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2022年の世界情勢を振り返る:2023年を迎える前にザックリ総復習!【世界情勢初心者向き】

2022年は最強に縁起が良いとされる「五黄の寅年」だったそうだが、みなさまにおかれてはどのような一年だったでしょうか?

世界情勢的にはロシアとウクライナの戦争に明け暮れた悲惨な一年であったと言える。清水寺の今年の漢字も「戦」だった。

2023年を迎えるにあたり、2022年に世界がどのように動いたか、ということをざっくりをまとめてみたいと思う。(この記事は初心者向きです。複雑な要素はなるべく排除し、かなり単純化しています)

ロシア・ウクライナ戦争

2022年のはじめに、ロシアとウクライナが戦争を行い、なおかつ戦争がここまで長引くということを予想していた人は、当事者であるロシアも含めてほとんどいなかっただろうと思う。

実は、2022年1月10日に、こんなエントリーをしていた。

私は単なる株好きの素人の政治経済ウォッチャーだが、この時点でロシアにかなりフィーチャーしている点について、けっこう凄くない?( ´艸`)

その後、2月24日にロシア軍はウクライナに侵攻した。当初、ロシア軍兵士も「訓練といって連れてこられた」と困惑気味に言っていた。恐らくロシア上層部は、数日でカタつける腹だったのだろう。その目論見は外れ、今なお泥沼の戦闘が続いている。

ロシア・ウクライナ戦争が日本にもたらしたもの

インターネットやSNSも発達した21世紀の時代に、第一次大戦のような総力陸上戦が起こるなどと、多くの人は夢にも思わなかっただろうと思う。

この悲惨な事実は、私を含め平和ボケした日本人の太平の夢を覚まさせた。

「平和を愛する諸国民の公正と信義」をひたすら信頼していたら、その末路はウクライナとなりうる。その自覚が、日本にいくつかの変革をもたらした。

①防衛費増額が必要

自分の身は自分で守らなければならない。防衛費GDP比1%程度という、これまでの暗黙のルールを廃し、国際的基準(NATO基準)のGDP比2%まで防衛費を高めることとなった。戦後の日本の歴史を思えば、これは革命的なできごとである。

②同盟は大事(集団的自衛権も役に立つ)

北太平洋条約機構(NATO)とは、加盟国一国が攻撃を受けたら、全員で反撃をするという、最強の集団的自衛権集団である。ウクライナがNATOに加盟していたら、恐らくロシアは戦争を仕掛けなかっただろう。

集団的自衛権を日本が認めるかどうかで数年前に大モメしたことがあるが、ウクライナを実例として、集団的自衛権は平和維持のために役立つということが実証されてしまった。

さらに「日本は日米同盟に守られている」ということは、概念としては理解できても、実態としてピンと来なかったことだが、「米軍が出てくる」ということをロシアは恐れているんだなぁ、ということも実例として分からされた。

③他国へのエネルギー依存は危険

ロシアは資源大国であることから、今や世界のエネルギー価格は上昇し、現在の物価高を引き起こしているわけだが、やはりエネルギーを他国に依存しすぎることは危険だと思い知らされた。

エネルギーのほとんどを輸入に頼る日本としては、改めてその意味を考え直す必要がある。

④ロシアはおっかない国

ロシアがウクライナ人に対して行っているとされる残虐行為であるが、実は日本もかつての被害者である。「シベリア抑留」は遠い昔の出来事ではなく、現在でも起こりえる。

さらに、戦前の日本は「ロシアの南下政策」を大変恐れており、その恐れが朝鮮半島や満州国への進出の一因となったわけであるが、「ロシアの領土拡大の脅威」もまた遠い過去の出来事ではないということを思い起こさせた。

ロシア・ウクライナ戦争が世界にもたらしたもの

ロシア・ファクターは世界情勢を複雑化させる大きな要因の一つであり、「ロシア目線で世界を見てみる」ことで、また違った世界の風景が見えてくるというように考えている。

ロシアから見れば、ロシア・ベラルーシ・ウクライナは兄弟国であり、ウクライナが西側に行くことは、少なくとも民族主義的立場からすれば容認できないことである。この「ロシア世界を維持すること」が今回の戦争の一つの要因となっている。

ただ皮肉なことに、ロシアがロシア世界の勢力圏を維持するためにはじめたこの戦争が、逆に周辺国のロシア離れを促しているという結果を導いている。

ロシアに忖度して今まで中立を保っていたフィンランド、スウェーデンもNATO加入を検討しはじめ、かつてはソ連の一因であった中央アジアの国々も、今や公然とロシア離れを始めている。悲惨な戦争の当事者であるウクライナは、向こう100年は親ロシアになることはないだろう。

