No more Spiritual(2)−見える世界と見えない世界のはざまで−
(前回のあらすじ)1回目の海外駐在を終え、ひょんなことからエステティシャンになった私。そんなある日、サロンオーナーの旦那さんから紹介された一冊の本。『ザ・シークレット』を受け取った私は、初めて知る宇宙の法則に衝撃を受ける。
2. 見えない世界を初体験
しかし、「引き寄せの法則」はいっこうに実現されませんでした。
今思えば、当時の私には「引き寄せたいこと」そのものが分かっていませんでした。自分が本当は何を欲しているのかを、しっかり考えることをしていなかったのです。
いつしか私は、失望していました。
「人生が変わるほどのことは、なかったな。」
さて、エステの世界で働き始めて、たくさんの人に出会いました。スクールで一緒に学んだ人たちや、個人サロンの経営者さんたちなど。
その界隈で、次第によく耳にするようになったのが、「ヒーリング」でした。
エステサロンで身体を癒そうとするお客様の中には、心も癒しを求めている人が少なくありません。また、そのような人を施術するエステティシャン側も、「邪気を受ける」という形で、心身を崩す人がいました。
そのような業界ですので、自然と「心を癒す」ことに精通していくのです。
チャクラ、クリスタル、音楽、アロマ、瞑想、レイキ、占い、ヒーリング…
エステの大きな展示会に行くと、このような「目に見えない力」を紹介しているブースが山ほどありました。
実際にそれを使って「人を癒す」ことを生業にしている人との交流も始まります。エステティシャンから、スピリチュアルの世界に転身する人もいました。
でも私は、正直に言うと、「本当かなぁ。なんか怪しいなぁ。」という気持ちが拭えませんでした。だって、目に見えないものだから、何とだって言えるじゃん、と。
そんなある日、エステティシャンから「ヒーラー」になり、セッションの練習相手を探している、という女性がサロンを訪ねてきました。
「みかちゃん、受けてみたら?すごいよ。」
オーナーからそう言われて、私がセッションを受けることになったのです。
「ヒーラー?初めて聞いた言葉だな。何をされるんだろう。悩み相談でいいのかな?」
個室でその「ヒーラー」と私、2人きり。
私は、現状の悩みをひと通り話してみました。すると、彼女は
「あなたの過去世を見てみます」
と言ったのです。
「カコセイ???なんだ、それ。」
頭の中にハテナが飛び交う中、目の前の彼女が目をつぶっているのを、じっと見ていました。
「あなたの過去世は、殉教師です。人のために尽くし、自分を犠牲にして亡くなりました。」
「…。」
私は、吹き出しそうになるのを抑えていました。
殉教師?
世界史の教科書で見たような、頭に黒い丸いものを乗せて、黒いマントを羽織っている痩せた男性が頭に浮かびました。
私が?
この、おじさんだったの?
へえ〜〜〜〜〜〜
顔は神妙にしていましたが、心の中で「うさんくさいなぁ」という気持ちが渦巻いていました。
ヒーラーが言うには、そのおじさんの「自分を犠牲にしても救えなかった人たちに申し訳ない、つらい」という想いが、私の悩みの一端になっているとのことでした。
私は、こう思いました。
「それは、何とでも言えるでしょうね。」
しらけた気持ちを何とか悟られないようにしながら、彼女がそのおじさんの魂を「ヒーリング」するのを目をつぶって待ちました。
すると、私の頭の右上の部分から、唐突に
「ありがとう。ありがとう。ありがとう…」
と、声が聞こえてきたのです。それと同時に、私の目からは一気に涙が流れ出てきました。
その時の、私の驚きようといったら!
「なんか、あ、ありがとう、と聞こえます!」
涙と鼻水を手で拭いながら、息も荒くなり、私は取り乱しました。
「良かったですね。魂が癒されましたよ。」
これが、初めてのスピリチュアルとの接触でした。
第3回 見えない世界への傾倒 に続く
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