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10本の青い薔薇だった

ホテルのレストランで夕食を終えて、
18階の客室に戻った。

1809号室のドアを空けると、
ブルーグリーンとホワイトの淡いパステルカラーの風船がたくさん出迎えてくれた。

部屋の奥に入ると、
ベッドサイドには、
“Happy ANNIVERSARY 1”
という文字の銀の風船が整列していて、

白くて清潔なシーツが張られた
ダブルベッドの上には、
濃紫色の立方体に金文字でBVLGARIと綴られた掌大のリングケースと、青い薔薇の花束が寄り添っていた。


あまりにも眩しい光景だったので、
言葉が出なかった。


彼は
にこにこしながら、
リングケースと花束を手にとって、
私の前に立った。


「あいちゃん」


照れと緊張からか、そのあとの言葉が彼の口から出てくるのに随分と時間がかかった。


微笑んでいるのか泣いているのか分からない表情で、彼は一生懸命、言葉を取り出そうとしていた。



「結婚してください」



そう言われた時、
すぐに返事するのが何だかもったいなくて、そして、彼の愛情に見合った、素敵な返事の言葉がとっさに出てこなくて、

リングケースと花束を持った両手で、
黙って彼を抱きしめていた。


自然と涙が溢れて、どうしようもなかった。


視界に入った10輪の薔薇が、
ぼやけて青く滲んでいた。


涙を拭いて、それを再び見つめたとき、

青い薔薇の花束の
美しさとその存在感に息をのんだ。


「青い薔薇、めっちゃ綺麗やなあ」



プロポーズの返事より先に
口からこぼれたのは、そんな言葉だった。



「でしょ」



彼は、嬉しそうに、自慢気に笑っていた。



「藍ちゃんには、
青い薔薇が似合うと思ったから。」



その言葉を聞いて、
私の中で何かが報われた気がした。

目の前の大切なひとは、
私の在り方を愛してくれるのだと知った。


私の名前の、藍色に添えて
選んでくれた。
深い夜のような凛とした青い薔薇。



青い薔薇の意味は、“ 奇跡 ”
10本の花言葉は、“ あなたはすべてが完璧 ”



🦉

 



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