トメノフ

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最近の記事

シルビア日記20 凄み

 柔道選手のゼッケンで金色を着用できるのはオリンピックの金メダリストだけだ。世界選手権の優勝者は赤色になる。  特別なゼッケンを身に纏う人がいる。彼は東京オリンピックで優勝を果たし、今年のパリオリンピックで2連覇を目指し努力を続けている。  人は変わっていく。いやそんことはない。外側から見る目、我々が変わってしまっているのかもしれない。  勝手にその人や、行きつけのそのお店に自分で鎧を着せて昔は違った、あの時はこうだった、あいつは天狗になったとか勝手に言っているのかもしれな

    • シルビア日記19 都会

      “代官山“ なんだこの響き。安達太良山、浅間山、たくさんある“やま“とは明らかに違う。身構えてしまうおしゃれな響き。 学生時代には怖いもの知らずでよく自転車で散策した。おしゃれの中心にある古着屋、そう信じてボロボロの古着に大枚を叩いて買った。そこで買ったという事実を着たかっただけ。格好いいという勘違いがオシャレの基本だ。 大使館も多く外国人もいっぱいいる。すごく久しぶりにそこを訪れた理由は、もう5年になろうか音信不通になってしまった姉に偶然会うためだった。両親が亡くなって兄と

      • シルビア日記18 花見

         夏になると向日葵やそばの花、秋にはバラやコスモス、金木犀、冬には菜の花、ベゴニアなど1年中その季節の主役の花が咲いている。それはとても綺麗だ。  しかし日本人の花見といえば3月下旬から4月上旬にかけての桜が代表される。春の陽気と新年度に入ったワクワク感もその他の季節とは違う。冬眠から覚めて穴倉から出てきた動物たちの気持ちがわかる。見事なピンク色がそこを一面に染める。開花期間の短さもその儚さは足早に生きている現代人の心に十分な満足感を与えてくれるのかもしれない。 レジャーシー

        • シルビア日記17 ひらめきの人

           僕はどんな星の元に生まれたのだろうか。はたまたどういう星があるのだろうか。そんなことを考えてばかりいるということは、何らかのストレスに蝕まれているのだろう。 九星気学なるものを見てほんの少し理解できたような気もするが。説明できるほどではない。僕は八白土星、それはわかったがどのような作用をもたらすのかは半信半疑だ。 他人と気が合う合わないは、自分の力ではどうしようもできないものということは理解できた。生理的に合わない、空気感が合わないなどしっかりと長年の統計からどうやっても混

        シルビア日記20 凄み

          シルビア日記16 方言

           標準語とは何か、それぞれの地域にある標準語。それが方言と呼ばれている。 江戸弁とも言われるべらんめー口調も然り、大昔からたくさんの言葉が行き交う東京で混じり合いながら擦れてそれができてきた。僕は東京の言葉に慣れていて耳も脳もそこに順応している。東京を中心とするから様々な現地の言葉が田舎の言葉と言われている現状だ。どこの言葉も情緒があって好きだ。沢山の方言がある中で僕の心を掴むのは絶対的に博多弁だ。 「なんしよーと。どげんしたと。がんばらんね。」 そのイントネーションで僕の心

          シルビア日記16 方言

          シルビア日記15 心配なこと

           今から30年近く前、いやもっと前でもいい、何を悩んでいたのだろうか。いくら考えても出てこない。深い悩みならば記憶の断片に残っていてもいいようなものだ。親が仕事をやめたと聞いた時、母親が変なマルチ商法の勧誘を真面目に聞いていた時、すごく好きな人ができた時、僕は何も考えていなかった。昔のことだから都合のいい解釈をしているのかもしれない。しかし振り返ると楽しかった思い出しかない。時間は物事を楽しくするのだろうか。常にそこには希望があった。  目覚めてニュース番組をつけるとまずは耳

          シルビア日記15 心配なこと

          シルビア日記14 余談

           関東地方は雪に覆われた。  いや東北、北海道の人から言わせたらまだ降り始めだろう。 しかし計画運休、高速道路の通行止め、交通インフラの崩壊。都心は脆い。そんなことを感じていた。成田からの帰宅しようと急いでいたが京成線の遅延、ポイント故障で引き返して成田空港駅は人の渦でごった返していた。足早に次の帰宅方法を考える人々。誰も不満を言うこともなく黙々と動く。そんなすごい日本人に感化されるように外国人旅行者も同様に動く。私は京成線の弱さに見切りをつけてJRのホームに立った。そこにも

          シルビア日記14 余談

          シルビア日記13マニラ漫遊③

           僕は順応が早い。大体そこの土地に慣れるのに2日もあれば十分だ。ということで3日目は朝から動き回る。テレビ画面から流れる英語のニュースも全て理解できる。気になる。  ホテルの裏手の方は、かなりなアンダーグランドな地域だ。一人で歩いていると常に緊張感が走る。僕の猫背も矯正される勢いだ。朝なのに暗い路地、異様な匂い。その原因を探ると壁に向かって人が入れ替わり立ち小便をする。みんなで日常的にしていると街がこんな匂いなるんだ。僕は肯定派だったがこれからは立ち小便否定派に回ることにした

