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限られた壁の向こうに【詩】


光、無量に差すれども

生涯、照らされなかった言葉を

アイビーの蔦這う壁に

でかくでっかく 吹きつけた

路地裏はあまりに狭いものだから

誰の目にも留まらないし

この目にも

 もはや言葉としては 映らなくなった

只管に密度を増してゆく蔦葉らが

 投げてくる言葉は唯ひとつ

  「ここを去れ」と

嘆息との虚しい往来

──かつて

纏わる煤を友愛の証に換えた

煙突掃除夫たちのように

寝転んで、空を彼方に見立ててみた

なんだまだまだやれるじゃないか

威嚇するように

 指をゆっくりと手掌に握り込む

乱雑に 感触だけは確かに

 蔦を掴んで

  限られた壁をよじ登ってみる

そうだ僕らはいつだって

こんな刹那と刹那を称揚するのさ


#詩 #ポエム

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