ユーラシア大陸におけるロシアの影響力はかえって弱まろうとしている。その隙間を埋めようと拡大するのが、中国かもしれない

米中新冷戦

ロシア・ウクライナ戦争が世界情勢における混沌の中心となった2022年であったが、世界情勢のより大きな流れを生み出しているのが「米中新冷戦」である(と認識すると、世界情勢の見通しが立ちやすくなります)。

米中の冷戦は、静かに・粛々と進行している。その主なバトルフィールドは、「経済」である。

日本においても「経済安全保障」という言葉が市民権を得た2022年だと思う。サプライチェーンの維持・囲い込みこそが、中長期的に国力を維持するために必要なことであり、米中がデカップリングしていく流れの中で、着々とサプライチェーンの再構築が進んでいる。

その象徴的なものが「半導体」である。

「半導体」なしには、スマホをはじめとした便利なものはほぼなにも作れない。「半導体」のサプライチェーンを失うことは、現代的な生活を失うということである。

半導体の中でも最先端のものを供給しているのが、台湾のTSMCである。台湾が昨今話題に上ることが多いのは、地政学的要因もあるけれど、半導体サプライチェーンの維持のために台湾が必須であるという要因も大きい。この流れはしばらく続くので、2023年も台湾情勢には注意を払っていく必要がある。

他方、30年前には世界トップであった日本の半導体産業も、アメリカの支援のもと復活に向けての動きがある。新会社「Rapidus(ラピダス)」である。

これも結局、米中新冷戦のなせる業である。今や日本のビジネスマンも、生き残るためには世界情勢の正しい理解が必須だと思っている。

全てを包含する世界のメガ構造:自由民主主義陣営VS権威独裁主義陣営

このように2022年はロシアVSウクライナのホットウォーと、アメリカVS中国のコールドウォーが同時進行した1年であった。

これらを包含する、現在の世界の最上位階層にある最も単純化した構造が、「自由民主主義陣営」VS「権威独裁主義陣営」の戦いである。

自由民主主義陣営のリーダーはアメリカ、権威独裁主義陣営のリーダーは中国&ロシアであったが、ロシアの力は衰退し、相対的に中国の力が増している、という現状である。

ウクライナはロシア世界の一員とされるのが嫌で、自由民主主義陣営に寄ろうとしている。

さてこの戦い、GDP比で言えば、アメリカや欧州を含む自由民主主義陣営の力が圧倒的に見えるが、権威独裁主義陣営も勢力を増しているという点には留意しておくべきだと思う。

例えば、孤立したイランはロシアに寄っているし、ミャンマー、アフガニスタンなどは民主主義から独裁主義的な政治体制へと変わっている。かつてアメリカのマブダチであったサウジアラビアも、最近は中国に寄っている。サウジの体制自体は権威独裁主義なので、中国陣営との親和性は高い。南米やアフリカ諸国も多くの独裁主義国家がある。

こういう世界情勢の荒波のなかを、日本はどうやって乗り越えていくかを考えなければならない。

世界の荒波を乗り越えるために:自由で開かれたインド太平洋戦略

この世界の荒波を乗り越えるための日本の指針とされたのが、「自由で開かれたインド太平洋」戦略である。

自由で開かれたインド太平洋」は、日本が安定的に資源を輸入し続けるために必要な枠組みであり、日本が「自由民主主義陣営」の仲間を増やしていくための仕掛けであり、さらには21世紀の日本の経済発展のためにインドやASEANを取り込もう、という実に奥深い戦略である。

この提唱者は7月に凶弾に倒れた安部晋三元首相である。安部さんは日本のために、10年以上も前から着々と布石を打ってきた。日本発の世界戦略がアメリカにおいても評価されることになるなど、2600年の日本の歴史のなかでも初めての出来事である。



日本の政治家にしては稀有なことに、世界情勢をもっとも深く読んでいたのが安部さんだと思う。この混迷の時代に安部氏を失ったのは痛手であるが、いつまでもこの世代の政治家に頼っているわけにはいかないので、安部氏を軽く超える優秀なリーダーの出現を切に待ち望んでいる。

2022年の日本の渋い外交

かつて日本の外交は絶望的なまでにダメダメだったが、安部氏が「自由で開かれたインド太平洋」を提唱したことで、日本外交には一本の軸ができた。安倍政権時代に外務大臣を長くやっていた岸田さんは、少なくとも外交面ではまずまずの動きをしている。最近では、かなり渋い外交もみられつつある。

「一見日本とあまり関係がなさそう」な国々との外交で、今年「おっ」と思って記事にまとめていたものを改めてピックアップしておく。

ということで、2022年の世界情勢総復習は終わりにしたいと思う。2023年は良い一年になりますよう!


(画像は写真ACから引用しています)

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