          シルビア日記13マニラ漫遊③

          シルビア日記12 マニラ漫遊②

          アパホテルに慣れすぎた僕には広すぎる部屋。 ゆっくりと広いお風呂に浸かる。あれほど海外に喜びを感じたのに、別府温泉の素を2袋入れた。30分ほど浸かって外に出た。6時30分くらいだろうか表に出ると暖かい空気が流れた。そして人が動いている。車もバイクもトゥクトゥクも。なんだか街が呼吸をしている。元気に今日1日を迎えるために大きな呼吸をしている。 日本の朝には感じないがウキウキがあった。 街を散策した。40分くらい歩いて汗だくに、屋台の食べ物などを見て興味はあっったが、食べる勇気は

          シルビア日記12 マニラ漫遊②

          シルビア日記11 マニラ漫遊

          新型コロナウィルスの影響が拡大してから忘れていた感覚。 《海外の空気を吸いたい。》 昨年やっと5類になり世の中が動き始めた。 何年ぶりだろうか国外に出るのは。それまでは1年に一回ほど、どこかの国に行っていた。すべて仕事だが。今回も思わぬ形でマニラで仕事の依頼が来た。迷わず快諾をした。そしてその日が来るのを待った。 成田空港が大好きだ。この場所に立つと世界への入り口、いや狭い空間からの脱出口に来たような気持ちになる。手続きを終えてゲートをくぐる。もうここは日本ではない。解放され

          シルビア日記11 マニラ漫遊

          シルビア日記⑩無いものねだり

          体の芯から冷える日と、日中は汗ばむくらいの日もある。 何だか人間の心を映すような気候の変動に振り回されている。 日本各地での嫌なニュースが連日飛び込んでくる。耳を覆いたくなるようなことが多い。戦後がむしゃらに24時間働いた先人たちはこのような日本を想像していたのだろうか。とはいえ私は何もしてないのでただの口先だけの男だ。 少しは格好いい大人になりたい。そういう願望を持っている。雑誌の世界、テレビの世界、憧れる大人がいっぱいいる。 トレンディドラマが流行していた頃、会社帰りに行

          シルビア日記⑩無いものねだり

          シルビア日記⑨ 神の領域

           人は誰でも異常なくらい緊張することがある。その要因はいろいろある。 『周囲から注目されている。』 『失敗するわけにはいかない。』 『ダメだったらどうしよう。』 その局面において感情は違えど、大なり小なり非日常の感覚に陥る。それがあまりにも大きいと恐怖にもなる。そこから精神的に崩れて体調まで壊すことも稀にある。  先日東京オリンピックの金メダリストと井戸端会議をしてみた。彼女のあの試合前のプレッシャーは今までに感じたことのないものだった。気持ちと体がバラバラになって自然と涙が

          シルビア日記⑨ 神の領域

          シルビア日記⑧サウナは整うのか

          一気に東京が寒くなった。身を切るような風もまるで凶器のように感じる。朝や夜だけならばまだ我慢ができるが、昼も寒い。北海道の寒さとは違う。あの人を包み込むような寒さは気持ちよかったりもする。しかし東京の寒さはジャックナイフだ。 サウナが流行している。昔から足繁く通っている下町の親父からしたらいい迷惑なくらいだ。家庭用サウナの売れ行きが好調だと、なんかの雑誌に書いてあった。だいぶ大昔まだ若かりし高校生の時代、何度かサウナに行ったことがある。その当時は大人の行く場所で背伸びをした気

          シルビア日記⑧サウナは整うのか

          シルビア日記⑦遠くを見る

          東京の空は狭い。ビルや建物が乱立する東京。その隙間から見える空の面積に慣れてしまった。だからなのか、あまり空を見上げたり、遠くを見ることが少ない。新しい年になり例年は正月気分に浸る時期ではあるが、暗いニュースがいっぱい飛び込んできた。私自身の周囲にも落ち込むことがあった。 しかし変わることなく、何もなかったように真っ青な空が頭上に広がっている。それに気が付いたのは東京から離れた時だった。ビルも大きな建物もない場所で立った瞬間にパッと目の前が開けたような気がした。忘れていた。東

          シルビア日記⑦遠くを見る

          シルビア日記⑥年越し

          毎年12月30日に集まる仲間がいる。僕はそれをすごく楽しみにしている。外であまり食事をしなくなって都心に繰り出すことも1年の中でこの日くらいだ。 30年前は毎日のように渋谷にいた。まるで自分の街のような錯覚さえ持っていた。建物は残っているが、お店はどんどん変わっている。年末の雑踏ではないこの喧騒が日常なのが渋谷だ。ここのタワーレーコードに意味もなく通った。音楽の趣味などないのにここで試聴しているとイケテイルと思っていた。マルイもオシャレの最先端だと思ってぷらぷらしていた。そん

          シルビア日記⑥年越し

          シルビア日記⑤ 忘れてはいけないもの

          自分の弱さや狡さは隠したいものだが、見て見ぬふりをしても心の中ではしっかりそれを認識しているものだ。ごまかしては生きていけないと思う。 自分の中の過信に溺れて、先輩の大きめのワゴンを運転していた。緊張感はなかった。乗車している人たちを目的地で下ろし、しばし自分1人の時間、私はそういう隙間の時間が好きだ。秋も深まってきて寒さが増してきたのでコンビニでピザマンを購入して運転席に戻った。饅頭の下の紙を口で剥がしながら駐車場を出ようとバックを始めた。一口頬張りハフハフしていた。栃木県

          シルビア日記⑤ 忘れてはいけないもの