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【随筆/まくらのそうし】 蝗

 捕まえるには捕まえたものだが、バッタの類いはあまり好きにはなれなかった。

 その第一は、捕まえたとき、口と尻から、臭い汁を吐くからである。それがとても気持ち悪い。

 そもそも、捕まえるのが悪いのだから、気持ち悪いなどと言う資格もないのであるが、そこは子供のすること、結果、気持ちが悪いと逃がすのだから、バッタの戦略もあながち間違ってはいないのだし。

 第二に、バッタは指を噛む。これは捕まえ方が悪いのであって、羽根の方から捕まえなければ、痛くて驚く羽目になる。それに、足のトゲトゲも地味に痛い──これを第三ということにしておこう。

 さすがに子供が捕らえたバッタを調理する家庭ではなかったが、イナゴは食べたことがある。

 祖父が買っていた佃煮で、初めはびっくりしたものの、食べてみれば濃い味と、エビのような食感に、まさに止められない止まらない、というようなものである。

 イナゴをぱくつく子供を横目に、母はとても気分が悪そうだった。

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