ぎながらレベルを上げた。
北上して洞窟に入り、中ボスを倒して鍵を手に入れた。
洞窟を抜けて次の大陸に渡り、ようやくユーラシア城に辿り着いた。
扉の鍵を使って王室に入り、王様から飛行船を貰った。

「よく来た!伝説の勇者よ!幾多の難関を乗り越え、身も心も疲れたことだろう。
今夜はこのアシラーユ城の宿でゆっくり休むがいい。」
王様にそう言われると、僕はなんだか眠くなってきた。
気付いたら10時間もゲームを続けていた。
 
あれ?なんか変だな…

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