檸檬読書記録 『後宮の検屍女官』 『黒紙の魔術師と白銀の龍』
今日の本は
小野はるか『後宮の検屍女官』
ある日、謀殺されたと噂の妃の棺の中から、赤子の遺体が見つかった。
そのせいで死王が彷徨っていると、幽鬼騒ぎが後宮内に広がり、美貌の宦官・延明は騒ぎを納めろと皇后の命を受ける。
調査の際に出会ったのが、ぐうたら女官・桃花だった。彼女はいつも眠そうで、出世になど興味なしという変わり者。
けれど桃花には、検屍の技術があり、遺体を前にすると人が変わるのだった。
延明と共に、桃花はその検屍術を使い、後宮内で起きた事件と謎を解いていく。
という内容。
なかなかによかった。
少しの生々しさと、主人公桃花の言葉の違和感はあれど(もしかしたら気になるのは自分だけかもしれないけれど…)、知識が豊富で興味深かった。
昔の、それも医療の発展してない時代の限られたなかで、様々な技術でもって証明していく過程にわくわくさせられた。
検屍は、冤罪をなくすための冤罪術ともいうらしく、証拠がなく証明できず、罪なき無辜が冤罪をかけられてしまう時代だからこそ、覆してしまう姿にかっこよさを感じた。
桃花と延明の関係性もいい。
ホームズとワトソンのような、相棒のような助手のような関係。いや、男女と遺体だから、
太田紫織『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』
に近いかもしれない。
男といっても、宦官は性を奪われているらしく、男とも女ともいえない存在らしいけど(正直知らなかった…。後宮では王様以外の男は立ち入り禁止だからという理由らしいけど…厳しいな…)
これから2人の関係がどう変わっていくかも楽しみだ。
今は3巻まで出ていて、これから4巻も発売されるらしく、是非とも追いたい作品だ。
もう1冊は
烏美山貴子『黒紙の魔術師と白銀の龍』
これは児童書。
主人公の悠馬は、友達と森の中で遊んでいる時に、黒いとかげを見つけた。だが動いたと思ったそのとかげは、友達と確認した時にはただの紙になっていて…。
その時は、ただの勘違いなのかと思ったが、夜家の中でもう一度確認したら、また動き出していた。
恐ろしくなった悠馬は、同じクラスの折り紙好き男子・啓図に相談しようかと悩む。けれどその男子とは1度も喋ったことはなく、啓図はクラスでは浮いた存在だった。
意を決して彼の家でやっている折り紙教室に入り、教室の先生に見せて預けてみるが…。
といった内容で、ファンタジーあり冒険ありな話。
まず、折り紙が生を授かり動き出す、それもとかげならとかげそのものに、カニなら本物のカニになるという設定がいい。
昔、折り紙に異様なほど熱中して、取り憑かれたように鶴を折っていた身としては、
(その上通常サイズではなくて、紙を4分の1サイズにしてやったり、500円玉サイズにしてやるのにハマっていた。しかもそれで千羽鶴とか作っていたから、今から思うと我ながら阿呆だ…)
夢があるなと思わされた。
ただ、タイトルのインパクトに比べて、少しだけ物足りなさはあった…。けれど自分が大人という身であるから、というのもあるかもしれないけど…。
それにこの作品がデビュー作らしく、初でこれは凄い。思わず驚嘆させられた。
次の作品も見てみたいなと思えた。
この本の主人公、悠馬は植物が好きで、クラスメイトの浮いた存在である啓図は、折り紙が好き。
啓図は全面に出して好きを貫いているのだけれど、悠馬はそれを隠していた。
言っても、笑われてからかわれるだけだから…。
その場面を読んだ時、今はそういう世界になってるのかなと、少し辛くなった。いや、もしかしたら昔からかもしれないけど…。
周りに合わせて、好きを隠さなければいけない状態。
同じものを好きになれなくても、興味をもてなくても、それは仕方のないことだと思う。皆それぞれだから。
だけど、その人の好きなものを否定せず、笑わない世界であったらなと思う。
この本でも、明るい未来を想像できるような結末になっている。
現実も、この本のように苦しくない世界になれたらと願いつつ、今回は閉じようと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ではでは。
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