マガジンのカバー画像

まくらのそうし

210
日々の風景、周りの自然などを綴ったエッセイです。毎日更新。1話は原稿用紙1枚ほどです。田舎暮らしの風景をお届けします。
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

【随筆/まくらのそうし】 蛹

 畑に金色のサナギを見つけた。  金色とは言っても、それは全体ではなく、全体的には薄茶色…

【随筆/まくらのそうし】 保存食

 スーパーの品揃えが変わらない奇妙さを実感する、山の暮らしである。  要するに、季節のも…

【随筆/まくらのそうし】 どぶ

 子供の頃、ドブという名の用水路で、十五センチほどの鯉を捕まえた。  平生から、家のベラ…

【随筆/まくらのそうし】 雨戸

 たまたま、友達の家に雨戸があり、お化け屋敷ごっこをして楽しんでいた。  しかし、その雨…

【随筆/まくらのそうし】 幼雀蛾

 通常よりも、大きなものが好きな性質らしい。  それで例えばイモムシで言えば、スズメガの…

【随筆/まくらのそうし】 蝗

 捕まえるには捕まえたものだが、バッタの類いはあまり好きにはなれなかった。  その第一は…

【随筆/まくらのそうし】 名無唄

 口伝えだからこそ、何という歌なのかもまったく知らない。けれど、いまも好きな歌がある。  音は譜面でも付けるより他はないが、とにかく歌詞はこうである。  ──鳩と、鳶と、山鳥と雉と、雁がねと鶯が一緒に鳴けば、くくぴん、くくぴん、ぴんからしょっけん、そーら、けんけん、けんちゃかちゃんの、ちんちろりんの、ほーほけきょ。  いわゆる日本の律音階というやつで、どこか物悲しいような、懐かしいような、何とも言えない風情である。  歌は数多、母からテレビから学校から教わりはしたが、

【随筆/まくらのそうし】 薺太鼓

 いまも子供は作るだろうか。ナズナ太鼓を、道端のナズナを摘んで。  ハート型に、茎に伸び…

【随筆/まくらのそうし】 糊空木

 ノリウツギ、というらしい白い花である。  このアジサイに似た花は何だろうと思いつつ、季…

【随筆/まくらのそうし】 紫陽花

 土地に馴染むもの、馴染まないもの、というのがある。  例えば、アジサイ。これがナンバー…

【随筆/まくらのそうし】 ゼンマイ

 棚田には膨大な法面──この辺りではネキという──がつきもので、けれど、ただ雑草を生やす…

【随筆/まくらのそうし】 梅干

 梅は成るが、赤じそは植えていないので、白梅干しを作る。  七月下旬、匂い出す前の青梅を…

【随筆/まくらのそうし】 卯の花

 卯の花が咲いている。  野バラ、エゴノキ、スイカズラの類いにドクダミ、シロツメグサなど…

【随筆/まくらのそうし】 山葡萄

 祖父に連れられ、踏み込んだ山は、どこか甘酸っぱいような、黒い腐葉土の匂いがした。  その腐葉土の元となる落ち葉を集めるために、私たちは駆り出され、手伝いとは名ばかりの、枯れ葉と戯れたのだった。  そして、また別の季節、別の山へと連れられて、今度はカブトムシの幼虫を掘った。やはり甘酸っぱいような匂いの中で、その白く大きな幼虫を見つけては、まるで宝石を見つけたような歓声を上げ、次々飼育箱へと放り込んだ。  時に、幼い私のスコップは、その宝石を真っ二つに駄目にした。  孫