ヤミナベ(シネマンガ)

ヤミナベ(シネマンガ)

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道化師の再誕生日

ホロウは目を覚ました。 どこまでも冷たく、無機的な硬い石の床に自分は横たわっていた。周囲を見渡せば両側を挟む煉瓦の壁と、背面には高い位置に一つだけある嵌殺しの窓。 ここで眠ろうとした覚えはない。 そもそもこの部屋…どう見ても地下牢には見覚えが無いし、仮に眠るなら隅にある古びたベッドを選ぶ。 多少年季は入ってる様に見えるが、マットレスや布団にカビが生えている訳でも無いし、洗濯はされている様だ。自宅のベッドよりはずっとマシ。 長身の自分が寝れば脛から先が飛び出そうだが。 硬

    • 創作キャラ アミダ

      名前:アミダ 絵文字:🎐 現パロ/本名:不詳 一人称:私 二人称:〜ちゃん/ナム等の同門には名前呼び/お師匠は天下様、トワ等その実子には若、お嬢 年齢:26歳 性別:女 種族:人間 身長:174cm 体重:58kg 所属:無し 能力:??? 武器:金剛杵『迦陵頻伽(カリョウビンカ)』 仲のいい人物:スイヒ(と仲良くしたい)、トワ 因縁のある敵:スイヒ、ナム イメージボイス:長澤まさみ(仮) Ng時代の人物。鏡の男、"お師匠"の元弟子。 とある事情から現八番隊隊長スイヒに一方

      • ヴァサップ童話 プラ雪姫

        その昔、ある国にそれはそれは美しい王女がいました。王女はプラチナブロンドの髪に雪の様な白い肌をしていたので、プラ雪姫と名付けられました。 両親に愛情をたっぷり注がれていたプラ雪姫でしたが、母親である王妃様が不幸にも病死してしまい、なんやかんやのごたごたの内に国を乗っ取った継母、現女王陛下に毎日いびられていました。 女王(🪞)「君は可愛いけど頭が悪いんだね」 プ姫(👸)「ありがとうございますわ!お義母様に似たんですの!」 女王(🪞)「君は元気だけが取り柄だけどうるさいね」 プ

        • 破壊と可能性のお話

          私には、強い好奇心がある。そう自覚している。 生まれ持ってして、全ての欲望を満たす事の叶う力を備えていた私には、食も性も眠りも退屈だった。 望むだけ手に入る富も、ほんの少し才を覗かせてやるだけで得られる名声も、それに付随する地位も。どれもが理を越えた私には、退屈凌ぎに過ぎない。 或る名で富豪になった。思い付く高価な物は全て手に出来る位の。しかし金で買える物には値が付けられる程度の価値しか無いと気付いた。私は満たされなかった。 或る名で芸術家になった。ふと目に留まった物で絵

          人形作家と鏡の男

          「やぁ」 現れた"男"は、今が昼前であるにも関わらず一筋の光も差し込まない闇を纏っていた。 背骨に氷を詰め込まれた様な、鳥肌が立つ寒気すら覚える圧倒的な存在感。その手の中に、この世界そのものを握って眺めている様な圧力。 内包する底無しの邪悪とはかけ離れた様な満面の笑みを浮べて、その"男"はいつも現れる。 いつ"来ていて"、どうやって"来ている"のか。それは全く分からない。だから"現れる"。そうメアは認識している。いつの間にか気配すら感じさせずに、机の向こう側に座っていたり、

          沈む夕陽

          居ても立っても居られず、私は家を飛び出ていた。 空は薄っすらと夕間暮れて茜色が差しており、普段であれば御夕飯の支度を始める頃合いだろう。 オルキス様は只の他人に過ぎない上に居候の身である私に、何かを課す様な事は殆どされないものの、酒場の営業日以外は大体決まって、一緒に夕食作りをするのが習慣になっていた。 お優しいオルキス様の事だから、きっと私を咎めなさったりはしないだろうけれど、そんな寛容な彼女を困らせてしまう事が却ってとても心苦しい。 だけど、私が今のこころの状態でお手

          ヴァサップ童話 メアデレラ

          昔々。ある所にメアデレラという年頃の女の子がいました。メアデレラに父親はおらず、その再婚相手である継母と、連れ子の二人の姉に毎日苛められ、料理に掃除にと扱き使われていました。 継母(⚰)「メアデレラ、掃除は?」 メアデレラ(🧵)「あっ…忘れてた…今からする…」 姉1(🎃)「メアデレラ、お腹空いたんだけど」 メアデレラ(🧵)「わたしもお腹空いた…」 姉2(💀)「メ、メアデレラサン、オセンタク、ハ」 メアデレラ(🧵)「寒くて手がかじかんじゃって…」 継母(⚰)「もう良い、アタシ

          ヴァサップ童話 メアデレラ

          資料:武術寺院について

          武術寺院とは 大陸のとある国(中国モチーフ)に存在する施設、または其処を拠点とする非営利組織の呼称。肉体的鍛錬は勿論として、所謂ヴァサラ戦記本編の『極み』とは別ベクトルの、波動を用いた技術を門下生に伝授している。 用語解説:『纏身(てんしん)』 武術寺院で指導される技術の、基礎にして極意と呼べる概念。 本編中では『波動』が火や電撃、風などのある種性質や実体を持っている『極み』とは異なり、自身の『波動』を体内に循環させ、身体能力・知覚能力・肉体強度を強化する。強化される前後のそ

