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2022年日・リトアニア首脳会談まとめ:リトアニアってどういう国?

2022年10月26日、バルト三国の一角、リトアニアのシモニーテ首相が訪日し、日・リトアニア首脳会談が行われた。

日本において一見なじみの薄い「リトアニア」。ウクライナとロシアの戦争が続く状況下での来日には、深い意味があるように思えたが、日・リトアニア友好100周年の記念行事のためだったw

とはいえ、隣国にロシアを持つ国同士、台湾海峡の不安定化も見込まれる昨今の情勢のなかで、これら両国が接触することには何らかの戦略的意義がある、と思って報道されている内容をまとめてみた。

リトアニアはどういう国?

リトアニアはバルト三国に数えられるものの、多くの日本人の認識は薄い。いったいどういう国なのだろうか。

歴史書にはじめてその名が登場するのが西暦1009年だが、その先住民たるバルト族は紀元前2000年ごろから同地に定住を始めていたそうだ。14世紀にはリトアニア大公国として、ヨーロッパ最大の版図を得るにあたった。個人的に興味深いのが、当時のリトアニアが”多神教国”であったというところである。最終的にはキリスト教化されるが、歴史的にはドイツ騎士団によるキリスト教化の攻撃(北方十字軍)を受けたりしていた。

その後、勢力は徐々に衰退し、ロシアやドイツなどの大国の紛争の波に翻弄されるようになる。第二次世界大戦後には、ソ連に編入されてしまい、独立を回復したのは1990年である。

世界情勢を見るうえで押さえておくべきリトアニアのポイントは以下の3つと思う。

①旧ソ連構成国で最初に独立国となった。
②台湾を優先する独自外交を展開する。
③「命のビザ」の杉原千畝氏のおかげで、実は因縁浅からぬ関係

近世以降は対ロシアや対ドイツに抵抗運動を試み、①旧ソ連構成国で最初に独立を果たしてサクッとNATO入り、近年では中国に叩かれまくりながら②台湾を優先する独自外交を展開するなど、「ガッツのある小国」のイメージが強い。

そんなリトアニアは、いわゆるユダヤ人に対する「命のビザ」の杉原千畝(すぎはらちうね)氏のエピソードから、日本に対する親近感も強い国なのだと思う。

日・リトアニア首脳会談のポイント

そんな大国にも怯まぬ小国の爪のあかでも煎じて日本政府に飲ませたい感じもするが、どんな内容が話されたのだろうか。ポイントをいくつかまとめてみる。

また、岸田総理大臣から、国際社会が歴史を画するような様々な課題に直面している中で、ロシアによるウクライナ侵略への対応や「自由で開かれたインド太平洋」の実現において、リトアニアと一層緊密に連携していきたい旨伝えました。また、リトアニアが毅然とした外交を展開していることを評価する旨述べるとともに、両国間で新たに安全保障対話を立ち上げることとした旨述べました。

外務省発表より

21世紀の日本の最重要戦略である「自由で開かれたインド太平洋」を、一見関連性の低そうに見えるバルト海沿岸の国にプレゼンするのは、世界的に認知度を高めていくうえで地味に重要なことだと思うし、この路線を継承している岸田政権・外務省には敬意を表したい。

また「リトアニアが毅然とした外交を展開していることを評価する」というのがなんか面白い。大国に忖度しまくりに見える日本だけれども、「他国の毅然とした外交を評価する」心意気は持っているんだね。

(1)岸田総理大臣から、ウクライナ情勢に関して、ロシアによるミサイルやドローンなどによる攻撃及び違法な「併合」は、ウクライナの主権と領土一体性を侵害し、国際法に違反する行為である旨述べました。また、岸田総理大臣から、ロシアがウクライナにおける核兵器の使用を示唆していることは極めて憂慮すべき事態であり、広島と長崎に原爆が投下されて77年間、核兵器が使用されていない歴史をないがしろにすることがあってはならない点を強調しました。その上で、両首脳は、ロシアによる核兵器使用の威嚇が、国際社会の平和と安全に対する深刻かつ容認できない脅威であるとしてこれを非難し、いかなる核兵器の使用も明白な国際的非難及び断固とした対応を受けることを強調しました。
(2)両首脳は、中国や北朝鮮等の地域情勢についても議論し、極めて高い頻度で行われている弾道ミサイル発射を始めとする核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。
(3)両首脳は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調しました。

外務省発表より

続いて、ロシア・ウクライナ、中国、北朝鮮、そして台湾海峡に関する言及があった。

両首脳は、ロシアによるウクライナ侵略も踏まえ、安保理改革を含む国連の機能強化が重要であるとの認識で一致しました。

外務省発表より

個人的にはここに一番注目したい。「国連改革」のためには、こういった小国の1票も重要である。ロシアという共通の懸念事項があるわけだから、問題意識をシェアしやすいところだとは思うが、以前のフィンランド首相のように「日本の常任理事国入りを支持する」という言質までは取れなかったのは少し残念である。

もとい、両国友好100周年を機に、両国関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げしたということは、一つの成果と言えるだろう。

そして、こういうピカチュウ外交とかを見ると、改めて日本のソフトパワーの厳然たる力を思い知る。

リトアニア、平和になったら訪れてみたい国である。

(画像は写真ACから引用しています)

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