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2022年日アフリカ会議(TICAD)のチュニス宣言:アフリカとの関係強化の戦略的意義

2022年8月27日~28日チュニジアの首都チュニスで開催された日本・アフリカ会議(TICAD:ティカッド)で、「チュニス宣言」が採択された。

実際どうなの、日本のアフリカ戦略


今後3年間で、約4兆円規模の円借款による投資をアフリカに行うということである。よく、「日本国民には増税で負担を増やして、外国に気前よくバラまくのは許せん!」という批判があり、感情的にはとても良く理解できるものである。けれど、半分当たりで半分外れである。「円借款」は返済を前提にした貸し付けなので、比較的リスクが低く投資ができるというものである。4兆円気前よくあげちゃうわけではない。うまくいけば、投資対象国の経済発展に伴い、日本企業もリターンを得ることができる。

それは良いとして、日本の世界戦略の中枢にあるのは「自由で開かれたインド太平洋戦略」である。インド太平洋地域こそ、最重点領域であり、正直なところ、地政学的にアフリカの重要度は低い

しかも、アフリカの多くは腐敗が多いお国柄である。それこそ湯水のように一帯一路でアフリカに金を投入し続けた中国も、貸し倒れの危険性が高い案件にかなり悩まされているようである。

日本も投資地域・投資案件を吟味しないと、同様の危険性がある。

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TICADは1993年にはじまった

TICADの第1回が開催されたのは1993年である。バブル崩壊直後とはいえ、少し前までは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、世界一の経済大国になるのではとアメリカを震撼させた時代も記憶に新しいころ、アフリカ諸国にリーダーシップを取ろうと始めたその心意気は評価する。

しかし、時は流れ、凋落の止まらぬ現在の日本。未だ世界第三位の経済大国とはいえ、下落トレンドが続く日本に、アフリカ諸国を引っ張っていく器量(と金)はないだろう。

今回の会議でも「量より質」と述べているのは、その自信のなさの現れだと思う。

本当は、お金よりも、アフガニスタンにおける中村哲さんのような貢献が望ましいと思う。中村哲さんのおかげで、今後何があってもアフガニスタンの人々は親日だろう。札束でしばくやり方ではなく、地に足がつき、顔が見える貢献にこそ、意味がある。そういうのをサポートする投資であればと願う。

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TICADの戦略的意義

とはいえ、苦しいながらもTICADを続けるには、大きく2つの戦略的意義があると思う。

1つはアフリカは国連における大票田であるということ。今後、国連改革を進め、日本が常任理事国入りを目指す上で、アフリカ諸国の支持は不可欠である。

大阪府の吉村知事が、万博の誘致活動のときに、アフリカのある国の大使に会ったエピソードを何かのネット番組で述べていたのが印象に残っている。アフリカの大使曰く、「日本は絶対に敵わないと思っていた白人の国に正面からぶつかっていった歴史があるから、日本が大好きだ」と。アフリカにも、意外と親日的な国は多いのだとすれば、TICADにような枠組みを使ってコミットを続けるのは悪いことではないと思う。

もう1つの戦略的意義は、一帯一路へのカウンターである。金額面では中国に劣るも、重点領域を決めて投資をする日本のスタイルは、一帯一路にくさびを打ち込む程度の効果は十分にあると思う。特に、今は亡き安倍晋三氏が首相であった2019年のTICADでは、アフリカ諸国の担当者に「公的債務やリスク管理の研修」を行う、「債務管理とマクロ経済運営のアドバイザー」を送る、といった項目があったと思う。こういうのはかゆいところに手が届く外交である。

せっかく1993年から存在する枠組みなのだから、やめてしまうのはもったいない。こういった枠組みを最大限に利用しつつ、日本の国益を追求していく戦略眼を、政府・外務省には望む。

(画像は写真ACから引用しています)

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