リモートでも孤立させない、新人校閲者と並走する「オンライン研修」の中身
1年前、LINE校閲チームに2人の校閲者が仲間入りしました。チームでは入社時に対面で新人研修を行ってきましたが、初めて完全オンラインで実施することになりました。
今回は、LINE校閲チームの「オンライン研修」の中身をご紹介します。研修を経て普段の業務で活躍している2人に、リモート下での"気づき"も教えてもらいました。
LINE校閲チームの新人研修の「中身」、お見せします
LINE校閲チームでは、校閲経験の有無を問わず入社時に約3カ月間、マンツーマンで新人研修を実施しています。以前は対面で研修を行っていましたが、新型コロナウイルス対策で昨年から完全オンラインに切り替えました。
研修は大きく3段階で行われています。
▼第1段階では、校閲者として備えておきたい知識や視点を学ぶ「校閲研修」が行われます。全体を通して新人研修の基盤となる内容です。
▼第2段階では、より実務的な知識として、複数の社内サービスを校閲する上で必要な「サービス研修」、そしてチームで独自開発している校閲システムの使い方を習得する「システム研修」が組まれています。
▼第3段階の「現場研修」では、研修担当者が随時フォローをしながら実際の業務で行う校閲をしてもらいます。
いずれも受講者の進捗や習熟度に合わせて研修が進むため、調整期間として1カ月間ほどスケジュールに余裕を持たせています。
また、第1段階では並行して「編集研修」も実施しています。LINE NEWS編集部の協力のもと、ニュース編集の基礎やLINE NEWSの編集過程を学びます。校閲専門チームの研修過程で編集を学ぶのは少し意外かもしれませんが、編集者の動きや視点を知ることで編集上間違いが発生しやすい箇所に気づくことができ、校閲業務にも役立っています。
教科書は元からオンライン、体系的に校閲を学ぶ仕組み
在宅勤務によって「完全オンライン」に切り替えた研修ですが、元からリモートでの実施がしやすい仕組みでした。システム上で校閲作業をするため、Zoomの画面共有機能を使えば対面と大差なく校閲手順が学べる点に加え、受講者に伝えたい知識(=教科書)も社内Wikiにオンラインで蓄積してきたからです。
また、研修の基盤となる「校閲研修」では校閲知識を基礎編と実践編に分け、体系的に学べるように意識しています。以下は基礎編を一部抜粋したものです。
基礎編だけで200項目以上ものチェックポイントがあります。校閲未経験者も一定数いるため、ニュースで気をつけたい校閲の基礎を詳細に学べるようにしています。
LINE NEWSやlivedoor ニュースの校閲では報道の知識も必要です。事件・事故報道での呼称(例:容疑者と被告の違い)や、見通し表現の「~へ」、断定を避ける「~か」など、校閲時にスピード感を持って対応したい知識はここで身につけます。また、読んだ人を傷つけたり不快にさせたりする言葉に気づけるよう、差別語を例示するなどして注意喚起しています。
分類化された校閲知識を1項目ずつ学びながら、チームで作成したオリジナル課題に取り組んでもらいます。チェックポイントや課題は時々の状況に合わせて日々アップデートしています。
新人研修で大切なのは、業務に円滑に移行できるよう、必要な知識を網羅的に共有し身につけてもらうことにあります。あわせて(というかそれ以上に)重要なのが「コミュニケーション」です。対面でもそうでしたが、研修を完全オンラインで実施するにあたり特に気を配った部分です。
後半は、コミュニケーションの観点から「研修体制」での取り組みをご紹介します。オンライン研修を受講した2人にも振り返ってもらいました。
全員が「先生」、ALL校閲チームで臨む"対話を促す"研修体制
昨年、チームに仲間入りした福士さんと芦田さん。コロナ禍での入社となり、入った直後から在宅勤務でした。さぞ不安だっただろう……と話を聞きました。
-出社して業務をしていた筆者でさえ、在宅に切り替わったことで同僚とのコミュニケーションに不安がありました。2人はどうでしたか?
