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シルビア日記18 花見

 夏になると向日葵やそばの花、秋にはバラやコスモス、金木犀、冬には菜の花、ベゴニアなど1年中その季節の主役の花が咲いている。それはとても綺麗だ。
 しかし日本人の花見といえば3月下旬から4月上旬にかけての桜が代表される。春の陽気と新年度に入ったワクワク感もその他の季節とは違う。冬眠から覚めて穴倉から出てきた動物たちの気持ちがわかる。見事なピンク色がそこを一面に染める。開花期間の短さもその儚さは足早に生きている現代人の心に十分な満足感を与えてくれるのかもしれない。
レジャーシートを敷いて食べたり飲んだりの花見はしないが、毎年目黒川の桜を見に行っている。年々人が増えてきているように感じたが、初めて電車で行った今年は中目黒駅のホームから身動きの取れない混雑ぶりで改めて桜というのは多くの人が求めて幸せにする花ということががよくわかった。1年中そこに立っている木々は蕾が開いた時だけ、その一週間だけ世の中の注目を浴びる。残りの340日は雨の日も風の日も雪の日もそこに立っている。なんという我慢強さ。
 僕は目黒川に並ぶその姿に哀愁を感じる。
 桜が咲いたときは昼も夜も関係なくとても美しい。照明が施され、屋台が出て、みんな笑顔になりそこで写真を撮る。僕はその姿が好きだ。花を見ている人で怒っている顔をしている人はいない。花屋で働いている人はみんないい人に見える。来年もここに来ようと決心して雑踏から抜け出した。
若い二人はお金がなくても桜並木を歩くそこには不安や不満などはない。
若かったあの頃何も怖くなかった。ただあなたの優しさが怖かった。
それは神田川だ。と自分で突っ込んでニヤついていた。

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