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映画館に行く価値。『駒田蒸留所へようこそ』の感想など。

(蛙๑╹ω╹๑ )<映画館に行って参りまして。

(蛙*^ω^*)<続けて3本観てきたお。

 ガルパン最終章4話についてはnoteを書いてないので一言だけ。

「ユリはいいぞ。」

 中の人の多田このみさんは、なんとかりなちゃんとの兼ね役である。すごい。ぜんぜん気付けなかった。声質の差がエグい。

(蛙*^ω^*)<ガルパンはヤバいぞ。4DX早く参戦したいぞ。


 で、今回の本編。

『駒田蒸留所へようこそ』

 の話である。

 ざっくりストーリー

夢も希望もやりたい事もないWEBニュースライターの主人公が、夢も希望もやりたい事もあるウイスキー蒸留所の女社長のもとで失われた幻のウイスキーを甦らせる手伝いをする話。

 なおこの主人公、25歳社会人、入社半年、会社5社目。上司や取材先の前で本人を目の前にして不平不満を口にするカスである。※後に改心する

 一方で蒸留所女社長はと言うと、親子三代で受け継がれてきたウイスキー『独楽こま』の原酒を東日本大震災により失い、志半ばで亡くなった父と、ウイスキー製造を断念した父に失望(ホントはもう少し複雑)し出奔した兄に代わり会社を引き継ぎ、残っていた別の原酒を元に1年でヒット作を作り出し、7000万円以上の借入れとクラウドファンディングで2000万円を確保し『独楽』をもう一度一から造る為に奮闘するというハイスペックつよつよ女史である。※後に挫折する

 という訳でネタバレ全開で感想を書いていくワケだけれど。

 まあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、アツい映画だった。

最近観た新作アニメーションの中で、一番良かったように感じた。
 91分の作中、後半だけで3回泣いた。
 むしろ冒頭表示された「原作:KOMA復活を願う会」という文字だけで少しウルっときた。

 それは私自身の過去の経験などを想起させられたり、色々と主人公らの内面的境遇に思う事があったせいかもしれないし、

 劇中、蒸留酒保管庫が火事で燃え、せっかく見つけ出した「独楽の原酒」を全て失ったにも関わらず、蒸留所の社員らに励まされ『独楽』製造を諦めなかった。想いを紡ぎ続けた姿に、思う所(つまり京都アニメーションへの想い)があったからかもしれない。

 加えて私がリスペクトする声優、早見沙織さんの演技と、主題歌が大変素晴らしかったからかもしれない。
 中の人の話で言うなら、女社長の母を演じる「井上喜久子17歳(おいおい)さん」の事も私はむっっかしから大好きなので(『ああっ女神様っ』が小学生の頃から好き)

原作:藤島康介

 きっこ姉さんが(女社長のお母さんが)完成した『独楽』の香りで独楽が甦った事を実感し、心が離れ離れになっていた家族がもう一度繋がるシーンでも涙したからかもしれない。

 そしてその全てが要因である。

 物語途中までカスだった主人公が女社長の過去の話と受け継がれてきた想いの話を聞き、コロッと心変わりして突然有能になったのには「イラっ」と、2回観て2回「イラっ」とした(制作陣の掌の上)けれど、主人公の力(突如芽吹いた取材力とコミュ力)無くして劇中の「数量限定版 独楽」の完成は成し得なかっただろう事を考えると、主人公も必要なピースであった。

 結論──。

 良かった。
 全部が、良かった。

 少し、ウイスキーの歴史の事を調べてみると、劇中での設定が、史実とちゃんと重ねてあることも分かった。

 2008年にはウイスキー消費が低迷していたと実際の歴史に記されており、2011年に東日本大震災が起きている。
 劇中では2009年の5月に、駒田蒸留所は「震災で受けた損害のため。そしてウイスキーは作っても売れない時代。撤退するなら今」と、ウイスキーの製造を断念すると先代の社長が決断しており、圭(女社長の兄)が先代に直談判している。※そのカットの圭の背後に「2009年5月」のカレンダーが在る

 史実の地震と消費低迷の記録は前後しているが、物語の時代背景は一致している。

 駒田蒸留所はウイスキー冬の時代を「焼酎」で乗り越え、先代が亡くなった後は女社長──流生るいが作った「わかば」をヒットさせ生き長らえた後に『限定 独楽』を復活させた。 

 駒田蒸留所、『独楽』、共に"フィクション"だけれど、まるで本当に存在してしているかの様なリアリティがそこに在る。

 いや、フィクションと思いきや、『独楽』『わかば』は実在する。

 劇中にも名前が登場する三郎丸蒸留所(劇中、独楽の実物をサンプル提供している)。
 その蒸留所のオーナーであり、本作のウイスキー監修を務めた、若鶏酒造代表の稲垣貴彦氏が実在するウイスキーブランドとして『わかば』『独楽』を再現すべく、映画の公開と共にクラウドファンディングをスタートさせている。
 そして既に目標額を上回り、クラウドファンディングを達成している(しかもスタートして3時間で目標の1000万円を超えた)

 実際に、『わかば』と『独楽』は飲む事ができるのだ。

 作品のファンのみならず、ウイスキー好きにも嬉しい企画が進行中なのである。
 映画を観て「このウイスキー飲んでみたい」と思った観客はきっと多いだろう。
 特別、ウイスキーを美味しそうに魅せる作品作りになっている訳ではないが、ウイスキー造りに夢と情熱を注いでいる人たちが特別カッコ良く描かれているのだから、「この人たちが作ったウイスキーは一体どんな味がするのだろう?」と気になってしまうのは必然である。
 私も、ウイスキーを舐めたことくらいしかないにも関わらず(基本的にお酒が飲めない)、独楽はきっと美味しいお酒なんだろうなぁ、と思わずにはいられなかった。

