過去詩ふたつ「樹」
『木々と君のコラール』より
「過ぎる樹の」
夕闇を照らす ガス灯の
こはく色したゆらめきに
うっとり ひたった帰り道
こころは ふるえてざわめいた
あたまの声は ひっそりとして
目覚めればそこは 白い 朝
夕べのわたし どこいった?
キライだ 太陽は正しすぎる
明るみに出る 気怠いからだ
照らされるのは 道しるべだけ
樹のよこを とおりすぎるたび
まぶたに緑が重なるよ
──絵画が うすく かさなっていく
樹のそばを とおりすぎるたび
さざめく声が重なるよ
──音楽が かるく かさなっていく
ふわり 白いTシャツに
似た あたらしく なつかしい
なにかが ふわり
◇
「樹木になる」
額を打つしずくを
無意識に感じられたら
花が落ちることも
悲しくはない
頬を打つしずくを
心地よく感じられたら
葉は朝焼けと
ともに輝く
肩を打つしずくを
恵みに思えるのなら
空に手を伸ばす
枝木のように
足下のしずくを
誇れるのなら
すすんで佇む
樹木になろう
◇
ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います!