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【随筆/まくらのそうし】 薺太鼓

 いまも子供は作るだろうか。ナズナ太鼓を、道端のナズナを摘んで。

 ハート型に、茎に伸びた種を引っ張り、切れてしまわぬように注意深く、すべての種を茎に垂らせば、ナズナ太鼓は完成している。あとは茎を持ってくるくる回し、カラカラ、パラパラ、音を楽しむ。

 小さな種の奏でる音だ。耳元に近くで鳴らすのがいい。

 もう一つ、それを作り、両手、両耳で聞くのもいい。

 思えば、初めて作った楽器は、空きティッシュ箱に輪ゴムを渡したギターであったが、そちらは飽きてゴミになっても、ナズナ太鼓は春が来るたび鳴らしたくなる、季節性の楽器である。

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