          資料:武術寺院について

          ロックの神様と息子と嫁

          何も無いが、それが却って良いこの野原。 視界を遮る人工物が一つもなく、地平線と雲一つ無い青い空とが一体化している。群生している背の高い向日葵は、夏だと言うのに爽やかで涼しい風に吹かれ、気持ち良さそうに揺れていた。 「……何年前かな」 ここを教えてくれた"あの人"に想いを馳せ、たった七日程度の…しかし四十を過ぎた今も尚、人生で最も濃く鮮やかな夏は、どれ程昔の事だったかと。 カルノはらしくもなく、ノスタルジックに呟く。 「もう、何考えてるの?」 そう声を掛けられて漸く、共に大きな

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          人形作家の日記

          「◯◯ちゃんはお人形さんみたいね」 うん。ママ。わたしね、お人形さんみたいにね、とってもとってもきれいなひとになるの。 ママはわたしがそういうとよろこぶ。わたしをたくさん、やさしくわらってなでてくれる。 だからわたしはママがすき。 ママはとってもきれいなひと。まちでいちばんきれいなひとで、かんばんむすめだったらしい。 かんばんむすめがなにかわからないけど、たぶんままがそうだったなら、きっとべっぴんさんっていみなんだとおもう。ままはきれいだから、おとこのひとはみんなママのことが

          IFストーリー② 約束を守る女

          一話 目を覚まし、カルノはベッドから体を起こした。 腕を伸ばせば届く位置に、カーテンがある。 開いて窓から外を覗くと、日はまだ昇っていない。 まぁ、時間的には却ってちょうど良い。 隣で眠る彼女を起こさない様に気を付けて、静かにベッドを抜け出して動きやすい服装に着替える。 カルノは一応、手紙にそう遠くない所へ出掛ける旨を書き留めて、すぅすぅと穏やかな寝息を立てる恋人の頬に、行ってきますのキスをした。 季節は夏。 と言っても、"うだる様な"なんて枕詞は似合わない位には過ごしや

          IFストーリー② 約束を守る女

          劇場版ヴァサラ戦記 史上最強の花嫁【予告編で幹部とボスが紹介される雰囲気】

          巨大な蒸気船の、会議室内。 ただ会議をする為と言うにはいささか過剰に豪勢な調度品が揃えられたその部屋には、景気も良い事に天井からシャンデリアすら吊り下がっている。 何ならルーレットやキノ、マネーホイールといったカジノゲームのテーブルや、ビリヤード台、壁にはダーツ盤も掛かっている。 世界最高級ホテルの遊興室と言って差し支えない。 そんなやけにギラついた部屋に、四人の男女が一つの四角いテーブルを囲って座っていた。 「あのさぁ…今回の航海の目的、知ってるよ〜って人、居ちゃったりしま

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          IFルート 蠍と傷①

          ポイゾナは木のテーブルに倒れ込む様に、落ちるように額を強く打ち付けた。右手に持ったジョッキはその勢いで横に倒れてしまいそうになったが、すんでの所でテーブルを挟み、向かい合わせに座っているナラクがそれを手で受け止める。 「大丈夫か?飲み過ぎだろ。」 ポイゾナは突っ伏したまま、 「……うん、ごめん…。」 と言って、目線だけをナラクに向けた。 「あ…。止めてくれてあんがとな…。」 普段は何処に居ても基本的に人目を憚る事が無いポイゾナも、今夜ばかりは様子が違っていた。普通の会話でも1

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          エピソード0 最強の微風

          ※注意。本小説内にはヴァサラ戦記本編のキャラクターが登場しません。其処のところ、どうか御許しください。 「なぁ。」 青緑の髪に、向かって右側の口元から目元までの、裂ける様な生々しい派手な傷が目立つ男は、食事の手を止めて切り出した。 「ん?」 一応聞いている事は示すものの、構わずにシチューを口に運ぶのは少年で、歯も、目元をほとんど覆っている黄色い前髪も鋭くギザギザである。少年の名前はカルノ。 向かい合っているスカーフェイスの男の名はナラクと言い、カルノの師に当たる人物であった

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          幽鬼伝エピソードオブカヤオ 中編

          「あれ…、オルキスさん?」 少し休憩する為に切り株に腰掛けたのが、五分程前。任務に同行していたオルキスの姿が視界から消えたのも、それとほぼ同時。 周囲を見回してみても、オルキスの影も形も見ることが出来ない。こんな状況下、任務中に隠れて脅かそうという、ふざけた性格では無い事も分かっている。 そもそも自分が彼女から目を離したのは、水筒の水を飲んでいたほんの十秒位だ。そんな短時間で音も立てずに隠れられるのか? カヤオは自身の《極み》の影響で、視覚・聴覚・嗅覚がいずれも常人の倍以上に

          幽鬼伝エピソードオブカヤオ 中編

          幽鬼伝 エピソードオブカヤオ

          左前の死に装束。真っ直ぐ伸びた長い黒髪。 病的に青白い肌。光の無い大きな黒い目。 「…こんばんは。お逢いしたかったです。」 そんな“ぽい”見た目の者が、“ぽい”セリフを出会い頭に掛けてきたら、誰でも腰が抜ける。 「ひゃい…ワ…タシもです…」 それを、実は霊的な方向にはヴァサラ軍一のビビりであるオルキスが、情けないヘニャヘニャの声を出すに留まっている現状は、彼女の普段の騎士然とした高圧的な態度を抜きにするとしても、かなり珍しい物だった。 強調しておくが、“怯えていること”が珍し

          幽鬼伝 エピソードオブカヤオ