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検証!能面はなぜ「コワイ」と言われるのか。

こんにちは。
脚本家能面師のりり子です。女面を専門につくっています。

こちらが、私がつくった女面です!



「コワイ・・・」

能面をお目にかけた時によく言われる第一声がコレ。
うーん、怖いですか・・・。
怖がらせようと思って作ってる気は一切ないんですけどね。

でも、確かに「能面=怖い」っていうイメージありますよね。映画漫画なんかでもよくそういう使われ方してますしね。これって、そういう先入観のせいかしら? 改めて聞いてみましょ。

実物を見て、どうですか? 
能面のどんなところがコワいですか?

「生きてるみたい・・・」
「ヒトみたい・・・」
「顔・・・」

みなさん語尾になんとも言えない間が・・・。
かなり引き気味・・・。

能面を「怖い」と感じてしまうのはナゼなのか、そのワケを検証してみたいと思います。


ステップ1 能面は「生きているヒトの顔」みたい?


まず、みなさんの声を要約すると、「生きているヒトの顔みたい」だからコワイ、ということになりますよね。

世界各国にある多種多様なお面と比べてみると、確かに能面って写実的リアルな感じがします。

じゃあ、なぜ能面は「生きているヒトの顔」みたいに見えるのでしょう?


ステップ2 「面」=「おもて」=「顔」


その答えは簡単。ズバリ、能面は「お面・仮面」ではなく「顔」だから。

能の用語では、「能面」のことを「おもて」と呼びます。「おもて」というのは「顔」のこと。時代劇なんかでお奉行様が平身低頭ひれ伏す人に「おもてをあげい」などというアレですね。

時代劇を知らない世代の方のために説明すると、「おもてをあげい」というのは「顔を上げよ」という意味です。

能の世界では、能面を「顔」と認識しており、我々能面師も「顔をつくる」という意識でつくっています。なので、「生きているヒトの顔みたいに見える」というのは、まさにその通りなのです。

では、「生きているヒトの顔みたいに見える」能面は、なぜ怖いのでしょう?


ステップ3 仮説:能面の「不気味の谷」現象。


能面を怖いと感じる
のは、生きているヒトみたいな顔をしているくせに、生きているヒトじゃないから。

何を当たり前のことを言っているんだ、って感じですよね。もう少し説明させてくださいね。

以前、アンドロイドを主人公にしたTVドラマのシナリオを書いたことがあるんです。その時に研究所や開発者さんを取材したりしてアンドロイドについて勉強して知ったことがあります。

それは、「不気味の谷」現象!

これはどういうことか簡単に説明しますね。

人間は、人間に似ているもの好感を示す。その見た目や動作がより人間らしくなるほど、好感・共感は増していくのですが、ある時点で突然、それが嫌悪感に変わる。右肩上がりだった好感度がガクンと谷底に落ちるわけです。

「人間に似てるけど、コレって人間じゃないよね」っていう不気味さを、この時感じているわけです。

しかし、それがさらに似てくると、「もはや人間」とみなして、強い好感に転じ、直後にグラフは急上昇。右肩上がりに戻るわけです。

この右肩上がりを描く好感度のグラフでガクンと落ちる一ヵ所を「不気味の谷」と呼ぶわけです。

つまり、ヒトが能面をコワイと感じるのは、能面がこの「不気味の谷」にちょうどすっぽり当てはまっているからと言えるのでは? 


ステップ4 検証:仮説「能面は不気味の谷にはまっている」を検証する。


では、この仮説検証してみましょう。

「不気味の谷」現象は、さらに人間に似ていけば、それはもはや人間とみなして強い好感に転じると、さっきの説明にもありましたね。

そこで実験してみました。

より人間らしくするためには能面に体があったら、人間らしく見えるのではないか。なので、能面に体をつけてみました。ハイ!

どうでしょうか?

今回の実験のポイントは、あくまで能面に体をつける点です。能役者さんは能面を顔につけますが、この実験では、能面に体をつけている点で逆ですね。

さらに人間らしくするために、体を動かしてみましょう



いかがですか?

「不気味の谷」を超えると、強い好感に転じる、とあります。

体やしぐさがついたことで、好感高くなったでしょうか?


まとめ

能面が、なぜ「コワイ」と言われるのか、検証してみました。
それは、能面が「不気味の谷」にはまっているからかもしれない。
体をつければ、もはや人間。怖くなくなる可能性アリ。

今日もありがとうございました。


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