福士:業務連絡で使うZoomでのコミュニケーションは、最初は慣れずに戸惑いました。自宅での仕事も初めてだったので、怠けないだろうか……という心配もありました(笑)
芦田:私の場合、採用面接からオンラインでした。前職で小論文の添削はしていましたが本格的な校閲経験はなく、業務をきちんとこなせるか心配でした。それに、最初から在宅勤務でチームにうまく馴染めるか、とても不安でした。
-今ではZoomにも慣れて、2人ともチームにすっかり溶け込んでいますよね。
福士:研修中、Zoomの操作に手間取ることはあっても、コミュニケーション面でオンラインのストレスをほとんど感じませんでした。なので、溶け込みやすかった気がします。
芦田:研修にすごく時間をかけてもらって安心感がありましたし、研修対応をチーム全員でしてくれた点がポイントだったように思います。
福士:そうですね。研修カリキュラムを組む調整役のほかに、毎日1人つきっきりで研修対応をしてくれる"先生"役がいました。課題の答え合わせをしてくれたり、わからないことを質問できたりといつでも話しかけられる体制でした。
福士:先生は日替わりだったので、研修の前後で必ずコミュニケーションをとる時間が設定されていました。初対面では、事前に先生がどういう人かという情報を共有してもらったり、これまでコミュニケーションをとったことがある人が橋渡し役となって会話を盛り上げてくれたり……。コミュニケーションサポートが盤石でした。対面で会えない中でも、チームにどんな人がいるのかを知る足がかりとなりました。
芦田:研修の合間も含めて時間を共有することで、オンラインでもかなり距離が縮まりましたね。研修中は先生とZoomを繋いでいるのですが、常に1対1というわけではなく、他のメンバーが時折様子を見にきてくれました。閉鎖的にならないのもよかったです。
習熟度・進捗の現在地も全員で把握
オンラインで懸念されたのは、指導側が一方的に教え受講者が1人で課題に取り組む「非対話型」の一方通行の研修になってしまわないか、という点でした。新メンバーの不安を取り除き研修内容に集中してもらうためにも、個々の状況に応じて研修体制を整え、受講者の心情に配慮したコミュニケーションを心がけています。
そしてもう1つ、チーム全員で研修に対応する上で重要なのが、受講者の習熟度・進捗状況の共有です。
受講者も含めた全体共有と、指導者間での細かな情報共有で報告を分けています。シフト勤務ということもあり、引き継ぎの内容はしっかりと文字に残していつ誰が見ても研修の現在地が把握できるように進めていきます。
新人の不安を解消するオンライン研修のコツとは
試行錯誤となったオンライン研修でしたが、受講した2人には"気づき"があったそうです。最後に、オンライン研修でのコツを教えてもらいました。
福士:快いコミュニケーションが大切だと実感しました。オンラインだと、相手の言葉を深読みしたり、意図を汲み取りにくかったりすることも多いので、いかに早く信頼できる関係を構築できるかが重要だと感じます。研修初期に手厚くコミュニケーションのサポートをしてもらったことで、早い段階で素直に聞きたいことを聞けて、相手の話もストレートに理解できる関係が築けたと思います。
あと、小さなことかもしれませんが、オンラインで話を聞くときは普段より大げさにリアクションするようにもしています。
芦田:直接会えないメンバーとの接点を増やして、相談しやすい環境を整えてもらったことが安心に繋がりました。そうした中で基礎から実践まで学べる課題演習を十分に重ね、不安要素を取り除いてから現場に移行できたことが結果として業務に慣れる近道だったなと思います。
自分が研修を受けてみて、こまめな報連相と適度な休憩は対面のとき以上に大切だとも思いました!
少し過剰に思えるくらいのコミュニケーションサポートや体制づくりが、オンライン研修でのコツなのかもしれません。受講した2人の振り返りを紹介しましたが、研修対応をした"先生"からは「校閲の基礎を見直すきっかけになった」という意見もありました。新人研修がチーム全体にとって知識を振り返る機会になることも発見でした。
この時期、多くの企業でオンライン研修が実施されていると思います。LINE校閲チームでの取り組みが何かのヒントになれば幸いです。チームでは今後も新メンバーと並走しながら、よりよい研修方法を探っていきます。
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