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#ポエム
永遠の鈍色の内 【詩】
雨だれ 七色
次の粒が落ちるまでの
期待の色と 中間色の もどかしい
望んだものは 手に入らない 当然
意識は 数秒さかのぼって
他の色を欲しがるものだ
雨だれ カスミ草
主役の不在を嘆いた人の
期待の花と 世間知らずの くだらない
確固たるものは 目に映らない 当然
意識は 勝手に先回って
他の花を飾り立てているものだ
倉庫の天井のような空
見上げるのをやめたら
右手に握られていたドライフラ
限られた壁の向こうに【詩】
光、無量に差すれども
生涯、照らされなかった言葉を
アイビーの蔦這う壁に
でかくでっかく 吹きつけた
路地裏はあまりに狭いものだから
誰の目にも留まらないし
この目にも
もはや言葉としては 映らなくなった
只管に密度を増してゆく蔦葉らが
投げてくる言葉は唯ひとつ
「ここを去れ」と
嘆息との虚しい往来
──かつて
纏わる煤を友愛の証に換えた
煙突掃除夫たちのように
suppression【詩】
面倒くさい空だ
コバルトブルーに澄み
ほどよく千切れた雲を散りばめ
どこにでも 我が物顔で 居すわる空
いつ誰にでも
美しいと
見上げられると
思うな
幾筋もの面倒くさい道の先に広がる
むずがゆい空め
その始点は紛れもなく私
奴らが面倒くさいのを 責めようがない
これ以上 空が無様に滲まないよう
もう何もしないことに決めた
もう 何も しない と
焦燥の熱で雲が膨れ
時のひしめく音
即興詩みっつ〈あやまち〉
(2023/4/2)
耳朶が欲した孤独の代わりに
飴色をした交響曲が
雑多な人を連れてくる
地団駄を堪えた少年
堪えられなくなった老人
緊迫する分水嶺で
行くか戻るかの
オーボエの音階に
蟲惑された私は蛇だ
己の尻尾に噛み付いたら
身を迷宮に変えるだろうか
そして灰を舐めながら
直線の生を閉じるのだろう
◇
(2023/3/23)
こんな夜更けに
夜を吸い込んだ者
即興詩みっつ〈愛別離〉
(2023/2/8)
光が閉じてゆく安寧
愚鈍な手で顔を洗う
◇
(2023/2/11)
ナイトスタンドが呼ぶ
サテンのシーツが掠めていく
されども僕は
香りの記憶のみを引き連れて
光も闇もない部屋へ向かおう
そこに一握りほどの土塊を置き
夢想から覚めたときの落胆を
新たに覚悟と呼び直しては
どこにも向かわず どこからも向かわれず
何もかも等しく
ありがたがるのだろ
即興詩みっつ〈ブリザード〉
(2023/1/24)
吹雪いたのは何処だったか
緑土でもない枯野でもない
日常にコンクリートを敷き詰め
ペンキをぶちまけた無様な庭で
墓石もどきに腰をおろす
その日たまたま震えていた俺を
歳月という名の巨人の眼が
掠めて素気なく通り過ぎるまでの時間
凪こそがずっと痛かった
乾いた缶を何処に打ちつける
◇
(2023/1/26)
対岸の木を見つめる人も
シンクの茶碗を見
即興詩みっつ〈若者〉
(2023/1/14)
鏡張りのビルが切り取る
窮屈な升の内にさえ
きっとそれはあるはずと
流れる雲に首を振り
落ちゆく夕陽に眉をしかめた
引き継いできたはずのものは
すっかり失われてしまった
無味の眺望に打ちひしがれて
ありもしない里へ帰ろう
ああそんなところにいたのかい
探し物をする人の
疲れた顔だ
◇
(2023/1/16)
籠から飛び立った鳥は
二度と帰って