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【随筆/まくらのそうし】 名無唄

 口伝えだからこそ、何という歌なのかもまったく知らない。けれど、いまも好きな歌がある。

 音は譜面でも付けるより他はないが、とにかく歌詞はこうである。

 ──鳩と、鳶と、山鳥と雉と、雁がねと鶯が一緒に鳴けば、くくぴん、くくぴん、ぴんからしょっけん、そーら、けんけん、けんちゃかちゃんの、ちんちろりんの、ほーほけきょ。

 いわゆる日本の律音階というやつで、どこか物悲しいような、懐かしいような、何とも言えない風情である。

 歌は数多、母からテレビから学校から教わりはしたが、いまも心に深く残り、子供に教えてやろうと思うのは、まだこの短い一曲だけなのだ。

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