【随筆/まくらのそうし】 卯の花

 卯の花が咲いている。

 野バラ、エゴノキ、スイカズラの類いにドクダミ、シロツメグサなど、輝くような新緑に、白い花はこと眩しい。

 昔の人はこの白と青に着物を重ね、卯の花重ねと称したらしいが、現代ほどそれが様式めかなかっただろう当時を思えば、とても風情のあることだ。

 それとも、貴族の姫などは、ただ卯の花重ねと知るだけで、いまの人と変わらぬだろうか。

 ところで、この卯の花は、その名前の表すとおり、旧暦四月に咲く花である。

 現代人というなりに、いまは五月と思っていては、卯の花の意味も見失う。

 ついては、どうせ山に暮らしているのだ、いっそ旧暦で過ごしてしまえば、景色も心に馴染むだろうと、そんなことをつらつら思う頃である。

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