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Libya Updates #11: JUNE 2020 Week 3


こんにちは🕊
今週もリビアの1週間の動きを整理しました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいる。

☞リビアについて、背景はこちらから
☞先週のアップデートはこちらから


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1. 停戦へ向けた動き

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停戦交渉について、大きな動きは発表されていない。

国連主導で6月はじめより、リビアのGNA政府とハフタル勢力の間で停戦に向けた協議が開始。両勢力は10日、軍事ルートでの新たに停戦に向けた協議を始めたと発表している。


GNAのファティ・バシャガ内務大臣は今週、紛争を終結させ、リビアの統一した国家機構を作ることを歓迎する姿勢をツイートで示した。条件として、民意に基づく民生政治を求めた。
大臣は「力を使って権力を得ようとする戦争犯罪者の居場所はない」と言及。ハフタル勢力を暗に牽制する格好だ。


トルコとロシアの間で予定されていた会談は延期された。リビアとシリアの情勢について話し合う予定だった。
トルコ外務大臣は「意見の不一致があったわけではない」と述べている。

両国はそれぞれGNA政府、ハフタル勢力を支援している主要な国。


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紛争が市民に与えてきた影響は計り知れない。

トリポリから避難していた人びとは、帰還が難しい状態にある。家だけでなく、地域もろとも破壊されているからだ。
Middle East Eyeの取材に応じたイブテイサム・アラビさんは、2児の母親。周辺でミサイル攻撃が増えたことにより、家族とともに避難を決意した。

アラビさんは2019年10月、「ですが、自分たちの家を見るのがそれで最後になるとは思わなかった」

故郷に帰ろうとする人びとを待っているのは破壊された家だけではない。
ハフタル勢力は撤退をする際に地雷を埋めていることが分かっているほか、不発弾が残っていることも懸念されている。
不在の間に家財が略奪されていることも報告されている。家が軍事拠点として使われていた場合もあるという。

トリポリ南部のワディ・アッラビ地区とアイン・ザラ地区では10日、ハフタル勢力が仕掛けた地雷により少なくとも7名が死亡している


前線では多くの市民の犠牲が出ている。
トリポリ南部のタルフーナでは今週、少なくとも8つの共同墓地が発見されている。国連リビア支援ミッション (UNSMIL) が12日、声明で懸念を示した

同地域はハフタル勢力が先週、トリポリより撤退するまで、同勢力とGNAの主戦場だった。GNA勢力は先週、子どもや女性を含む106名の遺体を発見ししている。
UNSMILによると、同地域では6月はじめの数日の間に1万6千人以上が避難を余儀なくされている状態にあるという。


第2の都市でありHoRの支配下にあるベンガジでは、平和活動家が拘束されているとのこと。UNSMILが非難声明を出している。


2. 新型コロナ

新型コロナの感染拡大状況

リビアでは18日(現地時間)時点で、累計467名の新型コロナ感染者が確認されいている。前の週から新たに89名の感染が確認された格好。
死者は先週からの増加はなく、10名。


図は4月からの感染者数の増加と、主なできごとを表したもの。
5月末までは確認されている感染者は緩やかに推移。6月ごろより大幅に増加している。
4月から5月にかけて、医療施設への攻撃が多発していることも分かる。

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リビアでは依然として、新型コロナ感染よりも紛争による死者の方が多い状態が続いている。

リビアの新型コロナの感染拡大状況についてはこちらから


3. 国際社会の動き

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トルコが独自にリビアへ関与する動きを見せている。
同国の軍は11日、8時間に渡りリビア沿岸部上空で飛行訓練を実施。F-16機をいつでも派遣できることをアピールする狙いがあると見られている。

同国は2020年1月にGNA勢力に対する軍事支援を開始。地中海・中東地域での影響力を維持することが目的だと考えられている。

トルコの高官らは17日、リビアを訪問してGNAと会談を行っている。


これに対してフランスが動きを見せた。
外務省は16日、トルコを名指し、「外国勢力が国連の武器禁輸を破っていることがリビアの平和と安全を実現するための壁となっている」と声明を発表した。

国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのハナン・サラー氏はこれに対して「なぜすべての勢力を名指ししないのか」と批判。
リビアではハフタル勢力に対してロシアが民間軍事会社を通して傭兵を派遣しているほか、UAEもドローン武器やジェット燃料を輸出している。

フランスはリビアの現状について、「国連のもとでの対話でのみ解決される」との姿勢を維持。一方で、ハフタル勢力ともつながりを持っていると考えられている。ハフタル勢力が支配下に置く東部の石油資源のほか、リビア周辺地域の安全保障を見据えているとの見方がされている。
GNA政府は昨年4月にトリポリへの軍事侵攻が始まった際、フランスに対してハフタルに反対の立場を明確にするようもとめている。


トルコは声明をうけ同日、フランスへ「批判返し」。国連やNATOの方針に反してハフタル勢力を支援していると言及した。


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ローマ教皇フランシスコは14日、「リビアで戦っている両勢力が平和に向かうべき」と発言。国際社会に仲介を求めるとともに、同国に留め置かれている移民・難民を保護するよう求めた。


リビアでは今週、エジプト人労働者らが虐げられている様子を映した動画がソーシャルメディアで拡散され、非難の的となった。
動画に写っているは両手を上げ、片足で立たされている男性ら。ハフタルやエジプトのシシ大統領を罵る言葉を口にしている。

ハフタル勢力は、エジプト人らがGNA側の民兵組織に捕らえられていると言及。GNA政府は動画の内容について、捜査を行うと述べた。


参考


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Also read:

リビアの4月からの新型コロナの感染拡大状況を整理しました。
パンデミックでより大きな打撃を受けるのは、弱い立場にある人びと。
専門家から市民、政治家まで、たくさん耳にする言葉があります。
「連帯が必要」、「脅威は変革のチャンス」

ですが、実際にリビアなどの紛争地の報道や人びとの声などを追ってみると、新型コロナについてあまり大きな話題になっていないように感じていました。
なぜなのか。少し考えてみました。

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