ヴァサップ童話 プラ雪姫
その昔、ある国にそれはそれは美しい王女がいました。王女はプラチナブロンドの髪に雪の様な白い肌をしていたので、プラ雪姫と名付けられました。
両親に愛情をたっぷり注がれていたプラ雪姫でしたが、母親である王妃様が不幸にも病死してしまい、なんやかんやのごたごたの内に国を乗っ取った継母、現女王陛下に毎日いびられていました。
女王(🪞)「君は可愛いけど頭が悪いんだね」
プ姫(👸)「ありがとうございますわ!お義母様に似たんですの!」
女王(🪞)「君は元気だけが取り柄だけどうるさいね」
プ姫(👸)「ありがとうございますわ!お義母様に似たんですの!」
女王(🪞)「君は頭が悪くてうるさいね」
プ姫(👸)「ちょうちょ!ちょうちょさん待って下さいませ~!」
プラ雪姫の心臓は鋼鉄でした。
いくら虐めても全く響いていないので、いい加減マインドコントロールを諦めた女王陛下のオキニの暇潰しは、もっぱら不思議な力を持った鏡に質問をする事でした。
女王陛下の鏡は質問を投げかけられると、どんな事にも答えてくれる優れものです。知的好奇心の強い女王はこれに夢中で、世界で一番強い者、世界で一番お金持ちな者、世界で一番歌が上手い者などを知ってはニヤニヤしていました。
しかしある日、女王陛下の機嫌を大きく損ねてしまう事態が起こってしまいました。
女王(🪞)「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
己に違いないと根拠なく確信していた女王は、
鏡「それはプラ雪姫様でございます」
そう答え、光る泥団子作りに熱中しているプラ雪姫の姿を映した鏡に対して激昂しました。
女王(🪞)「ふぅん?別に?まぁ、プラ雪姫は確かにそこそこ可愛いし?私もまぁ予想してたし?」
強がりで隠し切れない程の怒りと悔しさを顔に滲ませた女王は、御付きの狩人にプラ雪姫を殺し、その心臓を証拠として持って来る様に命じます。
狩人(🍡)「プラ雪姫さま〜!早く往生するべ〜!」
プ姫(👸)「いや〜!!わたくしをトラクターで追い掛け回さないで〜!!耕さないで〜!!」
狩人(🍡)「これはコンバインだべ!トラクターは田畑を耕すためのもの、コンバインは収穫をするためのものだべ!」
プ姫(👸)「じゃあ収穫しないで〜!」
狩人(🍡)「プラ雪姫さま!私もこんな事はしたくないべ!でも女王様に逆らったらどうなるか!」
プ姫(👸)「分かりました!二度とお城には戻りませんから!人里には降りませんから収穫しないで!」
狩人(🍡)「分かったべ。それじゃあ畑を荒らすイノシシを身代わりに差し出す事にするべ。」
餞別に干し柿を渡し、プラ雪姫が山の中に入って行くのを確認した狩人は、畑を荒らすイノシシをコンバインで轢き殺し、ハンバーグにして女王陛下に献上しました。
狩人(🍡)「はい、これがプラ雪姫様だべ。」
女王(🪞)「え、これが?ハンバーグが?」
狩人(🍡)「すみません、やり過ぎたべ。」
女王(🪞)「……そっか、ありがとう…うん」
心臓を持って来いと言った倫理観の割には、女王陛下は狩人に対してドン引いていました。流石に人肉のハンバーグは気持ち悪くて食べたくないので捨てようかと思いましたが、狩人がずっとニコニコの笑顔で見つめて来るので渋々完食しました。
女王(🪞)「あれ…、結構美味しい…?」
一方、行く宛も無く山を歩くプラ雪姫は疲れ切ってお腹を空かせ、持っていた干し柿も全て食べ尽くしてしまっていました。しかし山を八つ越え、日も落ち、体力も限界という所で、プラ雪姫は一つの小さな家を発見しました。中からは食べ物の良い匂いも漂って来ています。
プ姫(👸)「はぁ…はぁ…もうお腹ペコペコですわ…でも、命拾いしましたわぁ〜……がちゃり」
家の中に入って直ぐに視界に飛び込んで来たのは、テーブルの上に並べられた美味しそうな食べ物の数々でした。ピザ、揚げたポテト、大味の肉料理、シチュー、チーズフォンデュ。ホールケーキまで。
人の食べ物を勝手に食べるのはいけない事だとは理解していましたが、へとへとのプラ雪姫はどうしても我慢する事が出来ず、山盛りの料理を全て平らげてしまいました。
プ姫(👸)「ご馳走さまでした…」
