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「課題解決力」と「課題設定力」と「美意識」と

昨日までの投稿で、変化の激しい現代において必要なのは、「物事の本質をすくいとって残りは捨てる」、というようなデザインで必要とされるような能力だ、ということを学んできたのですが、「課題解決力」と「課題設定力」と「美意識」との関係が自分の中でこんがらかっていることに気づき、3者の関係を自分なりに整理したメモ。


1、「課題解決力」は「与えられた問題を解く力」

これは割とはっきりしてるかな、と。

代表的なフレームワークとして、ちょっと考えただけでも以下のようなものがあります。

☑️ 3C(顧客、自社、競合):   経営戦略や事業戦略
☑️ 4P(製品、価格、流通、販促):マーケティング活動
☑️ 5Force(新規参入者、競争者、代替品、買い手、売り手、の力):競争環境を把握
 ☑️ SWOT(強み、弱み、機会、脅威):自社の強み、弱み取り巻く環境を把握

一度はやってみた、という方が多いのではないでしょうか?

こういったものを課題に合わせて使い、課題を解決していくわけですね。


2、(ちょっと脱線)使いこなせてますか?フレームワーク

個人的な感想ではありますが、こういったフレームワークで目から鱗が落ちた、というような経験はそう多くありません。

このフレームワーク使わなくても導けた結論なのでは?ということもあります。

インプットする情報が不足している、偏っている、も原因だと思うのですが、最も大きな原因は、お恥ずかしい話なのですが、使いこなせてない、ということかと。

一方で、私はこうしたフレームワークは会議や研修などのワークでよく使うのですが、使っていて効果的だと感じています。

というのも、こちらが持っていく方向性が明確だと、それに合ったフレームワークを使うことで、あたかも参加者が自らその結論を導き出したというように持って行けるからです。

なんでもそうですが、自分たちで決めた、となるとその後の実行力も違いますからね。

という訳で、あまり本来の目的である、本当に答えの分からない課題について使っていませんが、こうした使い方もあるということで、脱線でした。


3、「課題設定力」は「解くべき正しい問題を選ぶ」

もともと質問力マニアとして気になったのは、「答え」から「正しい質問」を導くという佐藤オオキさんのお話でした。以下引用します。

「問題を必ず解決する方法を見つける」のではなく、「必ず解決できる問題を見つける」こと。言うなれば、答えを見ながら、それに合っている問題を算数ドリルの中から探す感じ。「3」になるための問題をどれにしようかな、と。
そう考えると、「1+1+1」でも「4−1」でも「6÷2」でもいいことがわかります。ある1つの答えを導いてくれる問題はいくつもあるから、その中から最もフィットするものを選ぶ感覚です。

いかがでしょう?わかりやすい例えですね。

ただ、「問題を見つける」ことを重要視するのは比較的昔からあります。

例えば、例によって私の手元にある本で恐縮ですが、ヤフーのチーフストラテジーオフィサーの安宅和人さんが2010年に書かれた「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」は題名通りの本で、第1章の冒頭を引用すると、

いろいろな検討をはじめるのではなく、いきなり「イシュー(の見極め)からはじめる」ことが極意だ。つまり、「何に答えを出す必要があるのか」という議論からはじめ、「そのためには何を明らかにする必要があるのか」という流れで分析を設計していく。

まさに、まず、課題設定、という主張ですね。

では、何が違うのか?

やはり、問題を見つける方法が、先に「答え」を見つけてそれにあう「問題」を選ぶ、という点です。


4、「答えにあう問題をみつける」ことと「美意識」

とはいえ、なぜ「答え」を先に見つけるのが良いのでしょう?

佐藤さんの本の以下の部分でなるほど、と腹落ちしました。

最初っから難題とにらめっこするのは、本当にシンドイ作業です。(中略)そうなると、普段できることもなかなかできなくなるものです。
デザイナーの考え方は「あんなことができたら面白いだろうな」「実現しちゃったらみんな喜ぶだろうな」という、常にワクワクした心境です。理想を思い浮かべ、ひたすら妄想する作業なので、どこまでもプラス思考なのです。そして脳も喜んでどんどん働いてくれます。自分でも驚くくらい。
この方法を使えば、これまで問題を上手に解決できずにさんざん頭を抱えてきた人も何かしら改善の糸口を見つけられるかもしれない。

つまり、期限とプレッシャーの下で、理性的な方法で解くべき課題を選定し、それに対して様々なフレームワークで分析を行い、答えをなんとか導き出す。そんな作業では、人間の脳は萎縮してしまう。

だったらまず、実現したら楽しい!嬉しい!みんながハッピー!な状況、つまり「答え」を思い描いてしまい、そこに向かってどう実現するかを考える方が、人間の脳も「自分でも驚くぐらい」働く。

という手法、というか、考え方なのです。

ここで、山口さんのおっしゃる「美意識」が出てくるのだと思います。

デザイナーはそういう「実現したらいいじゃん!」というのを閃ける人材でしょう。でも、そういった人材に任せるのは、経営としては不安だと思います。
安全確実な方法は、株主にも説明がつく、解くべき課題を見つけ、その課題をフレームワークによって綺麗に分析、出てきた解決策を実行する、ということだと思います。

でも、それは、競合他社もやっていることで、差別化にはならない、というのがジレンマで、そこを任せるかどうかと決断できるのが、「美意識」なのだと思います。

だからこそ、美意識を鍛えるのは「エリート」に限定していたんだと(私が勝手に)思います。


5、まとめ

理想的な流れとして、

☑️ デザイナーが「あるべき理想(という答え)」をひらめく
☑️ 経営が「美意識」に基づき開発等を承認する
☑️ メンバーがその「理想(という答え)」を共有しワクワクする
☑️ その「理想(という答え)」を実現するための「正しい問題」をみつける
☑️ 「正しい問題」を解くために必要な「課題解決手法」を活用する
☑️ メンバーはワクワクしながら「理想(という答え)」に向けた道を見つける
☑️ 経営はその市場投入(あるいは投資等)を承認する
☑️ 市場投入

といった感じで、私なりに冒頭掲げた「課題解決力」「課題設定力」「美意識」3者の関係を整理してみました。

こうやってみると、良いデザイナーが必要不可欠、ですね。
ユニクロや無印良品、マツダといった会社がデザイナーを招くというのはこういうことなんでしょうね。


最後までお読みいただきありがとうございました。

今回は完全に私の頭の中の整理でしたが、少しでもお役に立つことろがあれば嬉しいです。

なお、本日の投稿は、以下3つの投稿のまとめ的な位置づけになりますので、ご興味があればご覧ください(もう4日間もうだうだ考えています…)。



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