青い

 弟は、朝早くにわたしを起こしました。
 散歩に行こう、と言うのです。
 早朝5時の出来事でした。まだ3月です。朝は肌寒く、吐く息が白かったのを覚えています。
 山の陰は、まだぼんやりと明るく、うっすらと霧がかかっていました。
 弟とわたしは自転車にのって、山の上まで登っていきました。坂の途中で自転車を止め、ふと来た道に目をやると、地平線が青くぼやけているのが分かりました。それは海でした。色のうすい朝の空のしたで藍色の海がぼんやりと光っていました。それを眺めているとまるで頭の中が空っぽになったように何も考えられなくなって、頑張っていないと呼吸すら止まってしまいそうでした。
 あの時わたしはふと、ああほんとうにうつくしいものは人を殺してしまうのだろうか、と思ったのです。

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