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水無月を食べる日にとことんこだわる京都人

5月もそろそろ終わり、京都の和菓子屋さんには水無月が並び始めます。
水無月って和菓子の名前です。


6月30日を忘れていたなんて

五日間の出張から戻り、カバンを置いてふと夕刊を手に取り、私は青ざめたました。
今日が6月30日だったことが全く意識になかったので。慌てて時計を見ると午後11時38分、大慌てで財布を掴みコンビニに走ったのです。

「水無月、水無月、水無月はどこ?」
とつぶやきながら売り場を探すも見当たらず。ない。尋ねるしかありません。

「水無月はありませんか?」
「売り切れです」と冷たい返事。この時間にはスーパーも和菓子屋さんも開いているはずがない、時すでに遅し。さて、どうしようかと居ても立っても居られない気持ちで頭を働かせます。

そうだ、家に甘納豆があれば『なんちゃって水無月』が作れるはず。急いで家に引き返してそこかしこを探し回るも見つからず、ため息をついて時計を見るとすでに日付が変わっていたのです。

あぁと、全身の力が抜けその場にへたり込んでしまいました。

京都で生まれ育ったものは6月30日に『水無月』を食べるのは当たり前なのに

京都で生まれ育ったものにとっては6月30日に水無月を食べるということは当たり前のこと、当たり前すぎて忘れるなんてありえないことなのです。

水無月という和菓子は白い三角形の外郎の上に小豆を乗せたもので、これには夏の暑い時期を乗り切るおまじないの役割があるのです。白い外郎が氷室の氷を表し、小豆は赤い色で邪気を祓うといわれているから。

昨今は、外郎が黒糖や抹茶を入れて色付けしたものなど種類も増えていますが、この日に食べるのは氷を表す白を私は決めているのです。色まで決めてこの日に食べる大切なものなのに、この年はこの時期までなぜ気づかずにいたのでしょうか。

実は五日間の出張はかなり遠方でこの間、『水無月』という文字を見ることがなかったのです。京都にいれば、この時期は水無月という文字や実物が否応なく目に入ってくるのです。なので、忘れることなどありえなかったのです。
しかし、出張中の忙しさもあり、すっかり飛んでしまっていたようで情けない限りでした。

なんちゃって水無月

幼い頃は近所の梅鉢さん(武者小路千家の近くの和菓子屋さん)で祖母に買ってもらう水無月に心弾ませ、何日も前から心待ちにしていました。今のように常から和菓子を食べる習慣が我が家ではなかったこともありましたので。

年を重ねて、いつもと違う和菓子屋さんの水無月を楽しむこともありましたし、たとえどんなに忙しくても近くのスーパーやコンビニで買い求めたものでしたが、ある年に爆発的に『なんちゃって水無月』がはやりました。いわゆる誰もが簡単にできる手作りの水無月。

上質の薄力粉と甘納豆と牛乳パックがあれば、見た目は同じようなものが作れるという凄技です。
実はその年から数年間は、6月末近くになると街中のスーパーの棚から甘納豆が消えるほどのはやりようでした。それほど、京都では水無月が愛されているのです。

『夏越の祓』の旅案内にも水無月

今、旅の仕事をしていますが、6月30日の『夏越の祓』の旅案内の時には、水無月を食べに行きましょうとお客様に半ば強制的にお勧めしています。
水無月への想いを聞かされたお客様は「そこまで言われたら、食べずに帰れませんね」と他の和菓子には目もくれずにそれを選ばれることに。

それを食べているうちに魔法に掛かったように、これで夏を乗り切れると思えてくるのは先人たちから受け継がれた水無月の持つパワーにまちがいないのです。

6月30日に食べる水無月

あなたの故郷でも、この日にはこれを食べるととことんこだわったものがありますか、食べもの、習わしなどへの愛着を通して今お住まいの地への想いを再確認していただけたらこれ以上嬉しいことはありません。

※上記、拙著 京都癒しの旅、まえがきより

お誘い 6月30日(日)夏越の祓と水無月の旅

今年もご案内します。
京都生まれ京都育ちの案内人とご一緒しませんか?
少人数でゆっくりと。


参加者の皆様と水無月を

今年も6月30日に夏越の祓と水無月を食べるのを楽しみにしています。

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