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記事一覧

焦がしカラメル

焦がしカラメル

宵闇にうつる陽炎 
携帯の下書き 
心残りの放課

わたしには
ないものばかりみえてきて
脱ぎ捨てたかったあのスカート

あこがれて
消し炭にした写真たちは
色鮮やかに焼き付いている

月面の
海に沈んだ箱船に
しまった手紙忘れないでね

夜のラジオ

夜のラジオ

自分のこととか、将来のこととか、色々と不安に駆られる夜だったのでラジオを聴くことにした。

今夜は、たまたまふとほんの気まぐれで聴いてみたのだけれど、案外いい番組に出会えた。

ラジオって、自分でも予想外な出会いがあるところがあって、それがすごく好きだ。

ラジオの彼の声は、低く響く声で心地よく耳に入ってきた。真っ白な油画を描くという話から始まった。彼は色々と手広くやってる人らしい。

真っ白な油

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少女

少女

朝、あたしの気分はよく分からない。

おろしたての真っ白なシャツの匂いを、一気に吸い込むような感じ。

それから、じんわりと悲しい鉛色がシャツを汚していくような、あの感じ。

気持ちのいい爽やかな朝、そんなものは幻だ。

不思議な癖で、昼間カーテンを閉める。

せっかく差してきた陽を遮ってしまうのもったいない気がするけれど、逆かもしれない。

オレンジ色のライトを点けて、好きな彼の絵をみてみる。

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まっしろ

雪は時間を閉じ込める。
どこもかしこも真っ白で、しんと静かな帰りみち。
凍りつかないように、のっそりのっそり歩いて帰る。
びゅっと冷たい風がうなじを通りすぎる。
おおー寒い、はやくおうちに帰りたいな。
オレンジ色の街灯がテテテンと灯った。
遠くの家から美味しそうなご飯の匂いが届くから、わたしのお腹はぐーっと鳴く。
のっそりのっそり歩いていたら、誰かの足元を見つけた。
熊みたいに大きな足跡と、猫みた

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夜泳ぐ

夜泳ぐ

夜空を覆う雨の幕なら指を傘に引き留めたのに

1日遅れた「しばらく待って」が宙を泳いで消えていく

もう会えない人のハンガーにさみしさをかけてから眠る

月の素肌に触れたいてのひらは母星を抱いたまま凍る

青いカーテンが燃えるまでこの水溜まりに沈めてくれませんか

雨降りレモン

しとしと 雨足はやくなる
ぽたぽた傘からおちてきた
あなたの髪の毛濡れていて

レモンの香りが揺れている
みぎかたこんとぶつかって
耳もと どんどん熱くなる

じわじわ

ふんわり笑っていればいい
じんわりじわじわ馴染んでくるよ
力を入れると眠くなる
気を張り詰めると息苦しい
ふんわり、ふんわり、じんわり、じんわり
おはよう、さよなら、ありがとう

入道雲の魔法

にゅうどうぐも、と呟いたら

あたまのなかで青い空が、でーんと出てくる

そこに、もくもくと白い大きな雲が浮かんで、風が吹く

ぬるりと肌にまとわりつくような木陰

体の芯を射抜くような風鈴の音

どことなく憂鬱な気分にさせる午後の湿った草の匂い

ソーダのピリッとした痛さ

それらが、さあっと通り過ぎた

これが入道の魔法なのだ

だから私は、あの意地の悪そうな塊がなんとなく好き

青い

 弟は、朝早くにわたしを起こしました。
 散歩に行こう、と言うのです。
 早朝5時の出来事でした。まだ3月です。朝は肌寒く、吐く息が白かったのを覚えています。
 山の陰は、まだぼんやりと明るく、うっすらと霧がかかっていました。
 弟とわたしは自転車にのって、山の上まで登っていきました。坂の途中で自転車を止め、ふと来た道に目をやると、地平線が青くぼやけているのが分かりました。それは海でした。色のうす

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