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黒田真由
2023年4月25日 17:09
#創作大賞2023 ソファにかけていた。何もしたくない。食欲もない。なんなら、入浴などの清潔行動すらできない日もある。 出てくるのは、イメージのみ。とある男女の話、猫と女性の話……挙げだすとキリがない。 仕事に行かねばならぬとわかっていた。準備を整え、靴を履いた。なのに、そこから先が動かない。動けない。冷や汗が出る。時間は刻々と過ぎて、気付けば遅刻確定の時間だった。 一先ず休みを取った
2023年4月25日 17:26
#創作大賞2023 カランと鐘の音と共に扉が開く。「いらっしゃい」 渋い声が店内に広がる。「開いてるかい?」「あぁ……いらっしゃい。開いてますよ」 コートにハットを深めに被った男性が、ぬっと入店する。室内では、陽気なジャズが流れている。 客と思しき男性は、迷うことなく奥のカウンターへと向かう。 彼はハットを外して、腰を掛けた。「今日は降りそうですぜ、マスター」
2023年4月25日 17:57
#創作大賞2023 さて、一つ不思議な話をしよう。 ある一人の女性がいた。彼女は、いつもの道でいつもの自転車に乗り、いつもの時間に家路へと向かっていた。 職場と家路のちょうど半分のあたりに、祠があった。その祠には、優しい笑顔を浮かべた地蔵が安置されていた。 真面目な彼女は、毎日そこを通るたびにお参りするようにしていた。彼女にとっての道祖神であった。 毎朝毎晩欠かさずお参りした。彼女は決
2023年4月25日 18:12
#創作大賞2023 僕との出会いは、偶然だった。その時の僕たちは、月と太陽のような距離だった。「すみません!」「いえっ……」 僕は、雑踏の中にいた。感覚でいえば、雑踏の中に僕がいるのと同時に、僕の中に雑踏がいた。 僕の脳は、暑さでどうにかなりそうだった。 独り、雑踏の中を歩く。暑さで靄がかかったようなアスファルトを、人ごみの隙間から覗いていた。「きゃっ……」「あ、すみません
2023年4月25日 18:38
#創作大賞2023 ある日のことだった。とある女性が雨宿りをしていた。彼女はびしょ濡れの子犬のように震えていた。 彼女の雨宿り場所に、一人の青年がやって来た。 彼女を見たその青年は、足を止めずにはいられなかった。何故なら、あまりにも彼女が震えていたから。「あの……大丈夫ですか?」 青年が声をかける。彼女は、びくりと反応をし、彼の方へ視線を向けた。彼女は泣いていた。「大……丈夫…
2023年4月25日 19:04
#創作大賞2023 僕は夢を見た。不思議な夢だった。 彼女たちの頭には芽が出ていた。聞いた話によると、初潮を迎えた証らしい。 彼女たちの頭には花が咲いていた。聞いた話によると、初体験を迎えた証らしい。 彼女たちは、気付いている。その植物の存在に。でも、違和感はないのだと言う。気付いたら生えているらしい。 僕は、彼女たちを眺めている。まだ何も出ていない者。芽の出た者。花が咲いた者。彼女
2023年4月25日 19:24
#創作大賞2023 彼にとって、冬から春は温かい季節だ。あの子がやってくるから。 空気が心持ち暖かくなりつつあるこの時期、あの子はやって来る。彼女は、早起きした春風に乗ってやって来る。 少年は、彼女に会いに森に行く。湖のほとりで彼女と会うのだ。「久しぶりだね」「ふふ、今年も会いに来たよ」 彼女はとても小さい。いつも、そっと木陰で、いつもこの時期を過ごす。「今日から、またしばら
2023年4月25日 19:32
#創作大賞2023 友が久々に会いに来る。私は、変わり果てた自分の体型を恨めしそうに眺めていた。 結婚して、子どもを産んで。気付くと、青春時代の面影は、遥か彼方に消え去っていた。「こんな姿で引かれないかしら……」 仕事へ行く夫を見送り、子どもを両親に預け、いざ待ち合わせ場所へ。 彼女は、変わらずモデルのようなスタイルだった。「久しぶり! 元気にしてた?」 彼女は、こんなにも
2023年4月25日 19:48
#創作大賞2023 雪の降るある夜のことだった。私は、暖炉のそばで読書を満喫していた。〝こんこん〟 窓の方から音がした。見ると、リスがこちらを覗き込んでいる。 僕は、窓をそっと開けて、その子を招き入れた。「入れていただき、ありがとうございます」 リスは、丁寧にお辞儀をした。外はかなり寒かったのだろう。その子は震えていた。「いや、構わないよ。寒かったろう? 暖炉のそばで暖ま
2023年4月25日 20:05
#創作大賞2023 これは、夢のような現実に起きた話だ いつものように、一日を終えて、布団に潜り込む。布団の中で、僕は、元彼女となった女性との最後のやりとりを思い出していた。「貴方は、誰にでも優しい。でもそれは、結果として優しさではないの」 僕の何がいけなかったのだろう? 僕は自問自答する。答えは出ない。 優しくする事が優しくないなんて、どうすれば良いんだろう? 僕は、彼女との
2023年4月25日 15:21
#創作大賞2023 私は、この桜の木の下で約束した。今度こそ、あなたと添い遂げると。 私は、気怠さを体に纏いながら、体を起こした。「ふぁーあ……。なんか、不思議な夢を見ていた気がするなぁ……」 午前七時。私は、洗顔を済ませ、トーストを焼く。そして、ラジオをつけて、コーヒーを淹れる。ラジオからは、珍しく私の好きなバンドの曲が流れていた。 トーストをかじりながら、ラジオを聴く。口の
2023年4月25日 20:16
#創作大賞2023 ある日。悟は、ぼんやりと世界遺産を眺めながら、歩いていた。 ふと気づくと、猫がいる。悟は、何の気なしに猫を撫で始めた。「人懐っこい猫だなー……」 そうぼやきながら立ち上がると、目の前にニコニコと悟を見る男がいた。 どうやら海外から旅行に来た様子だが、それにしても、荷物が少ない。「Are you on a trip?」 合っているかわからない英語で、おそる
2023年4月25日 20:29
#創作大賞2023 これは、不思議な不思議な話。「ねぇ、神様って信じる?」 僕は、君に問いかけた。潮風に靡く彼女の髪が、柳が揺れるようにも思える。「どうだろうね。でも、奇跡はあると、信じているよ」 彼女は、にこりと頷く。さらりと髪が揺れる。潮風の匂いが鼻をくすぐる。 僕と彼女の出会いは、いつだっただろうか? 海辺に行くと、いつの間にか彼女がそばにいた。「君との出会いって、
2023年4月25日 20:38
#創作大賞2023 ある朝。僕は、いつも通り出勤した。「おはようございます」「あぁ、君。ちょうどいいところに来た。部長が、君を探していたんだ。部長室に行ってくれ」「あ、はい。かしこまりました」 僕は、部長に呼ばれるようなことをした覚えがない。 いそいそと部長がいると聞いた部屋へ行く。コンコンとノックする。「失礼します。お呼びでしょうか?」「あぁ、君か。まぁ、入って座ってくれ