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詩集

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心のまゝに紡いだ言葉の断片 言の葉を磨き上げ羅列をして並べています。 詩のようなものをまとめています。
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青ブラ文学部 詩「君に届かない」

青ブラ文学部 詩「君に届かない」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

記憶の海の底深く
過去から来た波が静かに寄せて
無数の砂の粒が時間を刻んでいる

遠くに帆を張る船を
夜空に燦ざめく星々が導き
光の航路を描いている

人は皆__
愛と喜び 悲しみと別れを繰り返し
潮騒のように心に打ち寄せて
すべては交差していく

ずっと思い出せないでいた
記憶の海の奥底深くへと
この手を伸ばしても
未だに君に届かないでいる

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詩「静かなる秋の詩」

詩「静かなる秋の詩」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

秋の訪れに
輝き続けた夏の日は過ぎて
時の流れがほんの少しだけ
急いて流れているような気がした

生きゆく人々の出逢いと別れ
秋が深まるにつれ
斜に射す寂光が
殊更に孤独の影を伸ばす

哀しみが想い出に変わるまでに
枯葉はただ静かに寄り添うように
さよならの色を染めている

"時は巻き戻せない"
枯葉は諭すように
風と共に想い出を連れ去ってゆく

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詩「暗くなる前に」

詩「暗くなる前に」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

暗くなる前に__
ふいに明かりが灯りはじめる
天空にはあまねく陽光が
まだ満たされているというのに

750ルクスの感覚は
ボクはわからないけれど
まだまだ明るい最中で
キミだけが気付いていたんだ

生きている世界の
エントロピーが増大するが故の
不条理に飲み込まれてしまわないように

「真実を見失わないで」と
キミが愛を灯していることに
気付かな

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詩「ときくすりのソネット」

詩「ときくすりのソネット」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

アイラモルトを口に含む__
強いピート香は荒々しく
ハイランドの身を刺すような潮風が
体内を駈け抜けていった

心が流れ着いた先には
およそ晴やかとは云い難い曇天が広がる
私の目の前には起伏に飛んだ草原と
荒涼とした海が飛沫を上げ打ちつけている

どこかしらこの光景は郷愁に似ている
やがて深い酩酊の中で魂は解き放たれる
孤独を愛しつゝ自分自身を省み

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