お腹いっぱいになり、眠たくなったプラ雪姫がソファで横になろうとした瞬間、家のドアが開いて本来の家主達が帰って来ました。
小人1(👩🔬)「ただいまー、誰…この子」
小人2(🚬)「どんな了見で俺様の家にいるんだァ?」
小人3(🌿)「まぁまぁ、可愛らしいお客さん」
小人4(🕳)「…俺の寝るスペースが」
小人5(🪙)「………」
小人6(🐧)「ないー!ペンギンのごはんー!」
小人7(💦)「パーティーの準備してたのに……」
個性豊かな七人の小人たちは、見ず知らずのプラ雪姫の存在に驚き、そしてこれから開かれる筈だったパーティーの為の料理がたった一人に平らげられ、あまつさえその犯人がソファで仮眠まで取ろうとしている事に驚き、何なら恐怖までしていました。
プ姫(👸)「ごめんなさい…!!とってもお腹が空いていて…!!実はわたくしかくかくしかじかで!」
小人1(👩🔬)「なるほど…そんな事情が」
小人2(🚬)「んな奴、殺しちまえば済む話だろうが」
小人3(🌿)「あらあら可哀想に…義理とは言え親が」
小人4(🕳)「面倒臭い事に巻き込まれた感じか」
小人5(🪙)「………」
小人6(🐧)「なるほどー!かくかくしかじかー!」
小人7(💦)「かくかくしかじかって何…?」
しかし、プラ雪姫の察するに余りある悲惨な境遇に心を痛めた小人たちは、その百人力のパワーでお手伝いをする代わりに、プラ雪姫を仲間として、家族として家に迎え入れたのです。
小人7(💦)「かくかくしかじかって何…?」
かくして、プラ雪姫と七人の小人たちの楽しい日々が始まりました。
小人1(👩🔬)「プラ雪!資料の仕分け手伝って!」
プ姫(👸)「はい!ただいま!」
小人2(🚬)「プラ雪、俺様の行き付けの店行くぞ」
プ姫(👸)「お肉!お肉!」
小人3(🌿)「プラ雪さん、お砂糖は幾つ入れる?」
プ姫(👸)「溶ける限界量でお願いしますわ!」
小人4(🕳)「プラ雪、掃除手伝って」
プ姫(👸)「はい!それにしたってこの有り様は…」
小人5(🪙)「………」
プ姫(👸)「こっちの髪留めの方が似合いますわ!」
小人6(🐧)「ぷられーる!あそんでー!」
プ姫(👸)「たかいたかーい!あっ…!空に…!」
小人7(💦)「かくかくしかじかって何…?」
プ姫(👸)「それがあーでこうなんですわ!」
そんな楽しい日々が一月程過ぎた後。お城では大騒ぎが起こっていました。何と女王陛下が鏡を使って遊んでいる時に再び世界一美しい者を尋ね、両手にピザを持ってご機嫌に踊っているプラ雪姫の姿が写ってしまったのです。
女王(🪞)「最早こうなってしまえば、この手で始末するしか無いだろうね」
女王は物売りの老婆の姿に変装し、小人たちが留守のタイミングを狙ってプラ雪姫を訪ねました。
女王(🪞)「りんご、甘くて美味しいりんごはいかがかな?お嬢さんは可愛いからタダでも良いよ」
プ姫(👸)「ありがとうございますわ!頂きます!」
食べ物に目が無いプラ雪姫は、子供一人の時は誰かが訪ねて来ても応答してはいけないという教えを破ってしまいました。そのりんごが、ひと齧りだけで象も死ぬ様な猛毒のりんごとは知らずに。
プ姫(👸)「おいしいですわね!もう一つ!」
女王(🪞)「……?あ、あぁ、どうぞ」
プ姫(👸)「やっぱりおいしい!もう一つ!」
女王(🪞)「……?え?うそ…え?…どうぞ…」
プ姫(👸)「流石に今回はどうかなとも思いましたがやっぱりおいしいですわね!もう一つ!」
即効性の毒の筈が、プラ雪姫には微塵も効いている様子が見られません。流石の女王もあまりのタフネスにこれは質の悪い悪夢かと自分を疑い始めましたが、毒リンゴを同時に三つ頬張った所でようやく、プラ雪姫は倒れてくれました。
女王(🪞)「はっはっは!これでもう流石に、何が何でも死んだだろう!」
念の為死んでいるかを確認しましたが、きっちり呼吸も止まっています。女王はるんるんで帰りました。
それから数時間後。
今日も仕事を終えて家に帰って来た小人たちは、開け放たれたままの玄関に仰向けに倒れたまま動かないプラ雪姫を見て、その死を深く悲しみました。
小人2(🚬)「絶対殺す」
小人2だけは犯人を絶対殺すと思っていました。