『わかば』と『独楽』
このウイスキーには、『駒田蒸留所へようこそ』という物語がブレンドされている。

 人は物語に価値を見出す性質を持つ。
 架空の作品にリアリティを感じさせてくれる二つのウイスキーは、観客にとって物語の一部なのだ。


 そんな感じで。
 ウイスキーが飲みたくなる、とても素敵な作品だった訳だが、やはりこの作品、映画館で鑑賞する事をオススメしたい。

 そもそも「映画は映画館で観た方が価値が上がる」と考えている私だが、今回改めてそう実感した。

 現代人は、マルチタスクがデフォルトになっている。
 そして映画館はシングルタスクに集中させてくれるからだ。

 斯くいう私も、普段家では「iPadで動画を流して」「iPhoneでアプリゲームをプレイしながら」「Twitterを見たり、家事をしたり」などなど、複数のタスクを同時進行させている。
 似た様なプライベート時間を過ごす人は少なくないだろう。
「テレビを点けたまま、視線はスマホに向かっている」という事はもはや日常である。
 例えば、「読書」のように、一つのタスクに全ての神経を注ぐ、という機会が減っているのである。
 読後の「スッキリした気持ち」「余韻に浸る時間」が好きと言う方は多いが、これはシングルタスクを完遂した結果に他ならない。
 いや、読書でさえ、「音楽を流しながら本を読む」派もいるので、もしかしたらシングルタスクとは呼べない可能性がある。

 そんな中、映画館で味わえるのは「作品」だけだ。
 アニメや映画は「総合芸術」なので、それこそ映像や音楽や特殊効果など複数の要素で構成されている訳だが、それらは一つの作品として塊になっている。
 真っ暗な映画館で作品を観る時、私たちはその塊に集中している事になる。

 全神経を映像、セリフ、音楽、キャラクター、作品全体に集中させている。

 その結果、日常生活では得られない感動を体感する。それ故の高揚感や満足感というワケだ。
(……それ故に駄作と出遭った場合には苦痛を味わう事にもなるのだが)

 本作の話に戻るが、本作品は所謂「プロジェクトX」「プロフェッショナル 仕事の流儀」のようなドキュメンタリー作品に近い。
 と言うかフィクションのドキュメンタリーであろう。リアリティが高いからこそだ。

 そして、私たちは滅多にドキュメンタリーを映画館では観ない。
 もちろんドキュメンタリー映画は多く存在するが、ドキュメンタリーはTVの十八番である。
 長時間観るには盛り上がりに欠けたり、時系列が飛びすぎてストーリーや人間関係を理解するのが難解になる可能性もあるためだ。
 だから、映画でドキュメンタリー作品と言うとよほど有名、話題になったものしかタイトルが出てこない。(海外の偉人を題材にしたものがメジャーか)
 ましてや「アニメ」となると、ドキュメンタリーは稀少となる。
 アニメーションそのものが「架空のもの」である事が多く、「Animation」の語源がラテン語で霊魂を意味する「Anima(アニマ)」に由来しており、生命のない動かないものに命を与えて動かすことを意味するからだ。
 そもそも「現実のものをアニメにする必要性が薄い」からと言える。

 そんな中、アニメでリアリティを持つドキュメンタリー系作品を作ってきたのが、今回『駒田蒸留所へようこそ』を手掛けたP.A.WORKSの『お仕事シリーズ』である。

2011年4月  花咲くいろは
2014年10月 SHIROBAKO
2017年4月  サクラクエスト
2021年7月  白い砂のアクアトープ
2022年10月 アキバ冥途戦争

 公式には上記の5作品が『お仕事シリーズ』として発表されている。
 中でもアニメーション制作現場を描いた作品『SHIROBAKO』は劇場版にもなり有名だ。

©「SHIROBAKO」製作委員会

 話を戻すが、要はドキュメンタリー系アニメ作品というジャンルは、私たちとってほぼ未知の作品であり、それを映画館という特殊な環境で視聴する事はとても珍しい体験である。
 ということだ。

 作品のエンディングの後、エンドロールにおいて実在する酒造、蒸留所のブランドロゴが多く登場するが、私は「ウイスキー造り、日本の酒造りの発展のため、多くのブランドが熱量を持って協力をした」事を感じてまた泣いた。

※追記 映画公開後にも蒸留所が映画成功の後押しをしている


※追記2
三郎丸蒸留所は映画公開後、作中に登場する駒田蒸留所の建物看板をオマージュした看板を設置。聖地巡礼の見所を作った。映画に協力元が寄せるの面白い。

 

 アニメーション制作において多くの取材協力は必要不可欠なものだと思うが、「ウイスキー造り」というこれまで聞いた事がないテーマを扱うにあたって、その実情や当事者たちしか目に出来ない場所まで立ち入り作品の中で映像化したのは、ドキュメンタリーとして大きな貢献になっている。

 アニメ制作元のP.A.WORKSはもちろん、ウイスキーの造り手、さらには地域発展(アニメで街おこしの要素)など、関係各所の尽力が結実している作品『駒田蒸留所へようこそ』

 これは「劇場で観るべき価値のある作品」だと言える。

◼︎駒田流生(CV:早見沙織)
『Dear my future』


 絶対に、劇場で、ウイスキー造りという『お仕事』を体感してほしい。

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