【お試し小説】2度目のキスからゲイになる
濃い海色のマウンテンバイクに跨り、勢いよくペダルを踏み込む。細い車輪がぐるりと回って僕は住み慣れた町の風を浴びた。5月の暖かな陽気が肌を舐めていく。
東京都荒川区はひどく平均的な町だった。駅前に高いビルはあるものの、少し離れれば下町のような雰囲気が漂い、時折スカイツリーの方から流れてくる観光客が行き場をなくして彷徨っている。最近じゃ土地開発も盛んになっているものの、僕が住む南千住はその影響をまるで受けていない。遠くに高いビルが見える、どこか懐かしい町。
天王公園の前を通り抜け