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#108 「貯めるべきお金」のゴールは逃げる。

お金を貯めよう。その目的って何でしょう?
ある調査によると第1位は「老後の生活資金」です。

なんか夢がないですが…

老後の生活資金といえば、昨年話題になった金融庁の出したレポートに端を発した「老後資金2,000万円問題」というのがありました。
報告書そのものは、本文で36ページ、付属資料も合わせると51ページにもなるレポートです。

その中では様々なデータが紹介されているのですが、その中で興味深いデータがありましたのでご紹介。


1、「老後資金2,000万円問題」って?

昨年の6月に金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが出した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書の中の、

「(老後は)収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取り崩しが必要になる。」
(同報告書16ページ)

という記述から来ています。

そこだけクローズアップされていますが、報告書全体の内容をめちゃくちゃ圧縮すると、

老後は年金だけでは不足するので早いうちから自助努力として積立などをしましょう。生活費だけじゃなくて認知症とか怖いことたくさんあるしお金ないと大変ですからね。
そのために積立NISAやiDeCoなどの制度をちゃんと用意ました。元本保証じゃなくても長期に積み立てれば、ほら、安心でしょ。だから制度使ってね。

というものです。

当時、NISAの利用が想定ほど進まないのに業を煮やした金融庁がハッパをかけるために作ったのかな、と感じました。報道が加熱したために結果的に積み立てが増えたみたいなので、もしかしたら狙い通りだったのかもしれません…


2、興味深いデータって?

2つあります。

1つ目は、
老後の不安、ってお持ちですか?
お持ちだとすると、それは何に対する不安ですか?
というアンケート結果です(同報告書19ページ)。

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いかがでしょう?

20代から50代まで不安の1位は「お金」。
身も蓋もない話ですが、現実ですね。

え?ちっとも興味深くない?

そうですね。興味深いのは、60代〜70代になると、お金は4位に落ちて、1位健康、2位認知症、3位自分の介護、となっている点です。

くらーくなってしまいますが、お金の不安が和らいだのか、健康面の不安がぐっと現実味を増して、お金も不安だけどもっと不安、ということなのかでだいぶ意味が変わってきますよね。

つまり、老後を迎える頃には、なんだかんだ言ってお金はちゃんと必要なだけ貯まって、お金のことはそんなに心配しなくて良くなるのか?、それとも、お金に加えて身体面で心配のタネが増えるのか?、ということが興味深いと思ったのです。

どちらだと思いますか?

実は、2つ目のデータを見ると分かります。


3、ゴールは逃げる?

さて、興味深いデータの2つ目です。
現在いくら貯めてますか?
ちなみに、老後までにいくら貯めたいですか?
差し引きいくら足りないですかね?
というアンケート結果です(同報告書19ページ)。

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老後資金2,000万円問題が騒がれる以前に実施したアンケートですが、20代の方が必要と思う金額は2,333万円と、2,000万円に近いですね。

興味深いのは(というか、残念なのは)、老後が近くにつれ、必要とする金融資産の金額がどんどん上がっていくことです。

40代には3,000万円を超え、何と、老後を迎えた前後の60〜70代で最も多い、3,553万円になっているのです。

で、現実もそこまで貯めているのならハッピーなのですが、希望する金額とのギャップは1,724万円にもなっています

つまり、20代では2,000万円ぐらいは貯めないと!とスタートした貯蓄ですが、そのゴールは、40代には3,000万円になり、もう積み立てるチャンスがほぼない、60〜70代になってもあと1,700万円も足りないのです。

つまり「ためるべきお金」のゴールは逃げていくわけです…

このアンケートの元を確認しましたが、は全国の20〜70代の男女14,100人を対象とした大規模なものですので、そこそこデータとしては信頼できます。

60〜70代、ということは、もう毎月赤字のステージに突入している方も多いでしょう。毎月赤字ですから当然、貯蓄を増やすチャンスはありません。あるとすれば、投資で、ということでしょうが、老後の生活費として使う予定のものを、リスクの高い投資に回すのはちょっと危険ですから選択肢としてはないでしょう。

つまり、逃げたゴールには永遠にたどり着けない、ということです…


4、まとめ

なんか、切ない結論になってしまいましたが、今これを読んで頂いているあなたが、リタイアしようと思っている年齢までまだ時間があれば、これらを認識して行動をすれば、十分(かどうか分かりませんが)将来を変えることはできます。

あと30年はあるし、と思った方。毎月の給料から積み立てるとしたら、チャンスはあと、12ヶ月×30年=360回です!1回1万円の積み立てで360万円です。1回5万円にしても、1,800万円で2,000万円にも届きません。

もちろん、今実行されているプランで十分であれば、確信を持って続けてください。(羨ましいです。)

一方で、今の生活も大事ですから、そのバランスは悩ましいですね。私のお勧めは、固定費の徹底削減です。

よくFPさんの家計相談で「携帯を格安キャリアに切り替えれば」とか「生命保険を見直せば」というやつです。食費や好きな趣味などを切り詰めるのは嫌ですが(というか長続きしません)、勝手に引き落とされる「固定費」の削減は日々の生活に影響しません。しかも、一度見直すと効果はずっと続きます。

その際、節約できた分は全部積立に回しましょう。あと回しにすると、その節約で浮いた分は「あ、なんか使えるお金増えた!」となって、その消費ペースに一旦慣れてしまうと、もう積立には回せなくなりますから。しかも、「あ、なんか増えた!」という嬉しさは、慣れるまでのたった2ヶ月ぐらいの話です。

なんか、最後までくら〜い話になったかもしれませんが、

積立は「将来の自分」への仕送りだ!

と思うのはいかがでしょうか?

という、少しは前向きな感じで終わりたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。

少しでも参考になりそうなことがあれば嬉しいです。


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