小人達は何とか可愛いプラ雪姫を生き返らせないものかと、その人脈や財力などを使って、麓の街で評判の有望な3人の人材を家に呼んで来ました。
錬金術師の男は不老不死の薬を作れるという噂がありましたが、
錬金術師(♱ )「無理やなこれじゃ、一度失われた命はどうにもあかんわ。」
と匙を投げました。
人を癒す特殊な力を持つ医者は
医者(🍭)「何の病気でも、毒物でもない…?」
と全く訳も分からないようです。
最後は神頼みだ、と神父に祷って貰いましたが、
神父(⛪)「お祈りじゃ人は生き返りませんね…」
この世には神も仏も有りはしませんでした。
そして小人達が漸くプラ雪姫の死を受け入れ、硝子の棺に入れて彼女を葬ろうと穴を掘っていた時。
軽やかに土を蹴る馬の蹄の音と共に、隣国の王子様がそこに通りがかりました。
王子(👐)「おや、美しいプリンセス。」
小人3(🌿)「本当にお姫様らしいですよ。」
王子(👐)「何。どうりで姫感が溢れてる訳だ。」
小人6(🐧)「ぐすん…ぷられーる…死んじゃった…」
王子(👐)「本当にそうなんですか?顔色とかまだちょっと悪い程度じゃないですか?人工呼吸とか心臓マッサージ、やってみたらどうです?」
小人1(👩🔬)「確かに!思ってもみなかったわ!」
試しに王子様が一度胸部を圧迫してみたところ、何と一押し目で喉に詰まっていたりんごを吐き出し、プラ雪姫は完全復活を遂げました。
錬金術師に関してはお前は何だったんだと、裏で小人に囲まれてボコボコにされました。
プ姫(👸)「グーテンモルゲン!あら皆さま!お揃いでどうしたんですの!」
小人たちはプラ雪姫の復活を喜ぶと共に、プラ雪姫が玄関に倒れていた事、恐らく犯人はプラ雪姫が生きている事を知った女王であろう事を教えました。
プ姫(👸)「なるほど!どうりでお婆さんにしては巨体過ぎると思ったんですの!」
こうなっては、女王陛下をやっつけてしまう他にありません。プラ雪姫は王子様の駆る駿馬に乗って、高笑いする女王の城に乗り込んでいきました。
女王(🪞)「どうして君が生きている、プラ雪姫」
プ姫(👸)「りんごを沢山食べさせて喉に詰まらせてわたくしを殺そうなんて!りんごが勿体無いですわ!絶対許せませんわ!」
王子(👐)「今回の行いは度が過ぎています、現女王とは言えど直系の王族でない貴女がこの様な謀略をするとは。タダでは済みませんよ、女王陛下」
プ姫(👸)「済みませんわよ!」
しかし女王は不敵に微笑んでいます。
女王(🪞)「だから?今ここで君達二人を殺してしまえばそんな事実は闇に消えてしまうよ」
プ姫(👸)「何をー!行きますわよ!」
王子(👐)「えぇ!」
共に戦うのが初めてとは思えない程に見事な連携を見せる王子とプラ雪姫でしたが、圧倒的な強さを見せる女王には歯が立ちません。
女王(🪞)「ふふっ、これで終わりだよ」
二人が最早これまでかと諦めかけたその時です。
狩人(🍡)「いけー!くぼたのコンバインー!」
女王(🪞)「ぐはッ!バカなッ!」
狩人の乗ったコンバインが何処からともなく現れ、仕える主である女王を何の躊躇もなく轢きました。
狩人(🍡)「今だべ!プラ雪姫さま!」
プ姫(👸)「!ありがとうございます!うぉぉぉ!」
女王(🪞)「…!!やめよう、先ずは話し合いを」
プ姫(👸)「姫ビーム!」
狩人に轢かれたダメージで動けなくなっている女王に向かって、命乞いには一切耳を貸さず、プラ雪姫はビームを放ちました。
眩い光が辺りを包んだかと思えば、女王がいたそこには最早何一つ残ってはいません。
女王とは言えど、所詮出身は田舎の貴族止まり。本物の王家の姫ビームに叶う筈もありませんでした。
こうして悪が滅んだ事で、プラ雪姫は新たな女王に即位し、自分の物になったお城で、七人の小人たちと王子様と、いつまでもいつまでも暮らしたとさ。
演者
プラ雪姫役…プラチナ・エタンセル・ルカヤルヴィ
女王役…お師匠
王子役…繰森夏葉
小人1役…アルビレオ
小人2役…ルチアーノ
小人3役…緑
小人4役…レジィ
小人5役…サンヨウ
小人6役…ペンギン
小人7役…ガリュウ
錬金術師役…メイネ
医者役…アン
神父役…ジャンニ
狩人役…ヨモギ
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